KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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年末恒例!輝く日本マラソン大賞2008 第2部

2009年12月28日 | 日本マラソン大賞
いよいよ、大賞とそれに準ずる各賞の発表である。


敢闘賞
尾方 剛(中国電力) 北京五輪プレ大会10位 北京五輪13位
実井謙二郎(日清食品グループ) 東京11位 ベルリン7位
加納由理(セカンドウインドAC) 大阪DNF 名古屋3位 東京国際2位
吉田香織(セカンドウインドAC) 名古屋12位 北海道3位 カサブランカ優勝 ホノルル2位

殊勲賞
藤原 新(JR東日本) 東京2位 シカゴ16位 福岡3位
高見澤勝(日清食品~佐久長聖高教) 東京14位 長野16位 北海道優勝
中村由梨香(天満屋) 名古屋優勝 北京五輪13位

優秀外国人賞
ツェガエ・ケベデ(エチオピア) パリ優勝 北京五輪銅メダル 福岡優勝
ヴィクトル・ロスリン(スイス) 東京優勝 北京五輪6位 
マーラ・ヤマウチ(セカンドウインドAC) 大阪優勝 北京五輪6位 東京国際3位
コンスタンティナ・ディタ(ルーマニア)
大阪9位 ロンドン8位 北京五輪金メダル シカゴ4位

優秀選手賞
大崎悟史(NTT西日本) びわ湖3位 北京五輪DNS
入船 敏(カネボウ) 東京5位 福岡2位
尾崎好美(第一生命) 名古屋2位 東京優勝
嶋原清子(セカンドウインドAC) 名古屋11位 シカゴ3位 ホノルル優勝


最優秀選手賞(マラソン大賞)
サムエル・ワンジル(ザバスAC) ロンドン2位 北京五輪金メダル


皆様はどう思われただろうか。マラソン大賞史上初の外国人選手の大賞受賞である。過去にもダグラス・ワキウリ、エリック・ワイナイナと日本の実業団に所属していたケニア人ランナーが五輪でメダルを獲得してきた。しかし、ワンジルは16歳で来日し、高校駅伝に出場。競技生活を日本を開始したランナーが五輪の頂点まで登りつめた。「4人目の日本代表」とまでは言わないが、この事実を今後、日本のマラソン関係者はどう受け止めていくのだろうか?折りしも、全国高校駅伝では留学生ランナーの1区起用が禁止され、4日後のニューイヤー駅伝では外国人は最短区間での起用しか認められなくなった。これが果たして、本当に日本人ランナーの強化につながるのか?

これから見つめていきたいと思う。

メダリストにしか関心のないメディアからは取るに足らぬことと思われたのかもしれないが、尾方は、日本のマラソン代表史上、最年長で五輪に初出場を決めたランナーだった。ゴール後、アテネの金メダリスト、ステファノ・バルディー二と握手を交わす姿も、忘れられない。月並みな言葉だが、「一つの時代の終わり」の象徴的なシーンだった。(バルディー二に気づかなかった、中継アナは大失策!)
アトランタ五輪での惨敗から12年。実井は今も走り続けている。今年の12月で40歳になった。折りしも今年の流行語大賞となった「アラフォー」である。'90年代半ばに別大や防府で上位入賞していた頃の宗猛を思い出させる活躍ぶりだ。こうなったら、マスターズの世界最高記録も目指して欲しい。
加納に吉田、そして優秀選手賞にも選んだ嶋原とセカンドウインドACのランナーたちが好調だ。吉田にとって、海外レース出場は練習の一環かもしれないが、来月の大阪では自己記録を大幅に更新しそうだ。加納については、今春、五輪代表有力候補に推した。もし、彼女が選ばれたら、全日本大学女子駅伝の優勝チームから初めて五輪代表が選ばれることになっていたからだ。トラックでは赤羽有紀子に先を越されたが、4年後はまだ望みがある。あるいは、赤羽とともにロンドンのマラソン代表になっているだろうか。

藤原と中村、そして優秀選手賞の尾崎。この3人が今年の大きな収穫と言ってもいい。まだまだ、世界のトップと対等の勝負が出来るランナーではないと思うが、まだいくらでも伸び代があると思う。東京で自己ベストを更新しながら、退社し母校の指導者となった高見澤。実は、大学時代から注目していて、昨年のマラソン大賞では新人賞を与えたくらいだ。指導者転身は「早すぎる引退」かと思いきや、北海道ではサプライズを見せてくれた。決して低レベルのレースだったわけではない。北海道にしては異例の高温高湿度の中、サブ20が15人も出る北海道マラソンとしては好記録続出のレースを制してみせた。先の高校駅伝では、彼の教え子たちが優勝をした。箱根駅伝の伝説となっている、ジョセフ・オツオリ(故人)のごぼう抜き。そこで抜かれたランナーの1人だった、両角速の指導のサポートをするのが、山梨学院大時代、ケニア人留学生と寝食を共にしてきた高見澤である。彼らの教え子たちの中から、ワンジルに追いつくことが出来るランナーが1人でも多く育って欲しい。ランナーとしての高見澤にも注目したい。おそらく、彼の手本は、母校の先輩でもある、NTTで営業職に従事しながらアテネ五輪代表選考レースで2時間8分台をマークした大崎悟史だったのではないか?

それから4年後、大崎はアジア大会銅メダル、世界選手権6位という結果を経て、今年のびわ湖で自己ベストを更新して悲願の五輪代表を得た。それだけに、本番直前の故障欠場は無念であったろう。しかし、尊いのは、五輪でメダルを獲得することよりも、それを追い求めることではないか?少なくとも、かつてはそう言われていたではないか。いつから言われなくなったのだろう。

今の日本の男子マラソンランナーの弱いところは、2大会続けて結果を出せるランナーがいないことだと思う。大相撲の日本人力士とも共通することだ。そんな中、2時間9分台とはいえ、2大会連続して自己ベストを更新した入船は、その点は評価したい。福岡の後半の展開は、前方にゲべテがいなければ、「名勝負」だったと思う。

来年の世界選手権、海外マラソンの結果も選考の対象になるというが、嶋原のシカゴ3位、ホノルル優勝という結果はどう評価されるのだろうか。シカゴでは金メダリストのディタに、ホノルルでは今年のボストン2位のビクティミロワに先着している。彼女も代表に内定してもいいのではと思うのだが。

来年の世界選手権。はっきり言って日本のメダル獲得は男女とも厳しいと思う。8位以内に入賞できれば上出来だ。しかし、ここに名前を出したランナーたちが、僕の想像を越えるような成長を見せてくれることを期待したい。

ああ、「期待したい」とかそれに類する言葉を何度使っただろうか。

(文中敬称略)



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