『東西南北―和光大学総合文化研究所年報―』という報告書に収録されている標記の論文を読みました。
研究対象である近藤家とは、岡山県玉野市域にあって明治初期より醤油醸造業を主業としつつ土地集積もおこないながら財をきずいた家です。
論文では、この古文書史料の解題を軸としつつ、当主の旅日記19世紀分(江戸時代後期~明治時代)に着目し、その中身を分析しています。
そして結論部分では、このような家にとって旅は商業活動であり、販路・経営規模の拡大や価格決定などの意味合いがあると、指摘しました。すなわち、19世紀民間人の旅には商業ネットワークの意味合いもあったことを提起する論文であり、私が取り組んでいる江戸幕府役人など公用通行の情報ネットワークを分析する研究とは対を為すものだといえましょう。
※論文の研究史整理部分に設けられた脚註の一つで、私が2014年に出版した単著を取りあげてくれています。管見の限り、多分この論文が、新刊紹介・書評を除く学術論文で初めて私の単著を取りあげてくれた第1号だと思います。
今後は、19世紀後半よりメディア・通信システムの整備が進んでいくので、時代が進むにつれこれらの整備と旅の意味との相関性がどう変化するのかが、課題となってくるのではないでしょうか。
なお、この論文はPDF形式でネット上にて、無料閲覧できるようになっています。
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