先日、教材作成についてアメリカ人の同僚と話していて英語と日本語の微妙な違いを感じました。具体的には(算数の話題から話が始まるリーディング教材の台本に関連して)、あることと別のあることが「全く同じなんだよ」と言いたかったのに、"A is the same as B."にcompletely や definitely をつけて説明しても「全く同じ=同一のこと」という経緯がどうしても伝わらなかったのです。私の下手な英語での説明がかえって災いして同僚のアメリカ人全員が甲論乙駁し始めるに至りました。言いたいことが伝わらないもどかしさと、「数学の思い出」とかを各自が勝手に話し始める収拾のつかなさに(自業自得でありながらも)KABU先生の噴火大爆発も秒読みに入りました(笑)。その場面を紹介します。
まず、二つの「全く同じこと」は次の二つです。
(1)10÷3×3=10 :ten divided by 3, times 3 is ten.
(2)whereas a calculator shows you that
10÷3×3=9.9999・・・
これらの(1)と(2)について、私が「(2)is completely the same as (1).」と言っても、「Yes. There is a very slight difference.」とか「Of course, both (1)and (2)hold almost the same information.」という反応しか返ってこない。どうしても、「全く同じ=同一のことなんだよ!」ということが理解してもらえない。その後、簡単な証明をして同僚の皆には納得してもらいましたが、「全く同じ=同一」ということを英語でどう表現すればいいのかには随分悩んでしまいました。
簡単な証明は以下の通りです。
(2)の「9.9999・・・」をSと置くと、S=9×(1.1111・・・)
ところで、1.1111・・・=10÷9=10/9 (★)
よって、S=9×10/9=10 ゆえに、(1)と(2)の結論は完全に同じ!
:S is nine multiplied by ten ninths (ten divided by nine); S is ten.
:S is nine times ten over nine ; S is ten.
ここまで言ったら、アメリカ人の同僚から「Oh! (1)and (2)are exactly the same.」という声が掛かりました。そうか、(あくまでもこのシチュエーションでは、ですが)、「全く同じこと」は「be exactly the same」と表現すればよかったのかと気づきました。どうも、"completely"とか"definitely"とかを加えても、「私にとっては/世間では(ほとんど)同じだよ」という、「私」や「世間」の思いの強さを(主観的に目一杯)アピールしているだけで、逆に、"a slight difference"が存在する可能性を(暗に)強調していると感じていました。で、結論は、「話者の思いの強さ」ではなく「事物をして語らしめること」だったようです。
★註:完全な証明
実は、「1.1111・・・=10÷9=10/9」は第2項と第3項は同値ですが、第1項と第2項が同じであることは、直感的にしか説明できていませんよね。念のためこれを証明しておきます。簡単な等比級数(geometric series)の応用です。
S=1.1111・・・=1+1/10+1/100+1/1000+1/10000+・・・・
ここで、1=a 1/10=r と置くと
S=1.1111・・・
=a+a・r+a・の2乗+ a・rの3乗+・・・・+a・rの(n-2)乗+a・rの(n-1)乗
ここでS×rを考えると、
Sr=a・r+a・の2乗+ a・rの3乗+・・・・+a・rの(n-1)乗+a・rの(n)乗
更に、Sr-Sを求めるとSrの最終項とSの初項だけを残して、斜めに各項が相殺される。
Sr-S=a・rの(n)乗-a
左辺:Sr-S=S(r-1) 右辺:a・rの(n)乗-a=a(rの(n)乗-1)
よって、S(r-1)=a(rの(n)乗-1)
∴S=a(rの(n)乗-1)/(r-1)
ところが、n が限りなく大きくなるとき、1/10であるrの(n)乗もまた、分子は1で不変なのに分母が限りなく巨大化する。要はこの場合、rの(n)乗は限りなく0に近くなる。
∴S=a(-1)/(r-1)
ここで、a=1 r=1/10 の情報を上の式に代入すると
S=-1/(-9/10)=1×(10/9)=10/9
以上、証明終わり。
尚、1+1/10+1/100+1/1000+1/10000+・・・・についてですが、それぞれの項の読み方:1/10 は one tenth, 1/100 は one hundredth, 1/1000 は one thousandth, 1/10000 は one ten-thousandth と読みます。また、2/10 は two tenths, 5/100 は five hundredths, 12/1000 は twelve thousandths と読みます。詳しくは下記のサイトを参照してください。大変よくまとまったサイトだと感心しました。
・数字の英語
http://www.jrc.sophia.ac.jp/~tfujita/essay/number.html
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早速ですが質問です。
2パラグラフ目の(2)がどうしてもストレートに納得できないのですが……
つまり、10÷3×3=9.9999…そのものが「ありえない」と私は思ってしまったんです。=は「数量的に同じ」を意味するのではないか、と。英語でいうとequalですよね。
4パラグラフ目の「簡単な証明」は理解できましたが、どうもそこの最初のシチュエーションがわからないのです。
それから、the same~は数量的な「同じ」にも使うのですね。私は「あなたと私は同じったタイプの人間だ」とか「過去の出来事と同じだ」というのがthe same~であると思っていました。どうもその辺のところもすっきり
しないのですが。
ご回答いただけるとうれしいです。
コメントありがとうございます。
「10÷3×3=9.9999…そのものが「ありえない」」はですね。電卓でこの順番で叩くと(大体)9.9999…になりますよね、というのが落ちなんです。ありえないのはずなのに、電卓は「馬鹿」だからそうなってしまう? まあ、それもあるけれど、「数学的には9.9999…=10 なんですよ」というのが素材自体の種です。そこから喧々諤々が始まった、と。
「the same~は数量的な「同じ」にも使うのですね」は、数量的にも使うでしょうが数学的にはあんまり使わないでしょう。先生の仰るとおり、equal(s)を使うと思います。要は、「この大根の重さはあの大根の重さと(大体)同じだ」というような時には、the same as ~を使っても、「5+2 is the same as 7」とは言わないだろう。だから、ここでthe same~が使われているのは、「概念」とか「命題」が(ほとんど)同じということを私もアメリカ人の同僚も問題にしていたのだと思います。
このブログは、書評とか軽めの時事問題とか、世の動きとかを書いていきます。現在、公私多忙ゆえ、書きやすい英語に題材が集中しているだけです(うみゅー、後、2~3ヶ月はそうかも)。今後とも宜しくお願いいたします。
P/S
今週くらいから、私も「sundusukyさんとかりえるさん」所にまた遊びに行きます♪