松江市教委によると、22日までに市に寄せられた意見(メール、ファックス、郵便物)は、「賛成が約600件、反対が約1800件」(「朝日」27日付)だったそうです。「はだしのゲン」の閲覧制限を市内の小中学校に要請していた問題で、同市の教育委員会議が26日開かれ、要請を撤回し、「手続きに不備があることから昨年12月17日前の状態に復することが妥当」と決めました。
「舟木健治県教祖委員長は『撤回は当然。今回の教育委員会議みたいに広く協議すれば閉架要請にはならなかったはず。市教委は今後どういう原理・原則を大切にするか確認すべきだ』と話しました」(「しんぶん赤旗」27日付) 作者中沢啓治さんの妻のミサヨさんは、「(連載開始から)40年間読み継がれてきたが、問題となったシーンで苦情がきたことは1回もなかった。初めてのことで驚いた」と明らかにし、撤回を受け、「安心した。原爆や戦争の悲惨さをゲンほど分かりやすく表現している作品はない。学校にも活用してほしい」「問題となったシーンは、主人が戦争の怖さを伝えるために描いた。子どもたちが自由に読んで、世界平和のために何ができるか考えてもらいたい」(同前)と語ったそうです。
「朝日」27日付は、同市内の教師や主婦の声を取り上げています。「なぜ閉架なのか、どこが問題なのか、疑問だらけで、経緯が全くわからないことに不信感を持った」(市内の女教師) 「大勢の子どもたちに関わることを、たった数人、密室で決めてしまう。どんな本でも排除されかねない」(主婦)などの声が紹介されています。
教育評論家の尾木直樹さんは、「教育的配慮と規制は違う。中学校に至るまで一律に閉架とし、教員の許可がないと読めない状態にしたのは、『子どもの権利条約』で定められた情報へのアクセス権を侵害しかねない、きわめて乱暴なやり方だ。本を隠さなくても、児童同士で衝撃や不安を共有しながら、その根っこにある原爆や戦争について話し合う場を作るなど、心理的な悪影響を回避する方法はいろいろあったはずだ。市教委の短絡的なやり方に多くの学校が黙って従ってしまったことも深刻な問題だ」(「朝日」27日付)
国民、市民の声によって、まず、「閲覧制限」が撤回されたことに、大きな励ましを受けました。