「カガリ様、どうぞこちらへ。」
秘書長がカガリを丁重に案内する。
「あ、うむ。」
今日の公務は終了。これからアスハ邸に帰宅しようとしていた矢先に、執務室に秘書長が現れ、恭しく頭を下げた。
今日の仕事は間違いなく終わっている。なのに、どうにも秘書長はいつも送迎車を付ける場所とは別のところに向かっている。
(何だ?またややこしい案件がモルゲンレーテから出ているのか?)
すっかりこうした突然のトラブルへの対応も慣れた。腹をくくって付き合うしかないと決めたカガリに秘書長は一室のドアを開ける。
「お入りください。」
普段ならしっかりと用件の報告をするのに、今日は一言もないのが不思議だが、それでも今まで一度も信頼を裏切るようなことはなかったので、カガリは
「・・・わかった。」
そう言って部屋に入る。
広いが、照明は一つだけしかついていな薄暗い空間。そこにはアンティーク調の椅子が一基、置いてあるだけだ。
「どうぞそちらにお座りください。」
「・・・」
カガリの表情が訝し気になる。椅子以外何もないこの部屋で、一体何をするのか?
すると
<パッ✨✨>
「っ!」
一気に着いた眩しい照明に、カガリが瞬間目を閉じる。すると―――
「カガリ、1位おめでとう!」
そう言って右から拍手をしながら現れたのはキラ。更に
「カガリさん、おめでとうございます!素晴らしいですわ。」
春らしいスーツに身を包み、左手から現れたのはラクス。
「え?は?」
キョトンとしたままのカガリに、二人は笑って見せた。
「何驚いているのさ。カガリ、この前連絡があったでしょ?」
「この前・・・私に何かあったか?」
「お忘れですか?カガリさん。『SEED GP2024』で、一位を取られたのはカガリさんですわ♪」
そう言いながら、まだ驚きを隠せないカガリに、ラクスはピンクのユリの花束を渡す。
「うわぁ、いい香りだ。・・・二人とも、ありがとうな。」
ようやくカガリの表情が緩んだ。だが
「でも、告知を聞いたときは驚いたけど、本当に私なんかがもらっていいのか?だって劇場版で大活躍したのは、むしろキラとラクスの方だろう?」
謙遜するカガリに、ラクスは首を横に振る。
「いえ、カガリさんは常に私たちを含め、皆を後ろから支えてくださいました。私たちの背を支え、帰る場所を守ってくださったのはカガリさんです。それがどれだけ心強いか・・・」
空色の優しい瞳がカガリに微笑む。
「それだけじゃないよ。」
「キラ?」
カガリが見上げるキラは、あの時苛まれていたような影はどこにもなく、どこまでも穏やかだった。
「物語の全ては「カガリから始まった」んだよ。カガリがカトウ教授のゼミに来なければ、僕はザフトの攻撃を受けても、あのヘリオポリスのドッグにはいかなかっただろうし、そうしたらマリューさんに会うことも、ストライクに乗ることもなかった。勿論、アスランとの再会もなかったんだよ。」
「キラがAAに居なければ・・・ストライクに乗らなければ、私はユニウスセブンで救命ポットに乗せられたまま、宇宙を彷徨って、あるいは今こうしてここにはいない命だったかもしれません。」
ラクスも言葉を添える。キラは頷く。
「それに、戦後カガリがデュランダル議長に会いに行かなかったら、アスランはミネルバクルーとも面識はできなかっただろうし、カガリがユウナと結婚しようとしなかったら、僕らもAAの皆も、立ち上がることはなかった。」
「今回も、カガリさんが『コンパス』を設立しようとしなければ、私たちは動くことなく、ファウンデーション・・・アウラをはじめとするアコードたちのたくらみに気づくことなく、世界はもっと混沌と差別と従属に染まっていたのです。」
ラクスが少し瞳を潤ませた。
「だから全てはカガリから始まっている。この物語を走り出せたのは、カガリのお陰なんだよ。」
「キラ・・・ラクス・・・」
カガリは二人を見上げ、目を潤ませる。
父の裏切りに反発し、ヘリオポリスから今度はアフリカの砂漠地帯のゲリラに身を寄せ・・・世界を動かした等と今でも思ったことはない。でもまさか自分が地に足を付けた瞬間、それは水たまりの波紋の様に広がって、この世界のストーリーを作り出していたなんて。
「カガリはね、旗を掲げてくれているんだよ。」
「私たちの目印です。始まりの場所であり、帰る場所でもある、と。」
キラとラクスがそう言って笑んでくれる。
「よかった・・・私の歩んできた道は、間違いもあっただろうけど、それでも皆を導くことができたんだな。」
「うん!」
「その通りですわ。」
そう言って二人が拍手する。カガリは思わず照れくさくて、花束で顔を隠す。すると
「そうだ、折角だから写真を撮ろうと思って。」
キラがカガリに顔を寄せる。ラクスも同じく屈んで
「そうですわね♥ カガリさんとキラと私で。」
「さっきから、僕の背中の方からなんかパシャパシャ音がしているんだけどさ。ちゃんと正面から撮ってよ?カメラマンさん。」
ね?とキラが笑顔で睨めば、カメラマンはやれやれと言わんばかりに正面に立った。
「わ、私が中心でいいのか?」
「当たり前でしょ?今日の主役はカガリだもん。」
「カガリさん、笑ってくださいw」
こうして3人寄り添って写真を撮る。考えてみたら初めてだ。
「なんか・・・記念というより、家族写真みたいだな。」
「カガリ?」
「お父様とは一緒に撮影したことは幾度かあったけど、本当の家族のお前と写真撮ったのってきっと初めてだ。」
「そうだね・・・」
キラもどこか遠い目をする。
もし、今、実の両親がここに居てくれたら、どんな顔をしてくれただろう。
カガリは背後の二人を交互に見やった。
「それにいずれは本当に「家族写真」になるぞ?『弟夫婦とその姉』という―――」
「か、カガリッ///」
「嬉しいですわ♥お姉さま。」
「ラクスまで・・・」
やれやれと肩をすくませるキラだが、まんざらでもなさそうだ。
「そうだ!家族写真、っていうなら、そこにいるみんなもどうだ?」
カガリは照明の向こうで見守る大勢に声をかけた。まさかの声に全員手首を横に振るが
「オーブの皆は私の家族だ!家族写真、というならみんなも入って当然だろう?ほら、メイリン、ミリィ、サイ、トーヤも!」
「は~い♥」
「いいの?本当に?」
「僕は別に・・・」
「お二方とも、代表がおっしゃっているんですから。」
進んで飛び込むメイリンと、トーヤに背中を押されて現れるミリアリアとサイ。更に
「シンとルナも!」
「え?俺たち関係ないじゃん!」
「いいんですか?やった!ほら、シン!」
尚もカガリは奥に手を振る。
「ほら、キサカ!皆連れて来いよ!」
「代表のご命令とあらば。」
そう言って周りの皆を捕まえてくるキサカ。
「じゃぁ撮りますよ。3・2・1!」
<パシャ>
そこには激戦を勝ち抜いてきた皆の笑顔が刻まれた。
「この後ささやかながら祝勝会の場を用意してますので、皆さん、移動してください!」
ミリアリアがテキパキと動き、皆がゾロゾロと室内を出て行く。
カガリは見送って、最後まで残っていた彼の側に近づいた。
「カメラマン、ご苦労だったな。アスラン。」
「全く・・・今回はいいように使われたよ。」
そう言って苦笑するアスラン。
「でも、あからさまに、私とラクスが収まるのに、キラだけ顔が写らない場所から撮るのはどうかと思うぞ?」
「アイツ「アスランは”4位”だから、ここには入れないからね♪」とかニコニコしながら言ってくるんだ。だったら細やかな反撃くらいしたっていいだろう。」
面白くなさそうに口を尖らすアスラン。
「全く、お前って本当に負けず嫌いだよな。」
カガリが花束を抱えながら笑う。と、
<パシャ>
シャッターを切る音。カガリが真顔になる。
「お前、今許可なく私の写真撮ったな!?」
「だって、一番いい顔をしていたから。」
そう言って微笑みながら、カメラを構えたアスラン。
「まさかと思うが公報に出すとかないよな?」
「いいや、これは俺だけのカガリだ。他にやつに見せる気は毛頭ないよ。」
ただ一人、カガリにだけ見せる彼の優しくやわらかな笑顔。カガリは赤らんでいく顔を隠すようにして俯く。
「・・・お前がいてくれるから、いい顔できるんだよ・・・」
ぼそりと呟いたカガリの小声を、コーディネーターの聴力が逃すはずもない。
「カガリ、今、何て言った!?」
「いや、何も?」
とぼけるカガリに、
「もう一回言ってくれ!」
と慌てるアスラン。
カガリはくるりと背を向ける
「いーやーだ!・・・でもその代わり―――」
もう一度くるりとアスランの方を向いたカガリは、彼の耳に唇を寄せて囁いた。
「・・・今度は二人の『家族写真』を撮ろう、な。」
・・・Fin.
***
いつも通りの突発SS(注:見直しすらしていない)です。
今日萌えたのは、本日発表になりました、SEED GP2024の1~3位のキャラクター部門&MS/MA部門の描き下ろしイラストが発表になりましたのを見て、キュンキュンしてしまいまして(笑)
「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ グランプリ2024」グランプリビジュアル2024が公開!監督からのコメントも到着! | | 『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』公式サイト (gundam-seed.net)
今日萌えたのは、本日発表になりました、SEED GP2024の1~3位のキャラクター部門&MS/MA部門の描き下ろしイラストが発表になりましたのを見て、キュンキュンしてしまいまして(笑)
「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ グランプリ2024」グランプリビジュアル2024が公開!監督からのコメントも到着! | | 『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』公式サイト (gundam-seed.net)
このイラストが可愛いんですよ(≧▽≦)b✨
サプライズプレゼントのカサブランカの花束を渡されて、驚いているカガリと、花束を渡すラクスと、それを見守っているキラの図。このイラストを見ただけで、3人がどんな会話をしているのか、とかシチュエーションが幾つも妄想で沸いてきますね!!(笑)
願わくば、キラも後ろ側じゃなく、正面から顔が見たかったな~
MSの方はもうフリーダム様が偉大で✨ そしてマイフリはともかくディステニーがなんか迫力ある描かれ方でカッコいい!!
カガリとフリーダムが1位だと、つい運命の時の「花嫁強奪事件」を思い出す(笑) 「あそこに映っているのが、1位と2位と1位か( ̄▽ ̄)」ってw
今度カガリがアスランと結婚するとなったら、マイフリが強奪しに来るのか!?「姉との結婚は認めない!」って。勿論ラクスもマイフリだから乗ってるし。そうしたらアスラン、あのズゴックで迫ってきたときと同じ表情・・・よりもっと鬼の形相で隠者弐式すっ飛ばしてきそうだな(笑) プラウドディフェンダー対策、どうするつもりなんだろう・・・きっとハインラインさんと結託して、無効化武器とか作っていそうで、そら恐ろしいですザラ一佐💧
それはともかく、あのビジュアル見て殆どの人が「これ撮影しているの、アスランだろう」「嫁しか撮りたくないんだよな」「キラにカガリばかり撮影しているのバレないように、あの角度から撮っているんだ」とか書かれまくっていて(笑) そのうち「カガリの座っている椅子が俺だ!」とか、意地でも映り込んできそうだw TVシリーズのアスランだったら、絶対そんなこと言わないだろうと思っていたけど、劇場版見たら何でもやりそうで、色んな意味で「不可能を可能」にしそう(※カガリ限定)
このイラストのグッズっていつ出るのかな?
多分クリアファイルとかだろうけど、姫様が幸せなものはいくつでも揃えたい人なので、ばっちり購入目指します☆
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