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アメリカ再起動-オバマ次期政権の骨格浮上する☆WPST記事紹介(下)

2008年12月09日 12時05分49秒 | 海外報道2008米国大統領選挙


At yesterday's news conference, however, questions focused less on policy than on how the eclectic personalities standing behind Obama -- particularly Clinton, Gates and Jones -- would mesh. Asked how he would avoid having a "clash of rivals" rather than the smoothly functioning team he portrayed, Obama said he expected "vigorous debate" and described himself as "a strong believer in strong personalities and strong opinions."・・・

Obama turned playful when a reporter reminded him of the sharp criticisms he leveled at Clinton during the campaign, including equating her travels as first lady to having tea with foreign leaders. Obama waved off the question, saying the press was merely "having fun" by stirring up quotes from the campaign.

"Differences get magnified" during campaigns, Obama said. "I did not ask for assurances from these individuals that they would agree with me at all times. I think they understood and would not be joining this team unless they understood and were prepared to carry out the decisions that have been made by me after full discussion."

"On the broad core vision of where America needs to go," he said, "we are in almost complete agreement. There are going to be differences in tactics and different assessments and judgments made. That's what I expect; that's what I welcome. That's why I asked them to join the team."

"But understand, I will be setting policy as president," he added. "I will be responsible for the vision that this team carries out, and I expect them to implement that vision once decisions are made."


昨日の記者会見では、しかし、次期政権の政策に関するものよりも、オバマ氏の背後に控えている選ばれた人士、就中、クリントン氏、ゲーツ氏、および、ジョーンズ氏が【オバマ氏とその政権の中で】協調してやっていけるかどうかを質すものの方が多かった。自身が心に描く円滑に機能するチームどころではなく、むしろ「有力な対抗者達との対立」に陥ることをいかにして避けるつもりかと問われオバマ氏は、「精力的な議論」を通じてそのような事態を避け得ると思っていると語り、而して、自分自身を彼は「しっかりした人格と説得力に富む意見をどこまでも強く信じている者」との自己分析を披露した。(中略) 

1人の記者からオバマ氏に対して選挙期間中クリントン氏を打ち倒すべく彼が投げつけた辛辣な批判、例えば、大統領夫人としての彼女の【外国】訪問とは外国の首脳とお茶を飲むことだったという批判を想起させるような質問が出された時、オバマ氏は少しおどけてみせた上での質問に答えることを拒絶した。而して、選挙期間中の発言を引用することで新聞は単に「楽しんでいる」にすぎないと言い添えた。

選挙の期間中は「差異は針小棒大に伝えられる」とオバマ氏は述べた。「私は【次期政権の外交安保チームのメンバーとして】ここに紹介した方々に対して、これからは常に私に同意してくださるという保証など求めません。けれども、彼等は私の真意を理解された。そして、そのような十分な議論を経た上で、私が下している判断を理解されたのでなければ、また、その判断を実行に移す準備ができているのでなければ彼等がこの【次期政権の外交安保】チームに参加されることはなかっただろうと私は思っています」とも。

「アメリカはどこに行くべきなのか、このことに関する広範なる理想像の中核部分において、我々はほぼ完全な合意に達しました。もちろん、戦略の相違、および、状況認識や判断の相違はこれからも存在するでしょう。それこそ私が期待するものであり、蓋し、私が歓迎するものです。而して、それこそがこのチームに参加するように私が彼等に要請した理由なのです」とオバマ氏は述べた。

「しかし、このことは理解していただきたい。大統領として私が政策を設定していくことになるということを」とオバマ氏は語り、またこう付け加えた。「このチームが実行していく計画の責任は私にあり、一度政策判断がなされたならば、私は彼等にその実行を期待しています」と。


The announcements confirmed weeks of speculation and secret negotiations. Gates had never closed the door on staying in office but repeatedly insisted that he wanted to retire to his home in Washington state. Discussions with Clinton were not solidified until agreement was reached over public release of the names of donors to the foundation established by her husband, the former president.

Jones was said to have resisted repeated entreaties from Obama until early last week. His concerns, according to a source who discussed the matter with the former NATO commander, centered on avoiding the problems that plagued Bush's first term, including a weak National Security Council and end runs around national security adviser Condoleezza Rice by then-Defense Secretary Donald H. Rumsfeld and Vice President Cheney.

Another Obama adviser said the president-elect's team has studied Bush's attempt to put together a first-term team of national security heavyweights, only to see discipline collapse among warring factions. With Jones, the adviser said, Obama felt he had found "a very substantial person who can make the system work."・・・


今回の【次期政権の外交安保チームの】陣容の発表は数週間に渡る熟慮と秘密裏の交渉の結果であることは間違いない。ゲーツ氏は留任を否定こそしてこなかったものの、繰り返し、引退して故郷のワシントン州に帰る希望を口にしてきた。クリントン氏との話し合いは、彼女の夫である元大統領が設立した基金の寄贈者の氏名リストが公にされることで【国務長官要請・受諾の】合意に達したことが判明するまで表沙汰になることはなかった。

ジョーンズ氏は今週の最初までは、オバマ氏からの【次期政権の外交安保チームに参加するようにとの】度重なる懇願にも首を縦に振らなかったと伝えられている。この元NATO軍司令官の口説き落としに加わった人物によると、ジョーンズ元海兵隊大将の懸念事項は、一期目のブッシュ政権の外交安保チームを苦しめた諸問題、例えば、弱い権限しか持たされていない国家安全保障会議、および、国家安全保障担当大統領補佐官のコンドリーザ・ライス氏の頭越しにラムズフェルド国防長官やチェーニー副大統領がことを進めたことだったとのこと。

他のオバマ氏側近によれば、次期大統領の外交安保チームは外交安保領域の大立者達によって一期目のチームを構成しようとして派閥争いの中で空中分解するに至ったブッシュ政権の試みを研究してきたとのこと。この側近の言うところでは、オバマ氏はジョーンズ氏に関して「組織的な活動を可能にする正に適材」を得たと感じているとのことだ。(中略)


Clinton stood without expression yesterday as Obama, the former rival she once called "naive" on some aspects of foreign policy, praised her "extraordinary intelligence and remarkable worth ethic." Obama continued: "She is an American of tremendous stature who will have my complete confidence, who knows many of the world's leaders, who will command respect in every capital, and who will clearly have the ability to advance our interests around the world. Hillary's appointment is a sign to friend and foe of the seriousness of my commitment to renew American diplomacy and restore our alliances."

Clinton cracked a smile when Obama described her as a "tough campaign opponent." In her own remarks, she said that "if confirmed, I will give this assignment, your administration and my country my all."

A source close to the transition and familiar with discussions between Clinton and Obama described her as confident that she will have the president's ear when she needs it, and unconcerned about the potential for rivalry with Jones and Gates. "She knows how the White House works," the source said of the former first lady.・・・


クリントン氏は、オバマ氏、かっての競争相手にして外交のある面においては「単純」と評したことのあるオバマ氏が彼女を「途方もない知性と際立って高い仕事における倫理観」と褒めちぎる間、表情を変えることなく立っていた。これに続けてオバマ氏は「彼女は私が全幅の信頼を置く所の極めて有能なアメリカ人であり、世界の多くの政治指導者の知己。彼女が世界中の首都で尊敬を勝ち取る【諸外国政府から尊敬を受ける】ことは間違いないだろうし、而して、彼女が世界におけるアメリカの利益を増進する能力を備えていることは明白。ヒラリー女史の指名は敵味方双方に対して、アメリカ外交を刷新する、および、同盟国との連携を修復するという私の約束が言葉だけのものではない真面目なものであることを示すものだ」と述べた。

オバマ氏が彼女を評して「手強い選挙戦の対抗馬だった」と語ったときにクリントン氏も破顔一笑。而して、自身の会見では「改めて決意の程を語るとすれば、この職務と政権、そして、我が母国に私のすべてをささげます」と語った。

オバマ氏とクリントン氏の話し合いに通じていて、ことここに至った経緯に詳しい人物によれば、クリントン氏は自分がもしそれが必要な時には大統領の耳を持つこともできる、そして、ジョーンズとゲーツというライバルの両氏に対しても能力において彼女は何の心配もしていないという自負を持っているということ。「彼女はホワイトハウスがいかにして動くかを知っている」と、この情報をくれた人物はこの元大統領夫人に関してそう述べてくれた。(後略)





【解題】
大統領制には「議会の多数派」と行政権の主宰者が異なっても政策の連続性が保たれるという利点(あるいは、欠点?)がある。毎回、アメリカ大統領選挙をウォッチしていて痛感するのは、アメリカにおける、最高指導者の育成と選考の「タフ」な制度を我が国も見習うべきだということです。もともと、(誤解を怖れずに記せば)「アホ」でもそのプロセスの中で「指導者」としての資質・スキル・覚悟・マナーを身につけられる制度と、日本のように(大甘に言っても)「本来優秀だったはずの素材」がアホになってしまいがちな制度との差は歴然と思うから。

真面目な話し、大統領制を導入しないのであれば日本の首相は、暫定的にでも「元首相の子孫」に限定するとかの<擬似摂関家制度>を導入しないかぎり、日本の政治は政治として機能しないのではないか。日本の場合、現状では「緊急避難的」にこの宰相(諸家)による世襲制か、外国から有能な宰相をスカウトしてくるくらいしか手はないように思います。例えば、支那の胡錦濤主席とかロシアのプーチン現首相とか、「引退後、日本の首相はどうですか?」と。昔、メジャーリーグの4番バッターだった引退した選手を日本のプロ野球球団が三顧の礼を尽してスカウトしてきていたように。自虐ではなく、率直な自己認識からはそう言わざるを得ない。


今回の大統領選挙戦を鳥瞰して、また、幾たびかその演説を聞いて感じたのは、オバマ氏は「機械のように精確な政治サイボーグ」なのではないかということ。しかも、アメリカという「路面の良悪が極端な長距離道路」を走るためのサイボーグなので激震への耐久性も優れている。けれど、彼が、砂漠もあればモンスーンもあり、ツンドラもありという国際政治に対応できるかは正直未知数。

その点、今の評判は歴代最低クラスですが、「地頭が悪くない、生まれつきのリーダー」である(「リーダーしか務まらない」?)現ブッシュ大統領と、「リーダーになるべく自己改造を重ねてきた目から鼻に抜けるサイボーグオバマ」との大統領としてのトータルなパフォーマンスの差は今から30年くらいしないと本当は分からないのかもしれません。蓋し、カーター大統領はその再選に敗れた時には「歴代最低の大統領」という評価でしたが(第一次世界大戦後、再選に敗れた大統領は、フーバー、カーター、ブッシュ父の3人だけ!)、当時の外交資料が漸次公開されるに伴い(所謂「人権外交」という綺麗ごとではなく)「カーターこそ冷戦の勝利を決定づけた大統領」として最早その歴史的評価は動かなくなっていますから。この意味でも、アメリカ政治の叡智は深い。蓋し、実に、アメリカ侮り難し。



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