英語と書評 de 海馬之玄関

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再出発の英文法:時制

2008年05月27日 15時13分44秒 | 英文法の話題


[1]二つの「時制」ルール
今回は「時制」(tense)について一緒に考えてみましょう。

「時制」については、普通、ーー寧ろ意味論の範疇のアスペクトは別にしてーー「英語では、いつのことを述べるかによって述語動詞の形が変わる」「英語には、現在・過去・未来の三つの基本的な時制のほか、それぞれに 、完了形・進行形・完了進行形があり(3+(3×3)=12だから)、都合、12種類の時制がある」と説明している文法の参考書が多いと思います。

ところが、その同じ参考書に、例えば、「多くの場合、過去時制が過去のことを、未来時制が未来のことを表す、というように、文法上の時制と現実の(物理的な) 時間は大体は一致するものの、一致しない場合も多々ある」とかも書かれたりしている。そして、一致しない例としては、次のようなケースが紹介されていると思います。

I will have Jones call you back as soon as he gets back.
(Jonesが帰社次第、電話させます)
副詞節の中では未来のことを現在形で表す[as soon as he gets back]

The president said that he checks e-mails at least twice a day.
(社長は、最低毎日2回e-mailをチェックすると仰っていた)
習慣的動作は現在形で表す[that he checks e-mails]

We learned that the internal angles of a triangle added together
make two right angles. (三角形の内角の和は2直角と習った)
真理は現在形で表し、時制の一致の制約を受けない[make two right angles]

The expert of financial policy said that Keynes opened up new horizons
for economists in 1930s. (その財政専門家によれば、1930年代、ケインズは
当時の経済学者に新しい展望を与えた)
歴史的事実は過去形で表し、時制の一致の制約を受けない[Keynes opened up]


ここで、英文法のトリビアの知識の紹介。

・動詞や助動詞の時制は(厳密に言えば)、現在形と過去形の二つしかない!
・動詞(または、助動詞+動詞)が実際にセンテンスの中で述語動詞として使われる場合には(「S→V→・・・」の「V」の役割を演じる場合には)、「いつの時代のことを述べるか」「慣習・真理・歴史的事実などを述べるものかどうか」の二つの基準を下に、慣習として「述語動詞」の形は(現在、過去・・・未来完了進行形までの)12種類にパターン化される。


「うそー!  そんなこと習ったことも聞いたこともないよ!」こんな声が全国から(否、アメリカからも?)聞こえてきそうです。説明しましょう。


例えば、"I will attend the sales conference tomorrow."(明日、販売会議に出席します)の"will"は現在形なのです(attendは原形)。つまり、この例文では、助動詞 "will" の現在形を用いて未来のことを表しているにすぎない。同様に、"attend"の現在形は”attend”であり、過去形は"attended"。これ以外に、”attend”の未来形なるものはこの世に存在しない。

これが、「動詞や助動詞の時制は現在形と過去形の二つしかない」の意味です。確認になりますが、動詞"attend"を使って未来のことを表すセンテンスを作りたいのなら、その述語動詞は、助動詞"will" の現在形を用いて、「will+attend」というパターンになる。そして、「いつのことを述べるかによる(助動詞や分詞とタッグを組んだ)述語動詞の変化のパターンが12種類」ある。

頭がこんがらがってきましたか(笑)。では、次の項目で敷衍しましょう。上で説明したように考えれば、日本人が苦手な時制もわりとすっきり理解できることを具体的に説明したいと思います。最後に、学習は復習ですから、これまでのポイントの整理。


(1)動詞(と助動詞)の時制には現在形と過去形しかない
(2)センテンスの述語動詞(V)には、「動詞や助動詞の現在形と過去形」および「現在分詞と過去分詞」の組み合わせで、都合、12種類のパターンがある


尚、この『再出発の英文法』の記事では、(1)を「動詞(と助動詞)の時制」、(2)を「述語動詞の時制」と書いて区別することにしますが、この(1)(2)の二つの「時制」を区別することが「時制に対する苦手意識克服のTips!」なのです。


[2]動詞の時制と述語動詞の時制
ところで、どんな時に日本人は「英語の時制は苦手」と感じるのでしょうか? それは、大きく二つの<症状>に分かれると思います。

・現実の物理的な時間と時制が一致しないケース
・(物理的な時間と時制が一致している場合でも)日本語にはない進行形や完了形を中心に、また、日本語にはそう明確な区別のない動作動詞と状態動詞の違いが原因となってどの時制を採用すればよいのかがわからないケース


特に、「現在の習慣」「歴史的事実」「普遍的な真理」を述べるセンテンスは時制の一致の支配を受けないですし、他方、仮定法がからまる場合には、現在/過去/未来という物理的な時間と、「時制」は原則一致しない。ですから正しく時制を踏まえた英語を書いたり話したりすることは日本人にとっては大変難しいことなのです。そこで上でお伝えした発想が有効になってくる。復習しておきましょう。


(1)動詞(と助動詞)の時制には現在形と過去形しかない
(2)センテンスの述語動詞(V)には、「動詞や助動詞の現在形と過去形」および「現在分詞と過去分詞」の組み合わせで、都合、12種類のパターンがある


これだけです。そして、その要点は、現在/過去/未来という現実の物理的時間と、(1)英語の「動詞(助動詞)の時制」も、(2)センテンスの述語動詞の12種類の変化のパターンも本質的には何の関係もない。(1)は純粋な文法的な動詞の語形変化のパターンですし、(2)は、例えば、yesterday や tomorrow という副詞と同時に使われる際の述語動詞の形に関する、これまた文法的な約束事なのです(日本語の「係り結び」と同じと考えてもいいかもです)。

この説明、大胆ですか? 

しかし、論を進めるとこう考えるしかないのです。要は、(2)の述語動詞の時制パターンは、話者や書き手が「いつの時間のことを述べていると意識しているか」という極めて主観的な基準に従い異なってくる。また、

(2)の12種類の述語動詞の「時制変化」のパターンにおいて、(1)で明らかなようにそのパターンをいわば「部品」として形ち作る動詞(と助動詞)自体には現在形と過去形しかない。このことを確認しておきましょう。

尚、各この12種類の時制についてはお手持ちの英文法の参考書などで必ず例文を参照してくださいね。文法用語見ると目眩がする方は(笑)、特に例文との照らし合わせを実行してください。

●述語動詞の12パターン
現在形:動詞の現在形
過去形:動詞の過去形
未来形:助動詞willの現在形+動詞の原形

現在進行形:助動詞beの現在形+動詞の現在分詞
過去進行形:助動詞beの過去形+動詞の現在分詞
未来進行形:助動詞willの現在形+助動詞beの原形
+動詞の現在分詞

現在完了形:助動詞haveの現在形+動詞の過去分詞
過去完了形:助動詞haveの過去形+動詞の過去分詞
未来完了形:助動詞willの現在形+助動詞haveの原形
+動詞の過去分詞

現在完了進行形:助動詞haveの現在形+助動詞beの過去分詞
+動詞の現在分詞
過去完了進行形:助動詞haveの過去形+助動詞beの過去分詞
+動詞の現在分詞
未来完了進行形:助動詞willの現在形+助動詞haveの原形
       +助動詞beの過去分詞+動詞の現在分詞



結論から言いますと、「現実の物理的な時間と述語動詞の時制が一致しないケースがしばしばある」のはあたり前なのです。だって、両者は本来無関係なのですから。また、「物理的な時間と述語動詞の時制が(たまたま)一致している(ように見える)場合でも、どの時制を採用すればよいのかがわからないケースがまれではない」のもあたり前。英語といわず言葉は歴史の中で積み重ねられてきた文化であり約束事なのですから。

例えば、”since 1978”という副詞句が来たら述語動詞は完了形や完了進行形を取るとか、「畜生、昨日、ちゃんと予習しとけば今日のゼミで活躍できたのに」という激しい後悔の気持ちを述べたいときには、仮定法過去完了形を取るとかは、一つひとつ覚えていくしかない。でも、だからこそ英語の学習は達成感をenjoyできるし、英語は面白い♪

結局、文法的な動詞(助動詞)および述語動詞の時制と物理的な時間との間に関係があるという錯覚に捕われているから、中途半端に「物理的な時間」を基準にセンテンスの述語動詞(S→V→・・・の「V」)の時制パターンを決めようという無駄な努力を重ねることになる。

これらの錯覚から解放されれば、後は、粛々と12種類のパターンの使い分けの知識を覚えていけばよい。

なに? なんーだ、時制の攻略にも「楽な方法」はないんですね、ですと?

はい、その通り。楽な方法や摩訶不思議な方法がないということが、しかし、語学の学習ではもっとも貴重な情報なのですよ。

Rome was not built in a day.
(ローマは一日にしてならず)


[3]述語動詞の時制の要注意点
随分、抽象的な話になりましたので、この項では上で述べた(述語動詞の)時制に関するパースペクティブ(大まかな見通し)を具体的な例文を使って敷衍したいと思います。

「時制」を、あるセンテンスの述語動詞(S→V→・・・の「V」のこと)の変化のルールの一つと捉える場合(尚、述語動詞の変化のルールには、時制変化の他に、受動態・能動態の変化、人称変化、仮定法・直接法・命令法の3個の変化があります)、これまでの説明を一言で言えば、

「英語の時制と物理的な時間との間には本質的な関係はない」


ということになります。あくまでも「時制」というのは、「話者や書き手が「いつの時間のことを述べていると意識しているか」という極めて主観的な基準」にともなう、述語動詞の変化のルール。このことを日本人が「時制」を苦手と感じる二つのケースを舞台に想定して一緒に具体的に考えてみましょう。前に一度述べた通り、その二つのケースというのは次の「症状」です。

・現実の物理的な時間と時制が一致しないケース
・日本語にはない、進行形や完了形を中心に、物理的な時間と時制が一致している場合でも、どの時制を採用すればよいのかがわからないケース


◆現在形で<現在>の動作は語ることができない!
英文法の参考書の中には「現在形は、現在の動作や状態を表す」と書かれているものがあります。もちろん、これは間違いというわけではないのですが(また、中学生や英語の初級者に時制を説明する「方便」としては有効かもしれませんが)、正確ではない。つまり、述語動詞の現在形は、

・話者が「現在のことと感じている」なにかの状態
・習慣的な事実/反復して起こる出来事
・不変の真理

を表しますが、話者が「現在のことと感じている」、人や動物の動作は、普通、現在進行形で表現される場合が圧倒的だからです。例えば、TOEICのパート1の写真描写問題では、写真の中の人物や動物の動作は例外なく現在進行形で語られている。こんな感じです。

The people are eating in a restaurant.(彼等はレストランで食事中です)
Some weeds are growing next to a wall.(雑草が壁の傍に生えています)
Some people are standing on the shore.(岸辺に何人かの人が入る)

この延長線上の理屈ですが、ということは、過去のある時点での動作を表現するためには過去進行形や過去完了進行形にしなければなりません。このルールの逸脱は、日本人の書くビジネスレターに頻発する間違いであり、TOEICでも日本人受験者を苦しめる典型論点。例えば、

When Rami called at the outlet, the staff of the shop were taking stock.
(ラミさんがその販売代理店に立ち寄ったとき、店のスタッフは棚卸しをしていた)


◆完了形と完了進行形の違い
これまた文法の参考書の中には「現在完了形は、現在までの動作や状態の完了や現在までの経験のほか、現在までの動作や状態の継続を表す」と書かれているものがあります。これまた、「嘘の方便」(笑)。

つまり、状態を表す動詞の場合には「現在までの状態の継続を表す」と言えるのですが、動作を表す動詞の場合には、「現在までの状態の継続」を表現したいのなら、現在完了進行形にしなければならない。例えばこんな感じです。

I have known the CEO since she joined the security company.
(私はその最高経営責任者を、彼女がその証券会社に入社したとき以来知っている)

They have been playing golf since eleven o’clock.
(彼等は11時からずーっうとゴルフをしている)

動作を表す動詞(動作動詞)と状態を表す動詞(状態動詞)の違いは、要は、進行形にできるかどうかの違いでもあり、これもTOEICやTOEFLの重要な論点の一つです。また、同じ動詞が意味によっては、動作動詞になったり状態動詞になるケースもある。ややこしいですが、そこが言葉の面白さでもある。そう、positiveに考えて、この機会に一つづつ覚えるように心がけてください。

・状態動詞:進行形にできない:seem, appear, remain, own
・動作動詞:進行形にできる:make, purchase, place



◆ 現実の物理的な時間と時制が一致しないケース
前々項と前項では、日本人が時制を苦手と感じる二つのケースの中で「日本語にはない、進行形や完了形を中心に、どの時制を採用すればよいのかがわからないケース」を一緒に考えました。本項ではもう一つのケース、つまり、「 現実の物理的な時間と時制が一致しないケース」にタックルしてみましょう。

まずは、時制の基本的な考え方の復習。時制とは・・・

「時制」を、あるセンテンスの述語動詞(S→V→・・・の「V」のこと)の変化のルールと捉える場合、英語の時制と物理的な時間との間には本質的な関係はない! (あくまでも「時制」は、「話者や書き手が「いつの時間のことを述べていると意識しているか」という極めて主観的な基準」にともなう述語動詞の変化のルールである)

このことを肝に銘じてくださいね。例えば、
The meeting was canceled because Ms. Anne has to leave for Fukuoka tomorrow.
(アンさんが明日、福岡に出発しなければならないので、会議は延期になりました)

ここで、このセンテンスの作者は、主節は過去の出来事、becauseが導く理由を示す従属節は現在の状態と考えているので1文に二つの時制が併存しているわけです。どこまでも時制の使い分けはセンテンスの作者の主観が基本。

becauseが導く節の事例は、「時」「条件」を表す副詞節の中では未来のことも述語動詞の現在形で表すというルールが適用されているものですが、(英語のネーティブスピーカーは英文を話したり書く時に、「「時」「条件」を表す副詞節の中では未来のことも述語動詞の現在形で表す」というルールを意識しているわけはないのですから)このセンテンスの作者は、because以下を書いたり話したりする際には、現在の状態として意識しているのです。

以下、代表的な「時制と時間のズレ」の例を確認しておきます。例文の過半は上で取り上げたもの、「時制」とは「話者や書き手が「いつの時間のことを述べていると意識しているか」という極めて主観的な基準であるというポイントを押さえながら反芻してみてください。


◆パターン1:副詞節の中では未来のことを現在形で表す

I will have Jones call you back as soon as he gets back.
(Jonesが帰社次第、電話させます)

◆パターン2:習慣的動作は現在形で表す
The president said that he checks e-mails at least twice a day.
(社長は、最低毎日二回e-mailをチェックすると仰っていた)

◆パターン3:真理は時制の一致の制約を受けない

We learned that the internal angles of a triangle added together
make two right angles. (三角形の内角の和は2直角と習った)

◆パターン4:歴史的事実は過去形で表し時制の一致の制約を受けない

The expert of financial policy said that Keynes opened up new horizons
for economists in 1930s. (その財政専門家によれば、1930年代、ケインズは
経済学者に新しい展望を与えた)

◆パターン5:歴史的現在(生き生きと過去を表現する技法)

Now Nobunaga leads his army across the Seta River to Kyoto.
(信長公は今や彼の軍勢を率いて京都に入るべく瀬田川を渡る)

◆パターン6:仮定法は時制とは無縁

If I were a bird, I could fly to you.(”This is a pen.”の次に有名な英文?)
(もし私が鳥だったら貴方の所に飛んで行けるのに)

If N company had not taken steps to develop the new product,
it would have gone bankrupt.
(新製品を開発していなかったらN社は倒産していただろう)

◆パターン7:比較構文も時制の一致の例外になる場合がある

When(I was )young, I studied harder than you do.
(私の若い頃は、君が今やっているよりももっと勉強していた)



<確認演習>
この記事で説明したことを例題で確認しておきましょう。

▼例題1:
Keirin and Hibiki usually < > their washing on weekends.
(A) are done
(B) do
(C) have been doing
(D) have done


訳:恵鈴さんと響君は普段週末に洗濯をします。
正解:(B)
説明:現在時制は、現在の「動作・状態」だけでなく現在の「習慣・反復される行為」や「不変の真理」などを表します。むしろ、TOEICのパート1写真描写問題で流れてくるスクリプトの大部分がそうであるように、動作動詞に関して現在の動作は「現在進行形」で表すのが普通です。


▼例題2:
We < > for nearly 4 hours when Choi Ji Woo arrived.
(A) had been waiting
(B) have been waiting
(C) have waited
(D) will have waited


訳:チェ・ジウ姫が到着したとき、私たちは4時間近く待ち続けていた。
正解:(A) 
解説:whenの節が特定している過去のある時点まで「待つ」という動作の継続を表さなければなりません。ある時点までの動作や状態の継続は、動作動詞の場合には例文のように「完了進行形」、状態動詞の場合には、原則、「完了形」で表現します。下記は状態動詞についての例文です。

Mr. Yamada and I have known each other since we were legal trainees at the Legal Training and Research Institute.(山田先生と私は司法研修生のときからの知り合いです)


▼例題3:
The Chief Cabinet Secretary announced that Japan < > nuclear weapons within three years.
(A) has
(B) had
(C) will have
(D) would have


訳:日本は3年以内に核武装をすると官房長官が発表した。
正解:(D)
説明:官房長官の発表はおそらく「Japan will have ・・・」だったのでしょう。けれども、主節の述語動詞(announced)が過去形なのでthat節の中は「時制の一致」の適用を受け、that節の「S→V→・・・」構造の内部は「Japan would have・・・」と変化しているのです。


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