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靖国<不戦勝>の安倍総理の作戦勝ちに歯ぎしりする海外報道紹介(5)

2013年08月26日 19時22分12秒 | 英字新聞 de 政治経済


Official visits to Yasukuni have long been a tense point in regional relations because victims of Japanese wartime aggression, including China and South Korea, view the site as a potent symbol that Japan remains unrepentant for its past.

Mr. Abe’s gesture failed to mollify China, which is locked with Tokyo in a bitter standoff over islands that China says Japan claimed in the late 1800s as one of the aspiring imperial power’s earliest attempts to impose its will on the region. On Thursday, China summoned the Japanese ambassador in Beijing to “express strong protest and stern condemnation” over the cabinet members’ visits, said Hong Lei, a spokesman for the Chinese Foreign Ministry. Mr. Hong called the shrine visits a “brazen challenge to historical justice.”

政府高官の靖国神社参拝は今に至るまで長らく東アジア地域の国際関係を緊迫させてきた契機である。なぜならば、支那と韓国を含む戦争による日本の侵略の犠牲者の目には、靖国神社は日本が過去について反省していないことの有力な証左と映るからだ。

而して、安倍首相の振る舞いによって支那を宥めることはできなかった。その支那と日本は、現在、ある島礁を挟んで抜き差しならない状態にある。ちなみに、その島礁とは、支那に言わせれば、1800年代の後半に東アジア地域を牛耳ろうという帝国主義的野心の初期の試みの一環として日本が支那から奪ったものなのだけれども。閣僚の靖国神社参拝という事態を受け、木曜日【2013年8月15日】、支那は「強い抗議と厳しい非難の意を伝えるべく」北京駐在の日本大使を呼びつけたと、支那外務省のHong Lei報道官は述べた。靖国神社参拝は「歴史から見いだされるべき正義(historical justice)を踏みにじる恥知らずな所行である」とも。 





Many Japanese conservatives insist they have the right to visit the shrine to pay respects to their nation’s war dead, including the 3.1 million military personnel and civilians who perished in World War II. But the shrine has also become a rallying point for Japanese nationalists who dispute the historical view of Japan as an aggressor that they say was a product of the postwar Tokyo war crimes trials.

A war museum on Yasukuni’s premises casts Japan instead as the liberator of Asia from Western imperialism, while ignoring or denying wartime atrocities. Several years ago, the United States Embassy also quietly protested the museum’s description of Japan having been lured into attacking Pearl Harbor in 1941 by President Franklin D. Roosevelt.

日本の保守派の中には、靖国神社に参拝して、第二次世界大戦で亡くなった310万の兵士と民間人を含む、自国の戦没者に尊崇の念と感謝を捧げることは日本国民の当然の権利だと力説する向きも少なくない。靖国神社は、しかし、日本の民族主義者が再結集する場所でもあるのだ。而して、彼等に言わせれば戦後の東京裁判が創作したものにすぎない、日本を侵略者と見る歴史認識の枠組み自体に日本の民族主義者は異議申し立てしている。

靖国神社の境内にある戦争博物館では、そんな東京裁判史観ではなく、戦争中の残虐行為を無視もしくは否定しつつ、西洋列強の帝国主義的支配からのアジアの解放者という役回りが日本に与えられている。もう10年近く前になるだろうか(Several years ago)、実際、駐日アメリカ大使館も、日本はフランクリン・D・ルーズベルト大統領に誘い込まれて1941年に真珠湾を攻撃したとする博物館の記述に対して、控え目にではあるけれど抗議したことがある(★)。

★註:真珠湾とルーズベルト
日本が大東亜戦争に引き込まれたのは「コミンテルンの陰謀」「ユダヤ資本の陰謀」という面白いがあまり生産的ではない話は置いておくとしても(というのは、例えば、「コミンテルンの陰謀」なるものは、--冷戦での自由主義陣営の勝利、すなわち、人類史における社会主義の崩壊が確定した後に公開された『ヴェノナ文書』(Venona File)は武士の情けで捨象するとしても、第一次近衛内閣の発足が1937年でありゾルゲ事件の摘発が1941年なのですから--5年から10年単位で行われていた。ならば、国際政治においてはそんな謀略合戦は「お互い様」というか「騙される方が悪い」ということだからです)、「日本はフランクリン・D・ルーズベルト大統領に誘い込まれて1941年に真珠湾を攻撃した」という歴史認識は満更間違いとは言えないと考えます。

この論点の古典であるGeorge Morgenstern『Pearl Harbor;the story of the secret war:真珠湾-秘密戦争の物語』(1947)、および、眉唾な著作ではありますがRobert B. Stinnett『Day of Deceit-the truth about FDR and Pearl Harbor:真珠湾の真実-ルーズベルト欺瞞の日々』(2000)を読み返すたびにそう私は思います。

蓋し、この件に関するフランクリン・D・ルーズベルト大統領自身が記した書類等が発見されない限り/公開されない限り、もちろん、賛否いずれの論者も「真珠湾陰謀説」の判定は結着しないのでしょう。しかし、ならばなおのこと、お互いが状況証拠を出し合って主張の説得力を競うしかない現段階では、例えば、『Pearl Harbor』と『Day of Deceit』のを凌駕する眉唾な陰謀説に対する反論を私は寡聞にして聞いたことがありません。






The shrine’s conflicted symbolism also leads many Japanese to stay away. That includes Emperor Akihito and his wife, Empress Michiko, who instead attended the Japanese government’s official ceremony, which was held opposite from Yasukuni at the Budokan martial arts arena. Standing below a large Japanese flag, the emperor and empress observed a minute of silence before a crowd of about 6,000 people, including family members of fallen Japanese sailors and soldiers. ・・・

Mr. Abe, who was at the official ceremony, laid flowers at Japan’s grave for its unknown soldiers and pledged to contribute to world peace. However, his speech there failed to express remorse for the suffering that Japan inflicted on other Asian nations during the war, something that previous prime ministers have included in their anniversary speeches. ・・・

靖国神社には相矛盾する内容が重層的に象徴されている。このことも一つの理由となり多くの日本人が靖国神社から距離を置くようになっている。そんな日本人の中には明仁天皇と美智子皇后も数えることができる。而して、今上陛下と皇后陛下は、靖国神社に親拝される代わりに、靖国神社のすぐ向かい側にある日本武道館で挙行された日本政府主催の公式の儀式に出席された。巨大な日本国の国旗の下にお立ちになり、戦死した陸海の将兵の遺族を含む6000人程の参列者を前にした天皇皇后両陛下は1分間の黙祷を捧げられた。(中略)

この政府主催の儀式に参列した安倍首相は無名戦没者の墓に花を捧げた後、世界の平和に日本が寄与することを誓う。しかし、これまでの日本の首相が、例年、この記念日の式辞に織り込んできたある内容、すなわち、先の戦争において日本がアジアの諸国民に与えた苦痛に対して悔悟する旨を安倍首相が表明することはなかった。(後略)

【昭和天皇の御代から、天皇皇后両陛下は武道館で執り行われる「全国戦没者追悼式」には毎年ご出席されており、かつ、それとは別に靖国神社に親拝されていた。よって、ここの「Aの代わりにBを」という意味の「instead」は事実に反します。

まして、この本文テクストはあたかも「陸海の将兵の遺族を含む6000人程の参列者」もまた「靖国神社ではなく武道館に参列した」と読者に錯覚させるミスリーディングな記述だと思います。日本遺族会のメンバーを始め「陸海の将兵の遺族を含む6000人程の参列者」の間違いなく過半がその前後には九段の社に参拝していることは確実だからです。ただ、訳は原文テクストに従いました】



(NYT記事紹介終了)







<続く>




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