はたして、体重100kgのM氏がマラソンを走ることは「無謀なチャレンジ」だったのか?彼が生死の境を彷徨った原因は、「急性心筋梗塞による心室細房」ということだったが、これは決して肥満体型の人がかかる症例ではなく、体型には関係なく起こり得るものなのだという。
確かに、体重100kgのM氏が3時間以内のゴールを目指して1km4分のペースで走り始めたとしたら、それは無謀だと思う。復帰の記者会見では、
「スタートから飛ばしすぎた。」
と語っていたが、果たしてどのくらいのペースだったのだろう。いかに体重が重いとはいえ、保護機能に勝るシューズを履き、体重を支えられるだけの脚筋力を鍛え、鈍重な身体の隅々に新鮮な酸素を送り続けるだけの心肺機能を身につけて、適正なペース配分で走りさえすれば、太った人がマラソン大会に出ても、何の問題もない、と僕は思う。
だが、これはなかなか容易なことではない。
20代の頃、体重が80kgを越えていた僕は当時からさまざまなダイエットを試していた。自分が女性にモテないのを、腹回りの皮下脂肪のせいにしていたからだ。当時僕が憧れていたのは、肉が削げ落ちた頬である。何冊かの本も買った。その中には著者が薬事法違反で逮捕されたものもある。しかし、どれも大して効果はなく、30代になって始めたランニングによって、15kg以上の減量に成功、リバウンドした時期もあったが、昨日の夜、帰宅し、食事前に入浴後に測った体重は76.9kg、ほぼ10kgは減量している。おかげで20代の頃に買った服は今でも大半は着られる。
だからと言って、僕は「ランニングこそ、最高のダイエット方法」だと断じるつもりはないし、そんな断言は大変危険なことだと思っている。
そもそもダイエットとは何か?勘違いしてらっしゃる方もいるかもしれないが、これは本来は肥満が原因で罹る病気の治療、もしくは予防のための方策なのである。決してお洒落や身だしなみのために行なうものではない。ファッション雑誌で特集してはいけないものだ。病気のための治療なのだから、専門医の診断を受けた上で、適切なプログラムを組んでもらって初めて実施するべきものである。
例を挙げよう。かつて「納豆ダイエット」なるものがテレビで紹介された際、その紹介の仕方に問題があったとして、番組が打ち切られ、制作したテレビ局の社長(実は大阪国際女子マラソンのディレクターで、ロザ・モタやリサ・マーチンら'80年代の名ランナーを大阪に招致するのに尽力した人だったという。)が解任されるという事件があった。納豆は確かに良質の植物性蛋白質を多量に含む食品である。脂肪を摂らずに蛋白質を補充するのには最適の食品だ。しかし、尿酸値が高く、痛風の症状が出ている人にはNGなのである。
自身の体質を知らずに実施するダイエットは、風邪をひいた時に正露丸を服用するようなものなのだ。
このシリーズの最初にランニングは本来危険なものだということを強調したのは、僕は嫌がる人や興味のない人に無理にランニングを勧めるような事はしたくないからだ。自発的に始めたものでないと心から楽しめないと思う。
もし、あなたが、やせたいと思ってランニングを始めたばかりで、今回のM氏の一件で、家族には
「パパ、マラソンなんて危ないから止めて!」
と言われているのだとしたら、僕には
「家族を大切にしてください。」
としか言えない。しかし、
「せっかくなのだから、続けてみたい。」
と思ってらっしゃるのなら、あなたの「自己責任」で続けていただきたい。やせる事を目的で始められたのであれば、体重計はお持ちであろう。さらに、血圧計を購入していただきたい。太っているのに走りたいのであれば、体重と同様に、血に関心を持って欲しい。血に関心といっても、血液型のことではない。いや、どうしてみんな、血液型にはあんなに関心が深いのに、自身の血液の成分には興味がないのだろう?
今なら、安価で精度のいい血圧計がいくらでも出ていると思う。ランニングの前後には測定する習慣をつけて欲しい。たいていは、何歳で体重何kgの人なら正常値の範囲はこのくらいという指標がついているはずだ。それを参考にして、正常値を越えている時は休養するなり、医師に相談するなりして欲しい。
さらには、血液検査もマメに行なって欲しい。自身の体重の数値と同様に、血中のコレステロールや血糖や中性脂肪の数値に注意を払うようにして欲しい。
血液検査を無料で容易に出来る手段としては献血があるが、注意して欲しいのは、検査の当日の朝、もしくは前日はランニングを控えて欲しい。1度、僕の職場に献血車が来た時、検査をしてもらったが、なんとそこで「貧血」と診断されたのだ。ちょうど2日前にハーフマラソンに出たばかりだった。トップランナーや、高校の駅伝ランナーらが貧血に苦しむ話は聞いていたが、まさか自分が、と驚いた。大量に汗をかくと貧血になりやすいのだという。それと、硬いアスファルトの路面を長時間走ると、赤血球が破壊されて貧血になりやすいのだとも言われている。正確な数値を知りたければ、検査当日は食事も抜いて、水分を摂るだけにしておこう。前日もアルコールや脂肪分の多い食事は控えておこう。
いや、そもそも、やせたいために走っているのなら、アルコールや脂肪分の摂取は日常的に減らす努力をしないといけないが。
さて、僕はなかなか体重が73kg前後からなかなか下がらなくなったということを前回お話した。当時はその原因になかなか気が付かなかった。あの当時、もっと食事も制限して体重を70kg以下に絞っていれば、サブスリーランナーになれたかもしれない。なぜ、それが出来なかったのか?
マラソンを3時間30分以内で完走出来るということに果たしてどれだけの価値があるのだろうか?僕はある知人から、
「女のトップに1時間も遅れるんか。たいしたことないのう。」
と言われたこともあるし、逆に
「1時間しか違わないなんて、すごい!」
と言われたこともある。このレベルだと、少なくとも3大国際マラソンに別大、延岡、防府、信毎以外の主要な公認マラソンなら十分完走できるのだ。かつては
「ここを走らずしてマラソンを語るなかれ」
と言われた玉造毎日マラソンも、全国ネットで中継される北海道マラソンも完走することが出来た。結局、それで満足したのだ。
「走ることは手段ではなく目的となった。」
とはそういうことで、やせるために走るのではなく、走ることそのものを楽しむようになった。この体重でもこのくらいで完走できるんだから、まっいいかと思っていたのだ。
しかしながら、体重75kg前後でマラソンを3時間30分を切るペースで走り続けたことは、決して「身体のために」いいことではなかった。今僕の左足のかかとは尻につくまで曲がらなくなっている。そのためにかつては弓道をしていた僕だが今では正座が出来なくなっている。右足のアキレス腱の痛みは収まっていない。
今、現在2週間ランニングをしていないのだが、自転車通勤のおかげで体重は抑えられている。また、ランニングを再開すれば、久しぶりに75kg以下に戻れるのではないかという予感はしている。
確かに、体重100kgのM氏が3時間以内のゴールを目指して1km4分のペースで走り始めたとしたら、それは無謀だと思う。復帰の記者会見では、
「スタートから飛ばしすぎた。」
と語っていたが、果たしてどのくらいのペースだったのだろう。いかに体重が重いとはいえ、保護機能に勝るシューズを履き、体重を支えられるだけの脚筋力を鍛え、鈍重な身体の隅々に新鮮な酸素を送り続けるだけの心肺機能を身につけて、適正なペース配分で走りさえすれば、太った人がマラソン大会に出ても、何の問題もない、と僕は思う。
だが、これはなかなか容易なことではない。
20代の頃、体重が80kgを越えていた僕は当時からさまざまなダイエットを試していた。自分が女性にモテないのを、腹回りの皮下脂肪のせいにしていたからだ。当時僕が憧れていたのは、肉が削げ落ちた頬である。何冊かの本も買った。その中には著者が薬事法違反で逮捕されたものもある。しかし、どれも大して効果はなく、30代になって始めたランニングによって、15kg以上の減量に成功、リバウンドした時期もあったが、昨日の夜、帰宅し、食事前に入浴後に測った体重は76.9kg、ほぼ10kgは減量している。おかげで20代の頃に買った服は今でも大半は着られる。
だからと言って、僕は「ランニングこそ、最高のダイエット方法」だと断じるつもりはないし、そんな断言は大変危険なことだと思っている。
そもそもダイエットとは何か?勘違いしてらっしゃる方もいるかもしれないが、これは本来は肥満が原因で罹る病気の治療、もしくは予防のための方策なのである。決してお洒落や身だしなみのために行なうものではない。ファッション雑誌で特集してはいけないものだ。病気のための治療なのだから、専門医の診断を受けた上で、適切なプログラムを組んでもらって初めて実施するべきものである。
例を挙げよう。かつて「納豆ダイエット」なるものがテレビで紹介された際、その紹介の仕方に問題があったとして、番組が打ち切られ、制作したテレビ局の社長(実は大阪国際女子マラソンのディレクターで、ロザ・モタやリサ・マーチンら'80年代の名ランナーを大阪に招致するのに尽力した人だったという。)が解任されるという事件があった。納豆は確かに良質の植物性蛋白質を多量に含む食品である。脂肪を摂らずに蛋白質を補充するのには最適の食品だ。しかし、尿酸値が高く、痛風の症状が出ている人にはNGなのである。
自身の体質を知らずに実施するダイエットは、風邪をひいた時に正露丸を服用するようなものなのだ。
このシリーズの最初にランニングは本来危険なものだということを強調したのは、僕は嫌がる人や興味のない人に無理にランニングを勧めるような事はしたくないからだ。自発的に始めたものでないと心から楽しめないと思う。
もし、あなたが、やせたいと思ってランニングを始めたばかりで、今回のM氏の一件で、家族には
「パパ、マラソンなんて危ないから止めて!」
と言われているのだとしたら、僕には
「家族を大切にしてください。」
としか言えない。しかし、
「せっかくなのだから、続けてみたい。」
と思ってらっしゃるのなら、あなたの「自己責任」で続けていただきたい。やせる事を目的で始められたのであれば、体重計はお持ちであろう。さらに、血圧計を購入していただきたい。太っているのに走りたいのであれば、体重と同様に、血に関心を持って欲しい。血に関心といっても、血液型のことではない。いや、どうしてみんな、血液型にはあんなに関心が深いのに、自身の血液の成分には興味がないのだろう?
今なら、安価で精度のいい血圧計がいくらでも出ていると思う。ランニングの前後には測定する習慣をつけて欲しい。たいていは、何歳で体重何kgの人なら正常値の範囲はこのくらいという指標がついているはずだ。それを参考にして、正常値を越えている時は休養するなり、医師に相談するなりして欲しい。
さらには、血液検査もマメに行なって欲しい。自身の体重の数値と同様に、血中のコレステロールや血糖や中性脂肪の数値に注意を払うようにして欲しい。
血液検査を無料で容易に出来る手段としては献血があるが、注意して欲しいのは、検査の当日の朝、もしくは前日はランニングを控えて欲しい。1度、僕の職場に献血車が来た時、検査をしてもらったが、なんとそこで「貧血」と診断されたのだ。ちょうど2日前にハーフマラソンに出たばかりだった。トップランナーや、高校の駅伝ランナーらが貧血に苦しむ話は聞いていたが、まさか自分が、と驚いた。大量に汗をかくと貧血になりやすいのだという。それと、硬いアスファルトの路面を長時間走ると、赤血球が破壊されて貧血になりやすいのだとも言われている。正確な数値を知りたければ、検査当日は食事も抜いて、水分を摂るだけにしておこう。前日もアルコールや脂肪分の多い食事は控えておこう。
いや、そもそも、やせたいために走っているのなら、アルコールや脂肪分の摂取は日常的に減らす努力をしないといけないが。
さて、僕はなかなか体重が73kg前後からなかなか下がらなくなったということを前回お話した。当時はその原因になかなか気が付かなかった。あの当時、もっと食事も制限して体重を70kg以下に絞っていれば、サブスリーランナーになれたかもしれない。なぜ、それが出来なかったのか?
マラソンを3時間30分以内で完走出来るということに果たしてどれだけの価値があるのだろうか?僕はある知人から、
「女のトップに1時間も遅れるんか。たいしたことないのう。」
と言われたこともあるし、逆に
「1時間しか違わないなんて、すごい!」
と言われたこともある。このレベルだと、少なくとも3大国際マラソンに別大、延岡、防府、信毎以外の主要な公認マラソンなら十分完走できるのだ。かつては
「ここを走らずしてマラソンを語るなかれ」
と言われた玉造毎日マラソンも、全国ネットで中継される北海道マラソンも完走することが出来た。結局、それで満足したのだ。
「走ることは手段ではなく目的となった。」
とはそういうことで、やせるために走るのではなく、走ることそのものを楽しむようになった。この体重でもこのくらいで完走できるんだから、まっいいかと思っていたのだ。
しかしながら、体重75kg前後でマラソンを3時間30分を切るペースで走り続けたことは、決して「身体のために」いいことではなかった。今僕の左足のかかとは尻につくまで曲がらなくなっている。そのためにかつては弓道をしていた僕だが今では正座が出来なくなっている。右足のアキレス腱の痛みは収まっていない。
今、現在2週間ランニングをしていないのだが、自転車通勤のおかげで体重は抑えられている。また、ランニングを再開すれば、久しぶりに75kg以下に戻れるのではないかという予感はしている。
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