KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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ベルリン・天使の疾走~世界選手権雑感 vol.2

2009年08月17日 | 五輪&世界選手権
今、本稿を書き始める直前に、ニュースが飛び込んできた。女子20km競歩で渕瀬真寿美が7位に入賞したというのである。詳細は後述するが、女子10000mでの中村友梨香の7位入賞に次いで、2日連続の入賞である。大会前に陸連が掲げた「メダル1、入賞6」という目標、ハンマー投げの室伏広治の欠場で達成が危惧されたが、この勢いならいけるんじゃないかと思えてきた。

しかしながら、このレース、地上波では中継なしである。今日は男女の100mがメインイベントでスケジュールが組まれてしまっていて、差し替えの余地はないようである。

すっきりしない気分で、これまでの競技を振り返る。

最初の予選種目となったのは女子3000m障害。'05年のヘルシンキ大会で正式種目となって以来、3大会連続して日本代表となったのは早狩美紀。彼女とは今年で幕を閉じた京都ハーフの第一回大会である15年前の京都国際ハーフマラソンで一緒に走ったことがある。当時は地元の同志社大学に在学中だった。この時の招待選手で唯一の現役アスリートである。
ちなみに、他には現在は指導者となっている浦田春生、仲村明、仙内勇、佐藤敏信、奈良修といった人たちが招待選手として出場していた。

今回、短距離の解説者としてベルリンに来ている朝原宣治は同志社大学の同期生で、レポーターの高橋尚子は大学時代のライバルで、インカレや駅伝では何度もトップ争いをしてきた。

学生時代から中距離一筋の競技生活を過ごしてきた彼女が30歳過ぎて、新しい種目にチャレンジし、ヘルシンキ大会では14年ぶりに世界選手権代表の座をつかんでみせた。

ヘルシンキでは決勝に進出するも、2年前の大阪では途中転倒して棄権。昨年は日本の陸上競技選手としては五輪初出場の最年長記録をマークした。(繰り返すが、朝原やQちゃんと同期生である。)

日本選手権のレースを見ると、彼女のハードルを越えるフォームの美しさは、群を抜いている。この種目、「苛酷」ということを強調したくはないが、スピードのみならず、ハードルを越える技術に、筋力、持久力と様々な要素が高いレベルであることが要求されることは間違いない。そのせいか、五輪代表マラソンランナーの指導者には3000障害の競技者出身の人が少なくない。

今回のレースを見ると、この種目の進化の速さを見たような気がした。女子ランナーたちの集団がハードルを飛び越える一瞬がなんとも美しかった。早狩もシーズンベストはマークしたものの決勝進出には届かなかった。今なお、向上心を捨てない彼女には頭が下がるが、やはりここは彼女を脅かすような若いライバルと台頭が待たれるところだ。今の実業団の女子長距離関係者はこの種目にどのくらい意欲を持っているのだろう。早狩は、所属していた実業団チームが廃部した以後は、高校の職員として勤務しながら1人きりでトレーニングを続けている。

若手の台頭というと、今回の日本代表は特に大学生というかU-23世代が目立つ。五輪翌年の世界選手権は日本陸連にとっては「若手の登竜門」という位置づけのようだが、男子100mでも江里口匡史に木村慎太郎という二人の早大生が1次予選をクリアした。江里口は、もし、「キャッチコピー禁止令」が無ければ、絶対「短距離王子」と呼ばれていたはずである。男子20km競歩でも順天堂大の鈴木雄介と山梨学院大の藤澤勇が代表入り。箱根駅伝のケニア人留学生のイメージが強い同校から初のマラソン以外の種目の代表だ。男子400m障害でエース格の成迫健児が果たせなかった準決勝進出を果たしたのが順天堂大の吉田和晃。

今年はユニバーシアードの開催年でもあるわけだが、それにしても男子の長距離の学生ランナーが1人も代表に入っていないどころか、A標準記録突破者もいなかったのが誠に残念である。今春卒業した竹澤健介や佐藤悠基らが日本選手権にピークを合わせられなかったのが惜しまれる。

テレビは男子100mや400m障害の予選を何度もプレイバックしている。それよりも女子20km競歩のレースを見せてくれと思うのだが。

(文中敬称略)



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