じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

竹西寛子「蘭」

2023-10-01 15:56:40 | Weblog

★ 秋雨前線の影響か、早朝は激しく雨が降った。いよいよ10月。とはいえ、衣替えを迷う。

★ さて今日は、竹西寛子さんの「蘭」(「日本文学100年の名作 第7巻」新潮文庫所収)を読んだ。少年が主人公なので、国語の教科書や入試問題に出そうな作品だった。

★ 戦時中、父の知人が亡くなったので、少年は父と共に葬儀に赴く。その帰り、列車は買い出しにでかけた人であふれ、さらに軍需工場の近くを通るとあって窓は鎧戸で閉められていた。

★ 酷暑。外気さえも取り込めないムッとした空気の中で、乗客はめいめい団扇や扇子で扇ぐのがやっと。そんな中、少年は歯痛に苦しめられる。

★ 暑さの中でも疲労ゆえか、乗客は眠りに陥り。少年は歯痛のことを父に告げることをためらう。しかし痛みは増すばかり。遂に父に助けを求めたとき、父がとった対応に少年は胸を痛める。

★ 鬱屈とした列車は当時の時代の象徴か。知人の死、その知人と親しかったであろう女性との出会い、父との二人きりの旅、暑苦しい列車、耐えられない歯痛。わずか数ページの作品に少年の気持ちの変化が綴られていく。

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