2013年夏の終戦記念日、安倍総理は靖国神社参拝を見合わせました。妥当な選択だったと思います。なぜならば、これにより、集団的自衛権を巡る政府解釈の是正、教科書検定における所謂「近隣諸国条項」の撤廃、憲法改正に向けた(国民投票の有権者年齢の引き下げを含む)立法措置、あるいは、国際基準とより整合的で社会的にも合理的な「積年平準の低線量放射線被曝許容値」の大幅な引き下げ等々、重要さにおいては「首相の靖国神社参拝」に劣るとしても、着手の優先順位の点では優るとも劣らないこれらの諸課題を支那・韓国といった特定アジア諸国、ならびに、その代理人たる朝日新聞・毎日新聞・NHK・TBS等の反日リベラルからの妨害をミニマムに抑えながら粛々と進めることが可能な局面を切り拓けたから。と、そう私は考えています。
本稿は、この謂わば<安倍総理の不戦勝>とも言うべき、今回の靖国神社参拝見送りを俎上に載せた海外報道の紹介。正に、彼等、米英の親支那・親韓国の反日リベラルメディアの歯ぎしりが聞こえてくるような記事の紹介です。
重要なことは、しかし、これらの報道がいかに偏見に満ちた、かつ、無知蒙昧なものとはいえ、()これらの報道を通して米英の有権者国民は東アジアの現況に関する認識を形成しているだろうこと、()これらの報道の多くは、それらに憑依する偏見とそれらが孕む事実や歴史に関する無知を差し引いても、朝日新聞に典型的な日本の反日リベラルの<文芸評論>的の情緒的かつ独善的な、よって、論理的な反証が困難な報道・社説に比べれば(間違った認識と反日の立場からスタートしている点では同じだとしても、それなりに)ロジカルにその理路を展開していること--よって、それらに対して自己の事実認識とイデオロギーを互いに相手に提示してする論理的な議論が(どこから先は妥協不可能であるかの相互確認がその議論の唯一の成果だとしても、)可能な余地があること--ではないかと思います。
蓋し、米英メディア、支那・韓国、朝日新聞の各々の「日本批判」の言説の様相を図式的に対比しておけば、次のように言える、鴨です。而して、「政治的」という性質は三者に共通している。けれども、各々その内容を異にしている(例えば、最前者は文化帝国主義的な「普遍性」を核とした政治性であり、前者は言うまでもなく中華主義的で自己中心的な「お宅なにさま」ものの政治性、そして、最後者は、世界で最早日本でしか見られないガラパゴス的な「戦後民主主義」の世界観を基盤とする政治性と規定できる、鴨)。しかし、いずれにせよ、三者の言説の様相は概略こう捉えることができるのではありますまいか。
(Ⅰ)米英のリベラル派:政治的かつ論理的--独断的(dogmatic)
(Ⅱ)特定アジア諸国:政治的かつ非論理的--独尊的(self-centered)
(Ⅲ)朝日新聞:政治的かつ文学的・情緒的--独善的(self-righteous)
本稿で紹介する記事は以下の、Washington Post(WPST)、および、New York Times(NYT)、そして、Financial Times(FT)の3本。尚、安倍総理の歴史認識をこれまで米英メディアがどう報じてきたかということ、ならびに、首相の靖国神社を巡る憲法論と戦争責任論、および、2013年の夏の靖国神社参拝に関する安倍総理の選択を巡る私の評価については下記拙稿をご一読いただければ嬉しいです。
(1)On anniversary of Japanese surrender, issue of war history remains touchy
WPST:By Chico Harlan, August 15, 2013
(2)Japan’s Premier Stays Away From War Shrine, but Sends Offering
NYT:By Martin Fackler, August 15, 2013
(3)Abe refrains from visiting shrine to ease China tensions
FT:By David Pilling, August 15, 2013
・安倍総理の歴史認識を批判する海外報道紹介(1)~(12)+後記(上)(下)
(「後記(下)」に所謂「従軍慰安婦」なるものを巡る現下の論点をまとめています)
http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11528780014.html
・戦略的参拝反対論:靖国神社・2013秋の例大祭
--安倍総理の判断は<正解>だった--
http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11643022706.html
・首相の靖国神社参拝を巡る憲法解釈論と憲法基礎論(1)~(5)
http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11144005619.html
・戦争責任論--語るに落ちた朝日新聞の社説--(上)(下)
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/ea4896c53629991ac8ae527c518f3c3f
(1)On anniversary of Japanese surrender, issue of war history remains touchy
On anniversary of Japanese surrender, issue of war history remains touchy
Japanese Prime Minister Shinzo Abe sent an aide to a tree-lined shrine in downtown Tokyo on Thursday with instructions to deliver a tree branch as a ritual offering on his behalf. The aide, Koichi Hagiuda, told reporters later that the prime minister was sorry he could not go in person but had made a “general judgment” to stay away.
For Abe, the decision to avoid Yasukuni Shrine — a religious site that honors Japan’s war dead, including 14 war criminals — marked his latest attempt to balance competing goals: playing to his conservative base while also repairing ties with Japan’s neighbors.
降伏の記念日に際しても、日本を巡って戦争の歴史は
執拗に纏わりつく悩ましく厄介な問題の発生源である
日本の安倍晋三首相は、木曜日【2013年8月15日】緑の木々立ち並ぶ東京都心のとある神社に側近を派遣した。木の枝を宗教的儀式に供える供物として奉納するよう指示を与えた上で、【日本国首相でもある自民党総裁たる】自分の名代を派遣したのだ。その総裁の名代となった萩生田光一【自民党総裁特別】補佐は、安倍総理が自分自身で参拝できなかったことを大変残念に思っておられること、そして、「全体的な状況判断」に基づき参拝しないという決断を下されたと後ほど記者会見で語った。
この神社、靖国神社に参拝しないという安倍首相の判断は--靖国神社とは、14柱の戦争犯罪人を含む日本の戦死者を祀る宗教施設なのだけれども--相矛盾する二つの目的の間の均衡を具現しようという安倍首相の現下の方針の顕現と言える。その相矛盾する二つの目的の間の均衡とは、首相の主要な支持基盤である保守層に配慮しつつも、他方、近隣諸国との関係修復も同時に進めていくということなのだけれども。
Because of the war criminals enshrined there, and because of an on-site museum that plays down the brutality of Japan’s Imperial Army, Yasukuni has long served as ground zero in Asia’s vexing debate about decades-old history.
Leaders in China and South Korea believe Japan has never made proper amends for invading and occupying their territories in the run-up to World War II. Conservatives in Japan, Abe among them, tend to view that era as a high point of Japanese glory and ambition — all while rationalizing the army’s systematic use of sex slaves.
戦犯が祀られていること、および、日本帝国の軍隊による残虐行為をもみ消そうとしている博物館が神社と同じ敷地内にあること、これらによって靖国神社は今に至るまで長年に亘り、数十年も前の事柄に関するアジアにおける苛立たしい論争の震源地であり続けている。
支那や韓国の指導者は、第二次世界大戦に至る準備期間(the run-up to World War II)に行われた自国領土の侵略と占領について日本は適切な贖罪をしてきていないと確信している【amendには名詞用法はありませんから、この「amends」は「amendments」(改心)か「atonement」(贖罪)の誤記と捉えます】。他方、安倍首相を含む日本の保守層は、この期間こそ日本の栄光と大志が勇躍雄飛した日本人が誇るべき最も重要な時代だったと看做す傾向がある--而して、日本の保守層は、日本軍による性奴隷の組織的運用を断固として正当化し続けているのだけれども。
【第二次世界大戦に至る準備期間、①所謂「中華人民共和国」なるものは支那の正当政府ではなかった/存在さえしていなかった、②韓国・北朝鮮は国際法上なんら瑕疵のない正当な手続と法理に従い合法的に日本の領土になっていた。これらを鑑みれば、本文テクストの「自国領土の侵略と占領」(invading and occupying their territories)という表現は完全な間違いです。けれども訳は原文テクストに従いました。
加之、「性奴隷の組織的運用」(the systematic use of sex slaves)という表現は、①「性奴隷」という表象においても、また、②「組織的運用」という表象においても事実無根の空中楼閣。このことは日本では反日リベラル派さえ最早否定できない事実でしょう。けれども、WPSTでさえこの程度の「従軍慰安婦」理解しかないことは、逆に、問題の根深さを赤裸々にしているの、鴨。いずれにせよ、この箇所も訳は原文テクストに沿って行いました】
木花咲耶姫
<続く>