僕は自転車をこいで家に向かっていた。
そんな時、視界の端にチラリと片手袋が映る。しかし雨脚がこれ以上強くなったら自転車では帰れない。
黙って通り過ぎる。10m、20m、30m…。「駄目だ!」
大急ぎで引き返してみると、子供用のピンクの片手袋。すっかり濡れ鼠となって可愛そう。そっと写真を撮る。
思えば昔は遅刻しそうだろうが、台風だろうが、片手袋を見付けたら絶対に立ち止まって写真を撮っていた。あの頃の俺、無茶苦茶だったよ…。触る者皆、傷つけてたよ…。
雨降りの寂しげな町に取り残された子供用の片手袋に、少しだけ尖ってた自分の面影を思い出した。午前二時。
…って、僕、反抗期すらまともになかったよ!