[1]不定詞
今回のこのカテゴリー「再出発の英文法」のテーマは「不定詞」です。不定詞は大学受験英語でもTOEIC/TOEFLでも最重要論点の一つですが、今ひとつ自信が持てないという方も多い論点。例えば、「英文法嫌い」の方の中には英文法の参考書などで、
<不定詞の説明>
不定詞は「前置詞の to +動詞の原形(=「to +V原形」の形を取り、センテンスの中で名詞として使われる名詞的用法、形容詞として他の名詞を修飾する形容詞的用法、そして、主に「~のために」「~した結果」という理由や原因、結果を表す副詞的用法がある。尚、seeやhearなどの感覚を表す知覚動詞、have や make、let や get などの「誰々に~をさせる」「誰々に~をしてもらう」という使役を表す使役動詞とともに不定詞が使われる場合には「to +V原形」ではなく(toの付かない)原形の不定詞が使用されることも多い。
などと読んだだけで、もう本を投げ出す(ブログを閉じる)方も少なくないと思います。大体、不定詞が何ものか理解していないのに、「不定詞には・・・の用法がある」「感覚動詞や使役動詞が述語動詞になるセンテンスでは原形不定詞が用いられる」とか言われても、「私的にはそんな説明はノーサンキュー」というものでしょう。では、不定詞(infinitive)とはそもそも何もの?
◆不定詞とは何もの?
What is infinitive? 不定詞とは何か? これを説明する前に、上で書いた不定詞の説明を例文を挙げながら一度確認しておきましょう。抽象的な文法の話しを少しでも具体的に考えるためです。
(1)不定詞の名詞的用法:最初の「to go」
Ms. Milk’s plan is to go to Boston to study modern architecture.
(みるくさんの計画は現代建築学を学ぶためにボストンに「行く事」だ)
(=日本語らしい訳:みるくさんは現代建築学を学ぶためにボストンに行こうとしている)
(2)不定詞の形容詞的用法:「to realize」
Ms. Sakuranbo has had a plan to surely realize in the very near future.
(さくらんぼさんは近い将来必ず「実現したい」計画を持ち続けている)
(3)不定詞の副詞的用法:2番目の「to study」
Ms. Milk’s plan is to go to Boston to study modern architecture.
(みるくさんの計画は現代建築学を「学ぶために」ボストンに行く事だ)
(4)感覚動詞+原形不定詞:「saw ~ dance」
I saw Mr. Galleon dance to music on the radio.
(私はガレオンさんがラジオの音楽に合わせて「踊るのを」見た)
(5)使役動詞+原形不定詞:「have ~ call」
Shall I have him call you back as soon as he gets back?
(彼が戻りしだいあなたに「電話」させましょうか)
☆使役動詞の中では get だけは後に原形不定詞ではなく「to+V原形」の普通の不定詞を従えます。また、意味としては get と have は「行為者が努力したり説得したりして(使役の)相手に何かをしてもらう」というニュアンスが含まれます。
例えば、I got my cat, Suoh-san, to jump up from the stool. (私は手練手管を使い飼い猫の蘇芳さんに腰掛けから飛び上がらせた)では猫が擬人化されており、かつ、幾つかの工夫をして蘇芳さんに「飛び上がらせた」ことを表しているのです。
不定詞(infinitive)とは何か? これは「読んで字の如く」です。つまり、「不定詞」とは「infinitive=限定されていないもの」であり「定まっていない詞」ということ。そして、何が定まっていないかと言えば、それは「主語が定まっていない」ということなのです。
而して、逆に、主語が定まっている動詞。ということは、ある英文のセンテンスの中で(「S→V→・・・」構造における「V」という)「述語動詞」として使われている動詞のことを「主語が定まっている動詞」という意味で(「不定詞」に対して)「定動詞」(finite verb)と呼びます。文法用語なんか覚えなくともよいのですが、これまた読んで字の如くではないでしょうか。
・不定詞=主語が定まっていない動詞
・定動詞=主語が定まっていいる動詞
(=センテンスの中の「V」=述語動詞)
◆不定詞の意味
「不定詞」とは正確に言えば、「センテンスの中で主語が不定な動詞」(=infinite verb)に他なりません。しかし、逆に言えば、不定詞は具体的な主語こそ定まっていないものの、その意味としては、動作や状態を表す「動詞」の色彩を色濃く残している。これは、不定詞が「to+動詞の原形」や「動詞の原形そのもの」であることからも当然推測できることでしょう。
繰り返しになりますが、あくまでも不定詞は主語が定まっていない「動詞」。すなわち、それはセンテンスの中の「述語動詞」ではない。けれど、不定詞は「動作」や「状態」を表す「動詞」の側面を失わない。いわば不定詞は「二重人格」的な存在なのです。 混乱してきましたか? ここで、不定詞の「二重人格性」を整理しておきましょう。
●不定詞の本質的な性質
・センテンスの中の「述語動詞」(「S→V→・・・」構造の「V」にはなれない)
・具体的なセンテンスの中で主語が定まっていないから不定詞の意味は、一般的な「~すること」「~するような」「~するために」「~する結果として」というものになる
・主語が定まっていない。逆に言えば、不定詞の意味上の主語は「世の中の一般の人々」になる。そこで、不定詞が表す動作や状態について「意味上の主語」を特に明示したい場合には、その(意味上の)主語を(目的格や所有格にするか、「前置詞+目的格」の形にして、原則的には)不定詞の前に置かなければならない
この経緯を例文で確認しておきましょう。
(a)不定詞の意味の一般性:
定動詞=「is」, 不定詞=「to see」「to believe」
To see is to believe.(「見ること」は「信じること」だ)
to see もto believeも、例えば、This is a pen.の「this」や「pen」と同じ名詞の働きをしています。そして、これら二つの不定詞は「見る」や「信じる」という「動作」を表す動詞の意味は保持しているものの、(特定の私やあなたではない、普通の人が)「見ること」「信じること」という一般化がなされているのです(尚、この「一般化」の性質は動名詞では不定詞の場合より更に顕著。このことについては下記のURLをご参照ください)。この経緯を次の「定動詞」を使った例文と比較して考えてみましょう。
Ms. Mariko sees.(マリコ先生は見ている)
Mr. Houzan has believed a rumor.(鳳山さんはある噂を信じている)
この sees や believed が表す「行為」や「動作」の具体性を不定詞の to see と to believe は持っていないのです。
・再出発の英文法:不定詞と動名詞
[2]不定詞と動名詞の差異
(b)不定詞の意味上の主語:
2番目のセンテンスの「for Stellar」がto solveの意味上の主語
It is easy to solve this math question.(この数学の問題を「解くこと」は容易い)
It is easy for Stellar to solve this math question.
(ステラ姫にとってこの数学の問題を「解くこと」は容易い)
(c)不定詞の意味上の主語:
「him」が「to have been」の意味上の主語
I believe him to have been an English teacher.
(私は彼が英語の先生「だった」と思い込んでいたのです)
[2]分詞
◆不定詞・動名詞・分詞は「準動詞三兄弟」
分詞は不定詞・動名詞と併せて「準動詞」(Verbal)と呼ばれていますが、それらは読んで字の如く「動詞に準じる詞」(Verbに関連した詞)です。不定詞については、前項でこの経緯は説明しましたが、不定詞・動名詞・分詞の「準動詞三兄弟」について通して確認しておきましょう。「準動詞」は「動詞に準じる詞」である。例えば、
(1)準動詞:不定詞
To see is to believe.
(見ることは信じること→見れば分かるよ)
不定詞のto seeとto believeも「見る」という動詞の意味を保持したまま、 同時に、このセンテンスでは(主語や補語の役割を果たしており)名詞の働きをしている。
(2)準動詞:動名詞
Seeing is believing.
(見ることは信じること→観察から確信が生じる)
動名詞のseeingとbelievingも(1)の不定詞と同様、「見る」という動詞の意味を保持したまま、同時に名詞の働きをしている。
(3)準動詞:分詞
Mr. Nukunuku has finished an e-learning Animation editing course built in the intensive program of Yoyogi Animation College. (ぬくぬくさんは、代々木アニメーション学園が提供する集中プログラムに組込まれているe-ラーニングによるアニメーション編集コースを修了した)分詞の built 以下は名詞の an e-learning Animation editing course を形容詞のように修飾する働きをしている。
つまり、分詞を含む準動詞は、
・センテンスの述語動詞ではないけれど
・「~する」「~である」「~に対して・・・する」という動詞の語義を保もちながら
・名詞や形容詞や副詞と同じ働きを実際の英語のセンテンスの中でする詞なのです。
◆分詞の意味と二つの用法
分詞(Participle)も読んで字の如く、「(動詞と形容詞の性質を)併せ持つ詞です。Participleの語源は(「参加する」や「関与する」「性質を帯びる」「苦楽を共にする」の意味の participateの語源でもある)ラテン語の participium ですから、日本語の「分詞」という文法用語はParticipleの意訳と言ってよいでしょう。明治時代の英語研究者が漢語の知恵を絞って訳されたのだと思います。整理すれば、分詞は、
●分詞
・英文の述語動詞ではないけれども
・「~する」「~である」「~に対して・・・する」という動詞の語義を保もちながら
・形容詞と同じ働きを実際の英語のセンテンスの中でする詞です。
分詞には(A)「動詞の原形+ing」の形を取る「現在分詞:V+ing」と「過去分詞:V-pp」があり、(B)「現在分詞」と「過去分詞」の両方とも普通の形容詞と同様に、名詞を修飾する「限定用法」と述語動詞の補語となる「叙述用法」の二つがあります。つまり、原則、実際の英語のセンテンスの中で使われている分詞は次の4種類のどれかなのです。
・現在分詞ー制限用法
・現在分詞ー非制限用法
・過去分詞ー制限用法
・過去分詞ー非制限用法
尚、限定用法(=制限用法)とは、例えば、red applesが「世界中の林檎から赤い林檎だけを選んでいる」ように名詞の意味を限定すること。叙述用法(=非制限用法)とは、例えば、Jody is cool.(ジョディーさんはかっこいい)や Yui left the door open.(ゆいさんはドアを開けっ放しにしていた) の中のcoolやopenのように、述語動詞や目的語の補語になる用法のことです。
別の観点から言えば、叙述用法は、第2文型と第5文型,つまり、「S→V→C」「S→V→O→C」のCの位置に来る用法と言ってもいいでしょう。以下、例文でこのニ用法の理解を深めておきましょう。
(イ)制限用法
Another significant factor contributing to the education problems is decreased number of lessons in public schools in Japan.(日本で教育問題を引き起こしている他の重要な要因は、公立学校における削減された授業時間数である→・・・公立学校における授業時間数の削減である)
現在分詞のcontributing「貢献している/関係している」も、過去分詞のdecreased「削減された」も名詞のfactorとnumber of lessonsを修飾しています。ちなみに、「V+ing」の形の現在分詞は能動的な意味や現在動作が進行している意味を、「V-pp」の過去分詞は「~された」という受動的な意味か動作が完了している経緯を表します。
(ロ)非制限用法
Audrey could make herself understood to the American reporters in English.
(オードリーさんはアメリカ人の記者達に英語で彼女自身を理解させることができた)
過去分詞のunderstoodは「make→something→understood」(=「make→O→C」)の形式で「somethingを理解させる」の意味を表します。現在分詞の非制限用法の例も一つ挙げておきましょう。現在分詞が動作が進行していることと、動作が(強いられた受け身のものではなく)能動的なものである経緯がよくわかると思います。
Vanille-san was happy to see her cat Masoh-san sleeping soundly.
(バニューさんは彼女の猫の真赭さんがすやすや眠っているのを見て幸せだった)
◆述語動詞の一部になる分詞の働き
分詞は形容詞と動詞の意味と役割を分有する詞。こんな説明を上でしました。しかし、かなり重要な例外が四つもあります。といいますか、本来、分詞が「形容詞と動詞の意味と役割を分有する」ことからこの一見例外と見えるパターンが発生したとも言える。その「英文法の世界のVIPクラスの例外」とは次の四個、
・現在進行形の述語動詞の一部になる:「be動詞+現在分詞」
・受動態の述語動詞の一部になる:「be動詞+過去分詞」
・完了形の述語動詞の一部になる:「have+過去分詞」
・分詞構文の中で「副詞句の意味上の述語動詞」になる:
「現在分詞」「being+過去分詞」
例えば、I am waiting for some feedback about my article.(私が書いた記事に関するコメントを私は待っている所です)という現在進行形の文は、「私は「待っている状態」である」ということでしょう。更に、Ms. Toldip was praised for her splendid article on China Problem by her master.(トルディップさんは、彼女の素晴らしい支那問題に関する記事を師匠から誉められた)という受動態の文は、「彼女は「誉められた状態」である」という「S→V→C」から発展したとも考えられるのです。
而して、上の四つの<例外>に関しては各自英文法の参考書などで調べていただくとして、この記事の段階では、
・分詞は形容詞と動詞の意味と役割を分有する詞
ということだけを、しっかり覚えていただければよいと思います。
<確認演習>
この記事で説明したことを例題で確認しましょう。
▼例題1:
Every employee has their salary automatically < > in their bank account.
(A) deposited
(B) depositing
(C) are deposited
(D) deposit
訳:すべての従業員は給料を自動的に自分の銀行口座に振込んでもらっている。
正解:(A)
説明:「have +目的語+過去分詞」は「目的語を~してもらう」「目的語を~させる」という使役の意味になります。make, let, get もhaveと同じ構文を取る使役動詞(ただし、getだけは「S → get → 人 → to 不定詞」の形になります)。
尚、例文中のEvery employeeに注目。every, eachは原則単数形扱いですけれども、(特に)人間をevery, eachが修飾している場合には「every/each + 名詞」を三人称複数の代名詞(=they, their, them)で受けることは普通です(例えば、Each student has their own desk.)。そうしないとなると、次のように表現するしかなく「失礼な!」になるからです。
Every employee has its salary・・・・ 【「人間」をit(それ)ですか?】
Every employee has his/her salary・・・・ 【法律の条文みたいですね?】
▼例題2:
I often heard Ai Otsuka < > that song.
(A) sing
(B) sings
(C) sung
(D) to sing
訳:私は大塚愛ちゃんがその歌を歌うのをよく聞いた。
正解:(A)
説明:hearは知覚動詞なので空所には原形不定詞(V-原形)が入ります。
「S→V(知覚動詞)→O→V-原形」で「Oが~するのを知覚する」の意味になります。
▼例題3:
< > a dictionary, I couldn't understand the meaning.
(A) Consulting with
(B) Consulted by
(C) Consulting
(D) Being consulted
訳:辞書を引いてもその意味がわからなかった。
正解:(C)
説明:分詞構文です。分詞構文は、「現在分詞+・・・」の形の副詞句で主節に様々な状況説明を加える表現方法。例えば、例題は以下のように理解できます。
Though I consulted a dictionary, I couldn't understand the meaning.
【主節と従属節の主語が共通の場合、分詞構文の意味上の主語は省略可能です。もちろん、接続詞も不要】
↓
Consulting a dictionary, I couldn't understand the meaning.
【分詞構文の完成!】
▼例題4:
It's dangerous to use a cell phone < > driving.
(A) without
(B) due to
(C) during
(D) while
訳:車を運転しているときに携帯電話を使うのは危険です。
正解:(D)
説明:It is dangerousは「it は危険です」ではなく、it は「形式主語」でitの意味はto不定詞以下になります(to不定詞の名詞的用法)。ポイントは、空所の後ろが句になっていること。
通常、前置詞の後方は「句」になり、接続詞の後方は「S→V→・・・」構造の「節」になるはずですが例外があります。それは、時間を表す副詞節(while, when等が導く節)では、そして、主節と副詞節の主語が同じ場合には、副詞節の主語を省略して述語動詞を現在分詞にできるのです。よって、例題を正式に書き直すとこうなるのです(特に意味上の主語が明記されていない不定詞の主語は「一般人」ということも確認してください)。
It's dangerous for anybody to use a cell phone, while the person drives.