英語と書評 de 海馬之玄関

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英語の正体を知ると少しは気が楽になるかも

2005年07月14日 14時21分07秒 | 英語の話題

★註の記述は少しマニアックなのでご用とお急ぎの方は飛ばしちゃってください。

どうすれば英語ができるようになるの? こんな疑問を持つ人は多いけれど、身につけたい英語力の内容を具体的にイメージできている人は意外に少ない。自分が身につけたいと思っている<英語の正体>を理解している人は更に少ないと思います。

ここで言う<英語の正体>とは、「英語もインド=ヨーロッパ語の一つであり、もともとドイツ語と近い言葉だったが、11世紀半ばからフランス語系の語彙を大量に受容して現在に至っている」とか、「母音が5個しかない日本語とは違い英語には母音が(数え方にもよるが)25個以上ある」、あるいは「英語の時制は12種類あって(動詞の変化形としての純粋な時制は「現在」と「過去」の2種類)・・・」というようなことを言っているのではありません。

ここで言う<英語の正体>とは、「どんなことが(何時までに)英語でできるようになりたいのか」の問いと表裏一体をなしている、「そのために習得すべき<英語の範囲>はどんなものか」という具体的な問いへのこれまた具体的な解答内容のことです(★)。


★註:英語の勉強は知識習得かスキルの獲得か?
世には、English Learning ではなく English Acquisition が大切だと説く先生方も少なくない。知識を詰め込むための「お」の付く「勉強」ではなくて、「慣れ」と「訓練」によって英語を使えるスキルを身につけるのが大事という主張です。Acquisitionを志向する立場の検討はここでは行わいませんけれども、Learning にせよAcquisitionにせよ<使える知識やスキル>として獲得すべき英語の内容は特定可能で記述可能である、そして、特定し記述するための前提条件は「どんなことが(何時までに)英語でできるようになりたいか」が明確に定まっていることだ、と私は考えています。



多くの(圧倒的多数の?)英語学習者は自分がタックルしようとしている<英語の正体>をあまり意識せずに勉強していると思います。学習者の多くは、(1)どんなことが何時までに英語でできるようになりたいのか、(2)そのために習得すべき<英語の範囲>はどんなものか、という問いを不問に伏したまま努力している。ならば、それは目的地もわからずに走り出しているようなものではないでしょうか。目的地も予算も期間も決めずに(とりあえず)旅行に行こうとして成田空港や東京駅に向かう友人がいたら誰しも心配するでしょう? けれど、こと英語学習の場合にはこれとパラレルな事態がむしろ通常の光景になっている。狂ってるよこの国の英語教育は、変だよ日本人の英語学習は、と私は感じています。

と、日本人の英語学習に悪態をつき悲憤慷慨するだけでは無責任というものでしょう。よって、単語とイデオム、文法に焦点をあてて<英語の正体>についてコメントしたいと思います。前提条件として想定するレヴェルは、社会人の初級者がTOEIC730点程度の英語力を目指すケース:大体、TOEICで450点~600点の方々を想定しています。彼等がどんな質と量の英語の単語・イデオム・文法を身につけようとしているのかを考えてみます(尚、英語学習方法論に関する私の基本的な考えについては次の拙稿を参照くだされば嬉しいです)。

 

▼英語学習方法のTipsのようなもの

・英語学習方法のTipsのようなもの(英単語編)
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/177326176225661c74a2e7507a75d543

 ・英語学習方法のTipsのようなもの(リーディング編)
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/6695d98d8c0ced03fc5355129fb44e3f

 ・英語学習方法のTipsのようなもの(ライティング編)
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/d5bdd6f185996c25df7ad322a74a14c0

 ・英語学習方法のTipsのようなもの(リスニング編)
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/1ffd9cc90ca27a11208b0e332d0140ff



◆単語とイデオム
所詮、外国語の力は「単語の力」です。ただし、ここでいう「単語の力」とは、スペルと日本語の意味と発音の三位一体の知識のことです。このような三位一体の情報をユニットとする単語とイデオム(熟語)を幾つ知っているかが、結局、外国語の力を決定すると私は考えています(★)。さて、TOEIC730点を目指す初級学習者を想定する本稿では、獲得されるべき単語と熟語の目標を6,000語+600熟語と設定します(設定の根拠は「企業秘密」であり割愛!)。よって、単語とイデオムの面では、

君がタックルしている<英語の正体>は6,000語+600熟語に過ぎない! 


学力低下をもたらしたと悪評ぷんぷんの現行の学習指導要領でさえ、中学校で900語、高校で400語~1300語の英単語が学ばれることになっています。また、普通の社会人ならこれらに加えてカタカナ英語にしてもビジネスや日常生活の頻出単語を数百語は知っているはずです。よって実際には6,000語+600熟語のハードルはそう高いものではなく、新たに覚えなければならないのは3,000語+400熟語程度になると思います。これ毎日20語覚えれば熟語も含め半年以内に攻略可能ではないでしょうか。では頑張ってください!

てなわけにはいきません。人間は忘れる動物ですからね。例えば、1回覚えて記憶に定着できる単語と熟語の数を学習した全体の20%と仮定すると(要は、一度覚えてもその8割はきれいさっぱり忘れるとすると)、1回目で覚えられる単語と熟語は3,400語×20%=680語になります。これは毎日20語を覚えたとしても170日でやっと680語を記憶定着できるにすぎないことを意味します(∵3,400語÷20語=170日)。同様に2回目は忘却の彼方にフェードアウトした残余の2720の単語と熟語が作業の対象;そして、2回目の学習で記憶定着できるのは2720語×20%=544語。要は、136日でこれまたやっと544語が攻略できたことになり、このペースで引き続き頑張ると仮定すれば、約2年4ヶ月かけてやっと目標の90%近くが攻略できることになります(★)。これ簡単ではないけれど無理難題でもないでしょう(笑)。


★註:三位一体の単語の知識を支える品詞と語用の情報
「単語の力」は(1)スペルと(2)日本語の意味と(3)単語の音の三位一体の知識である。これに加えて、(4)ある単語がセンテンスの中ではたす役割のパターン(これを単語の「品詞」と言います)と(5)文脈による単語使用の妥当性(これを単語の「語用論」と言います)の知識があれば英語の運用能力は格段に進歩すること請け合いです。英語のネーティブスピーカーとは、ある意味、ある1個の単語についてこれら5種類の知識を備えている人間のことと言ってもよいくらいですから。尚、英語の品詞には8種類:名詞・代名詞・動詞・形容詞・副詞・前置詞・接続詞・間投詞、があります。また、語用とは(例えば「食べる」という意味の「喰う」について、)高級レストランのどんなウェイター/ウェイトレスさんもお客さまに対して「おい、てめーたち、何喰いてーんだよ」と言わないという類の知識のことです。


★註:学習時間の算定
記憶を定着するためにトータルで学習すべき延べの単語と熟語の数は以下の等比級数で表現できます;Sは定着できた単語の累計総数、Aは目標の3,400語、rは記憶できない率の80%、nは学習の回数を表わしています(ただし、本文と同じように一度覚えた単語と熟語は二度と覚えないものとします)。

S=A+A・r+A・rの2乗+・・・+A・rの(n-2)乗+A・rの(n-1)乗

後は通常の等比級数の手法に従い、S-S・rを求めると、
S・r=A・r+A・rの2乗+A・rの3乗・・・+A・rの(n-1)乗+A・rの(n)乗
S-S・r=S(1-r)=A-A・rの(n)乗=A(1-rの(n)乗)
∴ S(1-r)=A(1-rの(n)乗) 
ここで(1-r)は明らかに0ではないから、(1-r)で両辺を割って、
S=A(1-rの(n)乗)/(1-r)

nが限りなく大きくなるときSはA/(1-r)と同値である。
ここでA=3,400 r=0.8を代入すると、S=17,000
つまり、定着できるまで覚えばければならない延べの単語と熟語の数は(忘れたものは何度でも繰り返し覚えることにして、繰り返し学習される単語と熟語も1語とカウントすれば)17,000語になり、一日に20語を覚えるとすればこの全工程は850日で完了することになります。

もちろんこれは数字の遊戯であり、記憶の定着率(逆に言えば忘却率)は全工程で一定ではありませんし、20語を定着率20%(=忘却率80%)で覚えるための一日の勉強時間も850日間では相当変動するにちがいありません。また、一日に投入する学習時間によっても工程の期間は変化するでしょう(例えば、上の数字遊戯では一日の勉強時間を90分と仮定していたとしますと、もし3時間を投入することにすれば、計算上(あくまで計算上ですが、)425日で全工程終了になります)。しかし、単語と熟語に関しては初級者に課されている努力の量がそれほど膨大なものではないということ、このことは感覚的にご理解いただけたかと思います。



◆文法
無味乾燥な学習は誰しも嫌いです。そして、単なるアルファベットの文字列として英単語を覚えるなどは「無味乾燥」の最たるものでしょう。では英単語を(比較的)楽しく覚えるにはどうすればよいか。それは文の中で、読んだり・聞いたり・書いたり・話したりしながら覚えることに尽きます。なぜならば、センテンスの中に置かれて始めて単語は意味を持つのであり、意味を得た単語は最早「無味乾燥」ではなくなるからです。ここで、単語の配列のルールと単語の変化のルールを<英文法>と大雑把に捉えるならば、英文法の大切さがここからも導かれます。

文法の知識はTOEIC等の「文法問題」を解くためだけに必要なのではなく、英語を書くためにはもちろん、話すためにも・読むためにも・聞くためにも必須の知識です。例えば、”I prefer ・・・”という英文が聞こえてきて、次に、”Kenbishi to Tsukasabotan”という<音の固まり>が飛んできたとします。ここで、「剣菱の方が司牡丹より好きだ」というセンテンスの目的語にあたる「・・・が好きだ」の「・・・が」というセンテンスのパーツが、”I prefer ”の音声に続いて聞こえてくると予測できているのとそうでないのとでは、聞き取りの精度に格段の差が生じることは容易に想像できるでしょう。

プロ野球のバッターが次に飛んでくる投球の球種やコースを予測しているからこそ、150キロ超の速球をバックスクリーンに叩き返すことができ、外角低めに決まるはずの高低さ1フィート以上のスライダーをレフトフェンまで弾き返すことができるのと同じこと。実に、文法は大切なのです。

竜頭蛇尾になりますが制限字数も迫ったので小結。TOEIC730点程度の英語力を目指す初級学習者を想定する場合、獲得されるべき文法の知識を私は次のように設定しています(設定の根拠は「企業秘密」であり割愛♪)。では頑張ってください。

君がタックルしている<英語の正体>は文法の側面では! 


英文法:単語の配列のルール
・単文の定義と文型 
・名詞節 形容詞節(関係詞節) 副詞節
・倒置構文と強調構文
・修飾のシステム(冠詞を含む形容詞的な限定修飾 副詞的な状況修飾)
・パンクチュエーション(つまり、.,:;という記号の使い方とそれに伴う発音のルール)

英文法:単語の変化のルール
・述語動詞の変化システム(人称・時制・態・法の4変化システム)
・話法の助動詞
・準動詞(不定詞・動名詞・分詞)
・名詞の変化システム(人称・格の2変化システム 可算名詞・不可算名詞の区別)
・形容詞と副詞の変化システム(比較と最上級)




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