落葉松亭日記

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加瀬英明氏『崩壊しつつある世界の「戦後レジーム」』

2015年04月23日 | 政治・外交
安倍首相のバンドン会議演説では、「戦後50年の村山富市首相談話や60年の小泉純一郎首相談話の文言をそのまま踏襲しない姿勢を印象づけた。」という。
何かにつけて、歴史々々と謝罪を要求する中・韓に対する牽制と感じる。
安倍首相の提唱する「戦後レジュームからの脱却」が少し反映されたのではないだろうか。
「深い反省とともに守り抜く」 首相が不戦の誓い バンドン会議で演説
産経新聞2015年4月22日(水)15:28
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/sankei-plt1504220024.html

 【ジャカルタ=石鍋圭】安倍晋三首相は22日午前(日本時間同日午後)、インドネシアの首都ジャカルタで始まったアジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年記念首脳会議で演説した。過去の反省に言及した上で、平和的手段による国際紛争解決など不戦の誓いとともに、未来志向でアジア・アフリカの平和と繁栄に今後も貢献していく考えを表明した。

 首相は、1955年のバンドン会議で採択された「バンドン10原則」の中から「侵略または侵略の脅威、武力行為によって他国の領土保全や政治的独立を侵さない」「国際紛争は平和的手段によって解決する」とした部分に言及。「この原則を、日本は先の大戦の深い反省とともに、いかなる時でも守り抜く国であろうと誓った」と強調した。

 「侵略」との表現は10原則を引用する形で使うものの、先の大戦での日本の行為としての文脈では触れなかった。過去に「植民地支配」や「侵略」を謝罪した戦後50年の村山富市首相談話や60年の小泉純一郎首相談話の文言をそのまま踏襲しない姿勢を印象づけた。

 首相は、人材育成について「未来への投資だ」とも訴え、「成長を牽引するのは人材だ。アジアやアフリカの意欲あふれる若者たちを、産業発展を担う人材へと育てていく」と表明。今後5年間で35万人を対象にした人材育成支援を実施する方針を示した。

 また、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人殺害脅迫事件などを踏まえ、「テロリストたちに世界のどこにも安住の地を与えてはならない」と訴えた。来年のアフリカ開発会議(TICAD)のアフリカ開催を確認し、感染症や災害対策、気候変動問題対応での「強い結束」も呼び掛けた。

■「加瀬英明のコラム」メールマガジン 2015/04/21
http://www.kase-hideaki.co.jp/magbbs/magbbs.cgi

崩壊しつつある世界の「戦後レジーム」

 私はニューヨークに留学したが、客が来ると、エンパイア・ステートビルに案内した。
 エンパイア・ステートビルは、1931年に竣工したが、大恐慌の真只中だったから、テナントがいなかったために、「エムプティ・ステートビル」と、呼ばれた。

 今年、上海に世界でもっとも高い、超高層の「上海タワー」が完成する。
 しかし、「上海タワー」はじきに、現在、サウジアラビアで建設が進んでいる、「キングドム・タワー」が完成すると、世界第2位に転落する。「キングドム・タワー」は、いま、世界でもっとも高いビルである、ニューヨークの「ワン・ワールド・トレード・センター」の2倍の高さになるといわれる。

 私はマレーシアに招かれた時に、「ペトロナス・タワー」で講演した。1996年に完成して、世界でもっとも高いビルとなったが、アジア経済危機によって見舞われた。
 私は世界一高いビルが出現すると、その経済が破綻するというルールを、エンパイアで学んでいたから、やはりそうなんだと思った。

 2010年に、ドバイに世界一高いビルが誕生したが、世界経済が失速した。
 このような超高層ビルは、その国の経済が最高潮に達した時に、着工されるものだ。だから、右肩下がりの前兆となるのだろう。

 「上海タワー」は、中国経済が大きく蹌踉(よろ)めく前触れなのだろうか。
 サウジアラビアの「キングドム・タワー」は、石油ブームによって、砂漠に砂上の楼閣のように出現した王国が、危機にさらされている兆のように、思われてならない。

 それにしても、中国、サウジアラビア、ドバイ、マレーシアにまるで競うように、つぎつぎと地上最高のビルが出現してゆくというのは、この四半世紀のうちに世界構造が大きく変わったことを、痛感させられる。ついこのあいだまでは、中国は苦力(クーリー)の国として知られていたし、中東といえば、棗椰子(なつめやし)の蔭で、駱駝が居眠りをしているところを、連想したものだった。

 第1次安倍内閣が登場してから、安倍首相が「戦後レジームからの脱却」を、訴えてきた。だが、「戦後レジーム」は、日本のなかだけに限られた、国内問題である。
 ところが、いま、日本にとってそれよりもはるかに大きな問題が、世界を大きく揺さぶっている。
 アメリカがオバマ政権のもとで、内に籠るようになって、アメリカの力が後退してゆくなかで、世界を律してきた「戦後レジーム」が崩壊しつつある。オバマ大統領はもはや「アメリカは世界の警察官ではない」と、公けの場で述べている。
 そうなると、日本がたいへんだ。日本が誇る「平和憲法体制」は、アメリカが日本をしっかりと守ってくれることを前提としてきた。わが「平和憲法体制」と、アメリカが超大国として、アメリカに腰巾着(こしぎんちゃく)のように従ってきた国々を守るという、第2次大戦後の「戦後体制」は、一体のものであってきた。

 それなのに、国会では集団的自衛権の解釈を見直して、日本の役割をひろげようという安保法制をめぐって、“平和憲法”に抵触するといって反対する声が、囂(かしま)しい。
 “平和憲法体制”は、アメリカが日本に強要した「戦後レジーム」であるのに、それを必死に守ろうとするのは、アメリカという母親への甘えなのだろう。