中国の広州で開催中のアジア大会、最終日にしてようやく、男女のマラソンが地上波で生中継される。マラソン愛好家には有難いことだが、ここに来て、男女アベック優勝を果たしたサッカー、五輪で金メダルを2個獲得している韓国を破った女子ハンドボール、ホームでなくても勝てるところを見せた男子バレーボール、五輪種目から外れるや手の平を返したようにマスコミの注目度が減った女子ソフトボールらの活躍ぶりを見ると、これらの種目こそ、地上波で生中継すべきだったのにとも思えてくる。陸上競技でも、福島千里の出た女子短距離や、男子やり投げ(村上、えらい!)も生中継出来なかったのかなと思う。
申し訳ないが今回、男女ともにマラソンの金メダルはかなり厳しい。
まずは先にスタートする女子のレースの見どころなど。
優勝最有力候補は中国の周春秀だろう。4年前のドーハ大会の優勝者であり、翌年の大阪での世界選手権では銀メダル、北京五輪では銅メダル、昨年のベルリンでり世界選手権では4位と、年々順位を下げているようには見えるものの、現時点で「アジアのマラソン女王」と呼ぶにふさわしいランナーだ。もう一人の中国代表、朱暁琳も大阪、北京で4位、ベルリンで5位と安定した実績を選手権大会で残している。
対する日本代表は嶋原清子と加納由理。最近は一般メディアへの露出も増えてきたクラブチーム、セカンドウインドACの二枚看板だ。両者とも五輪代表の経験こそないが、世界選手権ではどちらも入賞している。ただ、どちらもこの中国コンビとの直接対決で過去に勝った実績がないことが最大の懸念材料である。いわば、「格上」の相手に胸を借りるレースであるのに、どうもアジア大会という大会は、
「2位じゃだめなんですか?」
と質したら、
「ダメダメ」
と返ってきそうなムードが漂う。
意外と思われるかもしれないが、女子マラソンがアジア大会の正式種目となったのは、'86年のソウル大会から。以後6大会続けて日本はメダルを獲得しているのだが、金メダルは2個しか獲得していない。'86ソウルの浅井えり子さんと'98
バンコクでの高橋尚子さん(僕にとって、彼女のベストレースは、シドニーでもベルリンでもなく、バンコクである。)のみである。最も多く金メダルを獲得しているのは中国の3個、あと1個は'02釜山での北朝鮮である。今回もこの国からは「未知の強豪」が出現するか?10000mワン・ツーフィニッシュを果たしたインドはどうか?
2年前の北京五輪では男子とともに入賞ゼロに終わったマラソン・ニッポンだが、昨年の世界選手権では銀メダルを獲得し、東京国際女子マラソンに代わって新たに始まった横浜国際女子マラソンでは今回の代表である嶋原が持ち前の粘りの走りで2位でゴールしながら、翌週の某週刊誌のグラビア記事には「王国崩壊」などという見出しがついた。やっぱり、「2位ではダメなんです。」
ということなのだろう。ましてや、負けた相手がベルリンでは中国、横浜ではロシアと、今の日本にとっては“ヒール”となっている国だ。厳しい戦いであるが、「大金星」を目指して欲しい。
男子は過去15大会中、2大会でマラソンは実施されなかったが、実施された13大会で全てメダルを獲得している。金メダルも5個獲得(そのうち2個を君原健二さんが獲得している。)のだが、'86ソウルで中山竹通さんが2時間8分21秒の今も破られない大会記録で優勝したのを最後に金メダルからは遠ざかっている。'90年の北京大会以後4大会連続して韓国が金メダルを獲得しているが'94年はバルセロナ五輪金メダリストのファン・ユンチョ氏、バンコク、釜山ではアトランタ五輪銀メダリストの李鵬柱氏が連覇、と日本にとっては「格上」の相手との勝負だった。前回、ドーハを制したのは、地元カタール代表のムバラク・ハッサン・シャミ。彼は実はケニアから同国に国籍を変えたランナーだった。
現在、アジアで中距離種目のランキング上位を独占しているのはカタールやバーレーンにケニアやエチオピアから国籍を移したランナーばかりである。韓国は前回のドーハではメダル争いに加わることさえ出来なかった。以前にも書いたがもはや「日韓対決」が「アジアの頂上決戦」ではなくなっているのだ。
五輪や世界選手権同様に、アフリカ勢を倒さなければメダルが手に届かないのではあるが、あえて日本に有利な材料を挙げれば、およそマラソンについては、中東のアフリカ出身選手たちはこの数年、世界のメジャー大会で目立った実績を残していない、という点だろう。シャミにしてもドーハの翌年の世界選手権では銀メダルを獲得するも、翌年のびわ湖で優勝以後はマラソンで結果を残していない。あるいは、この大会に絞って強化してきているのかもしれないから楽観は禁物だが、むしろ韓国の池永駿の方が手強いかもしれない。記録という点を見れば、持ちタイムと今シーズンのベストタイムは、日本代表の佐藤智之と北岡智浩を凌いでいる。久しぶりに、日韓対決による優勝争いを見たいものである。現在の旭化成の「エース」である佐藤だが、初マラソンの延岡以来優勝からは遠ざかっている。どうも、大舞台に弱い、というイメージを持っているのだが、そんなイメージを覆して欲しい。もう一人の北岡は今回が2度目のマラソン。初マラソンの今年のびわ湖で入賞して代表の座を得た。53年前の全日本実業団駅伝にも出場している老舗実業団、NTN(旧名東洋ベアリング)初のマラソン代表だ。トラックの中・長距離では何人か日本代表を生み出しているチームで、駅伝では常に最長区間を受け持っていたランナーだ。まだ延び代が残っていると信じたい。
メダル獲得数は中国が圧倒的だ。しかし、日本は「量より質」ということで、サッカーやバレーのような人気の高い種目できっちりと金メダルを取ってきた。マラソンでも男女いずれかで金メダルを獲得して、いい締めくくりをして欲しい。そう、いい締めくくりになるようなレースを見せて待望している。
申し訳ないが今回、男女ともにマラソンの金メダルはかなり厳しい。
まずは先にスタートする女子のレースの見どころなど。
優勝最有力候補は中国の周春秀だろう。4年前のドーハ大会の優勝者であり、翌年の大阪での世界選手権では銀メダル、北京五輪では銅メダル、昨年のベルリンでり世界選手権では4位と、年々順位を下げているようには見えるものの、現時点で「アジアのマラソン女王」と呼ぶにふさわしいランナーだ。もう一人の中国代表、朱暁琳も大阪、北京で4位、ベルリンで5位と安定した実績を選手権大会で残している。
対する日本代表は嶋原清子と加納由理。最近は一般メディアへの露出も増えてきたクラブチーム、セカンドウインドACの二枚看板だ。両者とも五輪代表の経験こそないが、世界選手権ではどちらも入賞している。ただ、どちらもこの中国コンビとの直接対決で過去に勝った実績がないことが最大の懸念材料である。いわば、「格上」の相手に胸を借りるレースであるのに、どうもアジア大会という大会は、
「2位じゃだめなんですか?」
と質したら、
「ダメダメ」
と返ってきそうなムードが漂う。
意外と思われるかもしれないが、女子マラソンがアジア大会の正式種目となったのは、'86年のソウル大会から。以後6大会続けて日本はメダルを獲得しているのだが、金メダルは2個しか獲得していない。'86ソウルの浅井えり子さんと'98
バンコクでの高橋尚子さん(僕にとって、彼女のベストレースは、シドニーでもベルリンでもなく、バンコクである。)のみである。最も多く金メダルを獲得しているのは中国の3個、あと1個は'02釜山での北朝鮮である。今回もこの国からは「未知の強豪」が出現するか?10000mワン・ツーフィニッシュを果たしたインドはどうか?
2年前の北京五輪では男子とともに入賞ゼロに終わったマラソン・ニッポンだが、昨年の世界選手権では銀メダルを獲得し、東京国際女子マラソンに代わって新たに始まった横浜国際女子マラソンでは今回の代表である嶋原が持ち前の粘りの走りで2位でゴールしながら、翌週の某週刊誌のグラビア記事には「王国崩壊」などという見出しがついた。やっぱり、「2位ではダメなんです。」
ということなのだろう。ましてや、負けた相手がベルリンでは中国、横浜ではロシアと、今の日本にとっては“ヒール”となっている国だ。厳しい戦いであるが、「大金星」を目指して欲しい。
男子は過去15大会中、2大会でマラソンは実施されなかったが、実施された13大会で全てメダルを獲得している。金メダルも5個獲得(そのうち2個を君原健二さんが獲得している。)のだが、'86ソウルで中山竹通さんが2時間8分21秒の今も破られない大会記録で優勝したのを最後に金メダルからは遠ざかっている。'90年の北京大会以後4大会連続して韓国が金メダルを獲得しているが'94年はバルセロナ五輪金メダリストのファン・ユンチョ氏、バンコク、釜山ではアトランタ五輪銀メダリストの李鵬柱氏が連覇、と日本にとっては「格上」の相手との勝負だった。前回、ドーハを制したのは、地元カタール代表のムバラク・ハッサン・シャミ。彼は実はケニアから同国に国籍を変えたランナーだった。
現在、アジアで中距離種目のランキング上位を独占しているのはカタールやバーレーンにケニアやエチオピアから国籍を移したランナーばかりである。韓国は前回のドーハではメダル争いに加わることさえ出来なかった。以前にも書いたがもはや「日韓対決」が「アジアの頂上決戦」ではなくなっているのだ。
五輪や世界選手権同様に、アフリカ勢を倒さなければメダルが手に届かないのではあるが、あえて日本に有利な材料を挙げれば、およそマラソンについては、中東のアフリカ出身選手たちはこの数年、世界のメジャー大会で目立った実績を残していない、という点だろう。シャミにしてもドーハの翌年の世界選手権では銀メダルを獲得するも、翌年のびわ湖で優勝以後はマラソンで結果を残していない。あるいは、この大会に絞って強化してきているのかもしれないから楽観は禁物だが、むしろ韓国の池永駿の方が手強いかもしれない。記録という点を見れば、持ちタイムと今シーズンのベストタイムは、日本代表の佐藤智之と北岡智浩を凌いでいる。久しぶりに、日韓対決による優勝争いを見たいものである。現在の旭化成の「エース」である佐藤だが、初マラソンの延岡以来優勝からは遠ざかっている。どうも、大舞台に弱い、というイメージを持っているのだが、そんなイメージを覆して欲しい。もう一人の北岡は今回が2度目のマラソン。初マラソンの今年のびわ湖で入賞して代表の座を得た。53年前の全日本実業団駅伝にも出場している老舗実業団、NTN(旧名東洋ベアリング)初のマラソン代表だ。トラックの中・長距離では何人か日本代表を生み出しているチームで、駅伝では常に最長区間を受け持っていたランナーだ。まだ延び代が残っていると信じたい。
メダル獲得数は中国が圧倒的だ。しかし、日本は「量より質」ということで、サッカーやバレーのような人気の高い種目できっちりと金メダルを取ってきた。マラソンでも男女いずれかで金メダルを獲得して、いい締めくくりをして欲しい。そう、いい締めくくりになるようなレースを見せて待望している。
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