毎日いろんなことで頭を悩ましながらも、明日のために頑張ろうと自分を励ましています。
疲れるけど、頑張ろう!
「9・11 変容する戦争」
8月上旬に配巻されていた、集英社「戦争×文学」の第4巻『9・11 変容する戦争』をこのところ読んできた。「9・11以降、イラク、アフガンと今も戦争はつづく。冷戦後、変わりつつある戦争の姿をとらえた新しい文学」を集めた巻であるが、今までのところ
日野啓三 『新たなマンハッタン風景を』
宮内勝典 『正義病のアメリカ』/『ガンジー像下の「イマジン」』/『若者の死を悼む―香田証正君の死』
米原万里 『バグダットの靴磨き』
小田実 『武器よ、さらば』
平野啓一郎 『義足』
重松清 『ナイフ』
笙野頼子 『姫と戦争と「庭の雀」』
を読んだ。他にも何作か収録されているので、そのうち読もうと思っているが、上の作品の中では米原万里の『バグダットの靴磨き』に最も衝撃を受けた。その内容を簡単に記せば、
「路上で靴磨きをしている12歳の孤児・アメフドはお金と引き替えに身の上話をし始める。『父親は軍隊に狩り出されたまま生死不明となり、二人の小さい妹と祖母は米軍の誤爆で家が破壊されて下敷きになって死んでしまう。叔父と母の関係をおもしろくなく思うアフメドは外出禁止の中、家を飛び出して米兵に狙い撃ちされて膝から下が使えなくなる。さらに叔父は、アフメドの身代わりとなって連行され、アブ・グライブ監獄で獄死してしまい、陽気で美人の母親は、結婚式の手伝いをしているときに、急襲してきたアメリカ軍にその家の人々と一緒に撃ち殺されてしまう・・。』とうとう天涯孤独となってしまったアフメドは靴磨きと身の上話で得た60ドルでコルト拳銃を買い、それを使って『人間は殺さないけれど侵略者たちを撃つ』と話を締めくくる・・」
悲惨きわまりない身の上であり、何でこんなにも・・と思ってしまうが、これがバクダットの現実であったのだろう。平穏な国で安穏と暮らして来た私には想像を超えた現実であるが、驚くべきことにこの小説はロシアの新聞記者の22行のレポートをもとに、米原が創作したものだという。ロシア語の同時通訳者であり、作家としてエッセイストとして多岐にわたる才能を発揮した彼女の作品は「パンツの面目ふんどしの沽券」しか読んだことのなかった私には、米原万里という人物の実像が仄見えたように思えた・・。この作品は、イラク戦争の直後、日本ペンクラブが刊行した「それでもわたしは戦争に反対します」に収められたものだが、イラク戦争反対の意志が伝わってくる。
ノンフィクション作家の吉岡忍は、この作品について「短い小説ですが、戦争、侵略というざらついた現実に生きている家族の姿と、少年の切羽詰った気持ちを鮮やかに描いた小説になっています」と評価しているそうだが、無垢の少年をそういう状況に追い込んでいく戦争という現実の非情さ、冷酷さに NO! を言い続けることこそが私たちの努めであると、改めて思った。
だが、米原がこの作品を書いたときと今の世界の情勢はほとんど変わっていないように見える。いや、悪くなってしまっているのかもしれない・・。9・11から10年経って、新聞やTVではいくつかの特集が組まれていたが、それらを読んだり見たりするたびに言いようのない空しさを感じるのは、己の無力さに対してなのだろう・・。
日野啓三 『新たなマンハッタン風景を』
宮内勝典 『正義病のアメリカ』/『ガンジー像下の「イマジン」』/『若者の死を悼む―香田証正君の死』
米原万里 『バグダットの靴磨き』
小田実 『武器よ、さらば』
平野啓一郎 『義足』
重松清 『ナイフ』
笙野頼子 『姫と戦争と「庭の雀」』
を読んだ。他にも何作か収録されているので、そのうち読もうと思っているが、上の作品の中では米原万里の『バグダットの靴磨き』に最も衝撃を受けた。その内容を簡単に記せば、
「路上で靴磨きをしている12歳の孤児・アメフドはお金と引き替えに身の上話をし始める。『父親は軍隊に狩り出されたまま生死不明となり、二人の小さい妹と祖母は米軍の誤爆で家が破壊されて下敷きになって死んでしまう。叔父と母の関係をおもしろくなく思うアフメドは外出禁止の中、家を飛び出して米兵に狙い撃ちされて膝から下が使えなくなる。さらに叔父は、アフメドの身代わりとなって連行され、アブ・グライブ監獄で獄死してしまい、陽気で美人の母親は、結婚式の手伝いをしているときに、急襲してきたアメリカ軍にその家の人々と一緒に撃ち殺されてしまう・・。』とうとう天涯孤独となってしまったアフメドは靴磨きと身の上話で得た60ドルでコルト拳銃を買い、それを使って『人間は殺さないけれど侵略者たちを撃つ』と話を締めくくる・・」
悲惨きわまりない身の上であり、何でこんなにも・・と思ってしまうが、これがバクダットの現実であったのだろう。平穏な国で安穏と暮らして来た私には想像を超えた現実であるが、驚くべきことにこの小説はロシアの新聞記者の22行のレポートをもとに、米原が創作したものだという。ロシア語の同時通訳者であり、作家としてエッセイストとして多岐にわたる才能を発揮した彼女の作品は「パンツの面目ふんどしの沽券」しか読んだことのなかった私には、米原万里という人物の実像が仄見えたように思えた・・。この作品は、イラク戦争の直後、日本ペンクラブが刊行した「それでもわたしは戦争に反対します」に収められたものだが、イラク戦争反対の意志が伝わってくる。
ノンフィクション作家の吉岡忍は、この作品について「短い小説ですが、戦争、侵略というざらついた現実に生きている家族の姿と、少年の切羽詰った気持ちを鮮やかに描いた小説になっています」と評価しているそうだが、無垢の少年をそういう状況に追い込んでいく戦争という現実の非情さ、冷酷さに NO! を言い続けることこそが私たちの努めであると、改めて思った。
だが、米原がこの作品を書いたときと今の世界の情勢はほとんど変わっていないように見える。いや、悪くなってしまっているのかもしれない・・。9・11から10年経って、新聞やTVではいくつかの特集が組まれていたが、それらを読んだり見たりするたびに言いようのない空しさを感じるのは、己の無力さに対してなのだろう・・。
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