本稿は「英語の正体を知ると少しは気が楽になるかも」の続編です。前編に目を通していただいた上でお読みいただければ(少しは)わかりやすいと思います。また、★註の記述は少しマニアックなのでご用とお急ぎの方は飛ばしちゃってください。
TOEIC730点程度の英語力を目指している社会人の初級者は(大体、TOEICで600点~450点の方々を想定しています)、どんなことが英語でできるスキルや知識を身につけようとしているのか。つまり、初級者にとっての<英語の正体>と私が考える内容を今回は音としての英語に焦点を当てて紹介したいと思います。尚、英語の学習方法に関する私の基本的な考えについては次の拙稿をご参照ください。
・英語学習方法のTipsのようなもの(英単語編)
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/177326176225661c74a2e7507a75d543
・英語学習方法のTipsのようなもの(リーディング編)
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/6695d98d8c0ced03fc5355129fb44e3f
・英語学習方法のTipsのようなもの(ライティング編)
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/d5bdd6f185996c25df7ad322a74a14c0
・英語学習方法のTipsのようなもの(リスニング編)
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/1ffd9cc90ca27a11208b0e332d0140ff
大事なことですから確認させてください。私がここで<音としての英語の正体>と呼んでいるものは、初級の英語学習者が身につけようとしている英語の内容のことです。ですから、<英語の正体>とは、人智を超えて言葉の神々の世界に聳え立つ英語の全体像というような神々しくもおどろおどろしいものではなく、個々の学習者の現在の英語力と到達目標に従って決まってくる身近で相対的なものです(うにゅ、「身の丈にあったものです」ですかね?)。
よって、音声学的や音韻論的な英語の特徴とかそれらの特徴がどう歴史的に形成されてきたか・・・等々の英語学の話題は扱いません。ですから、英語自体の性質の情報、つまり、「英語の音には母音・子音とも(数え方にもよるけれど、)25個程度の種類があって、(数え方にもよるけれど)5個の母音と約15個の子音の品揃えしかない日本語とは大きく異なる」とか「日本語の音節は発声される等間隔の音のまとまりのことであり(それは、厳密には「拍」(Mora)と呼ばれるべきものであって)、これに対して、英語では音のまとまりとまとまりの間隔は等間隔ではない。つまり、英語の音節(Syllable)は、母音を中心に一息で発声される音の塊りである」、等々の話は本稿では触れません。
◆口を開けば耳が開く 耳が開けば口も開く!
Speaking とListeningは別の<種目>です。そう、100メートル競泳自由形と1000メートル平泳ぎが別種目であるのと同じ意味で別の能力です(よって、専門的な能力開発のためには、Speaking ならSpeaking のListeningならListeningに特化したトレーニングをしなければ大幅なスキルアップは難しい)。しかし一方ではSpeaking とListeningは密接に関連しています。ある単語なりセンテンスが発話できるようになれば直にその単語やセンテンスは聞き取れるようになり、ある単語なりセンテンスが聞き取れるようになれば後は努力しだいで確実にその単語やセンテンスを話せるようになる。これも事実です。
日本人の謙虚さのせいか、「自分は英会話が苦手」と思っている社会人の方は少なくない。しかし、そんな方々は、英語でどんなことが話せない/どのように話せないから「英会話が苦手」と自己判定しておられるのでしょうか。その判定基準が明確な方はそう多くないと思います。まして、「苦手」の原因を自覚している方、つまり、音としての英語に関するどんな知識やスキルが不足しているのかを自覚している方はさらに少ないと私は感じています。
はっきり言います。英語圏に旅行に行き英語圏で買い物をし公共交通機関を利用するのに必要な会話力。あるいは、イギリス人やアイルランド人の仲間達と休日にわいわいとフットサルを楽しむための英会話に限定した場合、「英会話が苦手」の原因の75%は聞き取りが苦手だからです。そして、聞き取りが苦手のそのまた75%は音声としての単語を知らないことが原因。もちろん、「75%」という数字は例によっていいかげんなものですが(笑)、傾向としてはこう言えると思います。
会話は<言葉のキャッチボール>、つまり、相手の言葉が聞き取れなかった段階で会話は中断してしまいます。また、英会話は<英語の音声という文字で中空に書きしるす英作文>。ならば、アルファベットで紙に書く英作文と同じで知らない単語は書けないし読めません。よって、フットサルを楽しむ程度の英会話に限らず総てのレヴェルについて、<音としての英語の正体>の中には英文法や英単語の知識が少なからず含まれていることになります。ここが肝心なポイントです。確認!
Speakingの上達にはListening能力の開発が大切
Listeningの上達には(音の領域での)英文法と英単語の知識の拡充が不可欠
◆あなたのListeningの目標は?
何が聞き取れれば英語が聞き取れたと言えるのでしょうか。また、どうすれば聞き取れるようになるのでしょうか。旅行や買い物をエンジョイするのが目的なら、CD付きの英会話テキストを1~2冊買ってきて、例文と単語を丸暗記する(例文を音読する。例文を暗唱する)。後は、恥と見栄を捨てて覚えた例文を使ってみる。これで充分です。通勤時間を片道1時間の往復2時間とすれば、平日;通勤の2時間+昼休憩の1時間+自宅で1時間の合計4時間、土日;6時間、週合計32時間の学習を6~12週間も持続すればそれは充分身につきます。しかし、TOEIC730点程度の英語力を初級者が目指す場合、もう少し(ほんの少し)、ハードルは高くなります。それは、
目標は3分間の英語のスピーチを理解できる聞き取り能力
3回聞けば1センテンスを完全にリピートできる聞き取り能力
独断と偏見以外の何ものでもありませんが、上に掲げた二つのことが達成できればTOEICの目標点も自ずとクリアできるし、(ボランティア活動を含む)ビジネスを英語で行うこともなんとか可能になると思います。要は、初級者のあなたにとっての<英語の正体>は、3分間のスピーチを理解するのに必要な英語のポイントと3回聞けば1センテンスを完全にリピートするのに不可欠な英語のポイントなのです(★)。
★註:3分間のスピーチに含まれる英単語数
1分間に英語のネーティブスピーカーは平均何語話す? これについては、(日本語もそうですが、)年々単語数が増える傾向が見られるそうですが(時代とともに人間は「早口」になっている!)、普通、毎分160語~180語とされています。200語を超えればかなりの早口であり、250語を超える発話は「早口芸人」の英語(?)。逆に、120語を切る発話は小さな子供に話しかける母親か、高い社会的地位にある方が(威圧的に部下に)話す際のスピードです。特に、低い声で話される場合は「威圧的」の印象は強烈。例えば、私が尊敬してやまないマーガレット・サッチャー元英国首相の引退間際の英語がそうでした(彼女が若手タカ派として初入閣されたときの英語は、晩年に比べなくとも、速くて高音でキャンキャンキャンという感じでした)。
。
3分間の英語といっても、例えば、ゴシップ記事の英語と法律の教科書の英語では文字通り「異なる言語」です(使われる単語やレトリックの難易度も千差万別)。しかし、本稿では英文の質の違いは考えないことにします。なぜならば、社会生活を送るのに最低限必要な英語力はどなたにも共通でしょうし、それを超える知識とスキルが必要な英語の内容は、各々の学習者がそれを「必要とする領域」に限られるだろう。つまり、その英文が他の方にとってどんなに特殊な単語とレトリックが駆使されていようとも、その英文を聞き取れるようになりたいと考えている学習者にとってはその英文は親しいと考えるからです。
3分間の英語のスピーチを(500ワード程度の英文を)聞き取ることが<英語の正体>の一つと仮定した場合、何が聞き取れればそのスピーチが理解できたと言えるでしょうか。私は、流れてくる音声の中から、全体の主題・登場人物・個々の登場人物の間の関係・その関係の変化・固有名詞・年号を含む数字という6種類の情報を抽出できたかどうかを<英語が聞き取れたかどうか>の判定基準と考えています。なぜならば、この6種類の情報が一度でキャッチできたとすれば「TOEICの目標点も自ずとクリアできるし、(ボランティア活動を含む)ビジネスを英語でなんとか行うことも可能になる」と思うからです。もう一つの<英語の正体>;どうすれば、3回聞けば1センテンスを完全にリピートできるか、についてのコメントは項を改め、ここでは<英語が聞き取れたかどうか>の判定基準を確認しておきます。
英文の聞き取りができているかどうかの6個のチェックポイント
?全体の主題 ?登場人物 ?個々の登場人物の間の関係 ?その関係の変化
?固有名詞 ?年号を含む数字
◆1センテンスの英文を厳密に聞き取る
英語の1センテンスはどれくらいの長さなのでしょうか。これについてはいろんな統計があるのですが、平均しても(足して2で割っても)、中央値を求めても(100個のサンプルを長さ順に並べてみて、50番目と51番目のサンプルの平均を取ってみる)あまり意味がない。よって、ここでは便宜上12語で構成されるセンテンスを考えます。つまり、<英語の正体>は12語の英文の厳密な聞き取りであり、そのために必要なスキルと考えるわけです(★)。
★註:1センテンスの英文の長さ想定の根拠
統計上一番多い文型は、S+V+Oの第3文型、次がS+V+Cの第2文型です。この両者で60%を軽く超えるらしい。では、平均的な英文の長さは3語? そんなわけはない。副詞(前置詞+名詞を含む)が加わったり、Vが助動詞+動詞の場合もある。また、Oが名詞節だったりしますからね。それに、パーセンテージは少なくとも大人が話す文章では第4文型や第5文型が話者の主張の核心を担う場合も少なくないでしょう。よって、ここでは統計的なアプローチではなく論理的に(笑)、聞き取りの目標とすべき平均単語数考えます。
まず、S+V+Oの文を基本とします。そして次に、S=冠詞+形容詞+名詞;V=助動詞+not+動詞;O=名詞節を導く接続詞+(S+V+C+副詞句)の構造を想定した上で、かつ、名詞節のS=代名詞;名詞節のV=動詞;名詞節のC=形容詞;名詞節の中の副詞句=前置詞+名詞、の組み合わせでできているセンテンスを聞き取りの目標として仮定することにします。この場合、それは次の12語の音の連続になります:
冠詞+形容詞+名詞+助動詞+not+動詞+接続詞+代名詞+動詞+形容詞+前置詞+名詞
この12語という長さは統計的な何の根拠も持ちませんが、「これくらいの長さのセンテンスが厳密に聞き取れれば、日常会話やビジネスで使われるたいていのセンテンスは聞き取れるだろう」という推測(希望)をすることは許されるのではないかと思います。よって、(もちろん上の12語の組み合わせはワン・オブ・ゼンですが、)センテンスの長さとしては、一般的に「12語のセンテンス」を初級者が厳密な聞き取りを目指す<英語の正体>と考えるわけです。
英語学校の先生方の中には、ご自分が英語ができなかった少女/少年の頃のことをすっかり忘れておらる方も少なくない。傑作なのはListening対策コースでのこんな発言です。
みなさん♪ この問題は難しいです注意して聞いてくださいね!
あのね先生。注意しても聞き取れないから生徒さんは学校に通っているのですよ。授業料をいただく英語学校ではですから、「どう注意するか」「何に注意するか」を教えなければならないのではないですか、と私は言いたくなる。例えば、「TOEICのパート2では80%の質問の文頭は疑問詞です。またその疑問詞が主語で述語動詞が will+be や can+be の場合 will や can はかなり弱く発音されます。そこが逆に聞き取りのヒントになります。では、今日は疑問詞の聞き取りに注意しましょう」とかの指導を最低でもすべきだと思います。
12語のセンテンスを最初は少なくともS+Vまで、次はその後ろも聞き取れるように注意して努力しましょう。できれば、そのセンテンスの疑問文への変換とそれへの応答も同時にやってみられれば効果絶大です。で、どうやって? その説明は別の機会に譲りたいと思います。例によって竜頭蛇尾ですが終わりです(笑)、英語の正体を意識して頑張ってください。
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