なぜあなたは一票を投じるの
今年、2月12日、安倍総理は国会で施政方針演説を行なった。この中で次のような発言している。
「明治国家の礎を築いた岩倉具視は、近代化が進んだ欧米列強の姿を目の当たりにした後、このように述べています。「日本は小さい国かもしれないが、国民みんなが心を一つにして、国力を盛んにするならば、世界で活躍する国になることも決して困難ではない。」
「明治の日本人に出来て、今の日本人に出来ないわけはありません。今こそ、国民と共に、この道を、前に向かって、再び歩み出す時です。皆さん、「戦後以来の大改革」に、力強く踏み出そうではありませんか。」
安倍総理は「世界で活躍する国」、「列強」への道を歩もうと力説している。「世界で活躍する国」になるため集団的自衛権を認める国になろう。これは海外で武力を行使する国になろう。戦争する国になろうと国民に安倍総理は訴えている。
戦争は既に始まっている。2015年の年明け早々、中東を歴訪した安倍首相は、1月17日、エジプトで「「イスラム国」の脅威を食い止めるため」、「イスラム国と闘う周辺各国に」」としてイラクやレバノンに2億ドルを支援することを表明した。これは「イスラム国」にとっては利敵行為である。日本は「イスラム国」を敵とした。更にイスラエルを訪問、イスラエルと日本の両方の国旗の前で、ネタニヤフ・イスラエル首相と両国が連携を強化することを表明した。これはイスラエルと敵対関係にある中東諸国を敵にする行為であった。
早速、「イスラム国」の人質になっていた元ミリタリーショップ経営者の湯川遥菜(ゆかわ はるな)さんが1月25日未明、殺害された。湯川遥菜さん救出に向かった後藤健二さんが「イスラム国」の人質になり、2月1日早朝、殺害されたと報道された。
安倍政権は「イスラム国」人質湯川さん、後藤さん救出のために何もしなかった。しかし、今までの日本政府はこのようなことはしなかった。1977年、日本赤軍が人質を取り獄中のメンバー釈放を要求した事件(クアラルンプール事件とダッカ日航機ハイジャック事件)がある。その結果、獄中メンバー11人が日本赤軍に参加するために出国する際には、日本政府の正規の旅券が発行された(日本国のパスポートは出国直後に返納命令を受けて返却された)。また、身代金600万ドルに加えて、獄中メンバーが働いた獄中労務金が上乗せされた金が釈放メンバーに渡された。獄中にいる11人のメンバーが釈放された。犯人グループの要求に応じた内閣総理大臣・福田赳夫は「人命は地球より重い」と述べた。超法規的措置を当時の日本政府はした。
これまでの日本政府の措置と比べて今回の安倍政権がとった措置はアメリカの指示に従った戦争当時国のような措置だった。
3月27日、テレビ朝日の番組「報道ステーション」にコメンテイターとして出演した古賀茂明さんは「自らが番組を降板することになった」理由を述べた。更に「I am not abe」というフリップを掲げた。この出来事がマスコミで事件になった。事前打ち合わせに無かった出来事だったため、担当ディレクターやプロデューサーも驚いたようだ。この出来事を通して我々視聴者は担当プロデューサーやディレクターが管理しているニュースが報道されていることを知った。コメンテイターの発言もまた管理されていることを知った。古賀氏はこの慣例を破り、自由な発言をした。この自由な発言が問題になった。テレビ出演者の発言はテレビ局の編集権内の自由な発言のようだ。古賀氏は後になぜ慣例を破り、あのような発言をし、「I am not abe」を掲げたのかを説明していた。
古賀氏はインド独立の指導者ガンジーの言葉を挙げて説明した。その言葉は次のようなことばである。
「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである」
安倍政権は報道各社に「中立公平な報道をお願いしたい」という依頼文を発送している。「ニューズオプエド」がその文書を公表した。この文書に対して政府は圧力ではないと述べ、報道各社もまた圧力を感じていないと述べている。この文書のために自粛して報道しているとも発言していない。がしかし、この文書をテレビ局では各部局にメールを流したと云う。
安倍首相が「列強」を発言しても問題になることがない。「イスラム国」を敵に回すようなことをしても大きな問題になることがない。人質を殺害されても政府の対応が問題になることもない。これは知らないうちに自分が変わってしまって、本当に大きな問題が起きているのに気がつかないということになってしまっているからなのかもしれない。ガンジーの言葉は真実なのであろう。私が選挙で一票を投じても日本が変わることはないだろう。それでも私は一票を投じる。なぜなら、今の政治に自分が変えられてしまわないために一票を投じたい。