
Yet China gets to scold one of the most free and peaceful countries in the world for unprincipled policies. As the Economist lamented in 2006, when Japanese leaders refused to acknowledge past crimes they “let a Communist dictatorship wrest the high ground from a pacifist democracy.” At a time when Japanese conservatives seek to generate both hard and soft power to counter China, their denials squander both. They antagonize global opinion and alienate Japan from potential regional partners who also worry about China’s rise. As any strategist would advise an ambitious Beijing, a country should try to drive a wedge between other nations that might form alliances against it. But Beijing needn’t bother: Japan’s conservatives are doing this to themselves.
Japan’s wartime atrocities were terrible. They shattered the lives of millions of Chinese, Koreans and others. Failing to fully acknowledge the wartime sex slave program is a further injustice to the hundreds of thousands of girls and women whom Japanese soldiers raped, tortured and murdered. Furthermore, by attempting to conceal what was terrible about Japan in the past, conservative leaders obscure what is admirable about Japan today.
傲岸かつ強欲。そんな支那政府が、しかし、世界で最も自由で最も平和的な国の一つをいまだに譴責しようとしている。それは一重にその国が推し進めようとしている道理を踏み外した諸政策のせいである。2006年にエコノミスト誌が嘆いた如く、日本が犯した過去の犯罪を日本の政治指導者達が認めなかったがゆえに「ある平和主義の民主国家は共産党が牛耳る独裁国家に道議面での優越性を譲り渡した」。これが過去の直視を拒否した対価として日本が支那に支払った代償である。日本の保守派が、支那に対抗するため軍事面と非軍事面の双方の力を整備育成しようとすれば、過去の否定はその双方の力を浪費させるものと言える。過去の否定によって日本の保守派は世界の世論を敵に廻しつつあり、加之、日本と同様に支那の興隆を危惧している東アジア地域の潜在的な友好国と日本が共同歩調をとることを著しく困難にしつつある。傲岸不遜かつ野心満々の支那政府がクライアントだとすれば、国際戦略の大概の専門家ならそう助言するように、合従連衡してクライアントに立ち向かおうとするかもしれない諸国の仲を裂くことが上策。而して、支那政府にはその上策さえ不要になってきている。なぜならば、支那に対抗するための合従連衡を阻止するべく、日本の保守派は自ら対支那包囲網分断作戦を実行しているのだから。
日本が戦中に行った残虐行為の酷さは戦慄すべきものだ。支那人・朝鮮人を始め数百万もの生命を奪った。戦中の性奴隷計画の存在と実害を充分に認めているとはいえないことは、日本兵に強姦され拷問され殺された数十万の少女や成人女性に対しては、正義の更なる蹂躙である。更に言わせてもらえば、過去の凄まじい日本の悪行がどのようなものであったかを隠蔽することで、日本の保守派の指導者は今日の日本が体現し実現している賞讃に値する様々な事柄を外国から見えにくくしているのだ(★)。

★註:Jennifer Lind女史-欧米識者の限界を知るための好材料?
本稿の投稿者、Jennifer Lindダートマス大学准教授は、米英のアジア研究者の中でも間違いなく第1級の方だと思います。その彼女にしてからが、所謂「従軍慰安婦」なるものについて本稿の最終パラグラフ程度の認識しか持っていない。この現実に唖然を通り越して慄然とさせられます。尚、所謂「従軍慰安婦」なるものに関するLind女史の誤解というか無知については、下記拙稿をご参照いただければ嬉しいです。
・安倍総理の逆襲-「従軍慰安婦」という空中楼閣に依拠した
New York Timesの自民党新総裁紹介記事(上)~(下)
http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11397816233.html
・石原知事-橋下市長が「河野談話」を一刀両断
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/00e9b430bbdefea7909292451e0890b4
・「従軍慰安婦」問題-完封マニュアル(上)~(下)
http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11137268693.html
これで第1級なの?
はい、多分ね。
例えば、原文テクストの発表は昨年晩秋ですが、今年2013年の2月にLind女史は『Newsweek』に「日本が世界から誤解される理由:Japan, the never normal」という論考を寄稿していますが、米英の日本分析としてはそれは秀逸と言えると思いますから(以下、ブログの字数制限を睨み日本版から引用します。ご興味があれば原文もお読み下さい。お薦めします)。
・Japan, the Never Normal
http://blogs.cfr.org/asia/2012/11/30/jennifer-lind-japan-the-never-normal/

日本が世界から誤解される理由
学者や政治アナリスト、ジャーナリストたちはどういうわけか、日本を「普通の国」として扱うのが苦手なようだ。日本が何をしても、彼らは極端な色眼鏡を介してその意味を曲解してしまう。
日本経済が急成長を遂げた1970〜80年代には、日本が築き上げた奇跡的な資本主義体制はいずれアメリカを追い抜き、世界に君臨するだろうと持ち上げられた。バブルがはじけて日本経済が下り坂に転じると、今度は正反対の日本衰退論が主流に。少子高齢化の進行によって日本は数百年以内に絶滅の危機に瀕する、という絶望的な未来がまことしやかに語られている。
外交政策でも、極端な論調が幅を利かせている。第二次世界大戦後、日本は日米同盟の下で節度ある国家安全保障政策を追求しつつ、高度な軍事力を保有して対ソ連封じ込め政策をサポートしてきた。しかし多くのアナリストや国際関係の専門家は、日本の「控えめ」な態度ばかりに注目して、脅威的な軍事力の存在を無視。戦後の日本は、軍事体勢と決別した非武装の平和国家だとアピールしてきた。
ところがここに来て、振り子は正反対に振り切れている。尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有問題をめぐる中国との関係悪化を、日本の平和主義の終焉とナショナリズム台頭の兆しと見なす主張が声高に叫ばれているのだ。
日本政界「右傾化」の嘘
昨年9月に中国全土で吹き荒れた反日デモでは、日本企業への襲撃が相次ぎ、「日本を打倒せよ」と訴えるプラカードが通りを埋め尽くした。それでも、当時の野田佳彦首相は落ち着いた態度を崩すことなく、中国政府に暴動の取り締まりを冷静に求め続けた。なのに世界の主要メディアはこの数ヶ月間、ナショナリズムの大波が日本を襲っていると警告し、日本政界でタカ派が台頭していると書き立てている。
皮肉な話しだ。日本政界の「タカ派」の指導者たちは、他国の基準で見れば究極の穏健派といえるだろう。・・・実際の日本は決して平和国家ではない。だがその一方で、攻撃的な軍国主義国家でもない。・・・日本は普通の「ミドルパワー」国家だ。・・・
何世紀も前から、各国の国力はGDPと1人当たりのGDP、人口規模、技術力、政治的安定の指標で測られてきた。さらに現代社会では、民主主義の有無も項目の1つに含まれるべきかもしれない。
この6つの指標について、日本を明らかに上回るのはアメリカだけだ。経済力と人口規模の組み合わせにおいて、日本に匹敵する国はヨーロッパには存在しない。・・・
もちろん、日本にも問題はある。高齢化が進行し、労働人口が縮小する現状では、たとえ堅調な成長を実現出来たとしてもGDPは当分の間、横ばいが続く可能性が高い(それでも世界3位だが)。・・・それでもなお、日本が全体として驚異的な国力を備えているのは間違いない。豊かで民主的で教育水準が高く、テクノロジーを使いこなせる巨大な人口を抱え、おまけに強力な軍事力も保有しているのだから。・・・
日本の政府関係者や学者、安全保障の専門家はしばしば「日本に軍隊はない」と口にする。しかし憲法9条に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあるにもかかわらず、日本は陸軍はもちろん、東アジア最強の海軍と空軍を有している。
言葉と現実のずれは近隣国の人々の心に疑念を生む。なぜ日本政府は言葉を濁し、分かり切ったことを否定するのかと、彼らはいぶかる。日本政府が軍事力に関して率直に語っていないと考える隣人たちは、日本が軍国主義になることはないと言っても信じない。そんな疑念に満ちた環境で日本の力が少しでも増せば、過剰なほどの注目と恐怖心を引き起こす。・・・
最後にもう1つ、日本が極端な目で見られる理由がある。近隣諸国に、日本の政策を意図的に歪曲する人々がいることである。中国や北朝鮮の指導層は自分たち独裁政権の正当性を訴えるために、日本による占領と戦争の記憶を持ち出し続ける。民主国家の韓国でさえ、政治指導者たちは国民の人気取りや、自分たちの望む防衛政策への支持を得るために「日本カード」を使うことがある。こうしたことから、東アジアの指導者たちは日本の防衛政策におけるわずかな変化も、意図的に誇張してみせるのだ。・・・
日本を極端視する傾向に、さまざまな理由があるのは確かだ。しかしそうした見方は間違っているだけではない。東アジアの勢力バランスの中で日本が担うことの出来る役割を、同盟国が見逃すことにもつながる。つまり、日本の存在価値を過小評価することになる。・・・
過去60年間、日本は能力に見合う仕事をしてこなかった。・・・日米同盟においては、日本は最小限の役割を演じればいいとアメリカも同意している(つまりアメリカが軍事力を用意し、日本は基地を用意するということだ)。
しかし今や、同盟関係や国際政治において日本が本当の能力に見合う、もっと普通の役割を担う時が来たのではないか。日米政府は考えるべきだ。
(出典:『Newsweek・日本版』(2013年2月12日号)pp.26-29)

<続く>