HIMAGINE電影房

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こんなプロレスがあったなんて… 『TITANES EN EL RING』

2007年09月17日 | アルゼンチンプロレス

 プロレス興行が行われている国には、必ずその創世記には国民の期待を背負ったカリスマ的英雄が存在する。日本ならばその地位にあるのが力道山だし、メキシコならエル・サントであろう。彼らはその活動をリング上のみならずコミックスや映画など他メディアにまで進出し自らの名声をますます高めていった…

 つい最近だが、YOU TUBEにて面白い動画を鑑賞した。それは古いアルゼンチンのプロレス番組で、ヒーロー番組やバラエティ番組に登場するような容姿のキャラクターたちがリング上で闘っている動画だった。

「何これ?面白いじゃない!!」

 この手の作り物っぽいプロレスが好きな私としてはもう凄く興味が惹かれたわけで、もう他の映像はないか?と探しまくってほぼ1日中そのアルゼンチン産の不思議なプロレス番組を見続けていたんですわ。
 そのうち、この番組のタイトルが『TITANES EN EL RING』だという事、ちょくちょく登場する金髪に黒髭の巨体のレスラーがこの番組の主役であるマルティン・カラダジアンなる人物という事が分かった。
 一体、『TITANES EN EL RING』とはいかなる番組か…?



 アルゼンチンの有名レスラー兼俳優であるマルティン・カラダジアン(Martin Karadagian)は1922年アルゼンチンのブエノスアイレス生まれ。グレコローマン・レスリングを幼い頃に始め、38年にはタイトルホルダーになったほどの強者。 彼は1962年に自身の企画であるスタジオ公開プロレス番組『TITANES EN EL RING』(リング上の巨人)を立ち上げる。あのWWF(現・WWE)が80年代に“ファミリー・エンターティメント”としてキャラクター重視路線を始める約20年前にアルゼンチンに同様のプロレス形態があったことは驚きである。

キャラクターたちも現在のAAAやホーガン政権時のWWFに引けを取らない。名前だけを羅列すると、カバジェロ・ロホ(赤い紳士)やラ・モミア(ミイラ男)、ディアボロ(悪魔)、エル・アンドロイデ(アンドロイド)、ジンギス・カン(蒙古王)、ヒッピー・ジミー(ヒッピー野郎)、エル・オンブレ・ベヘタル(野菜男)等々…どう、実に多彩でしょ?

                                
                 
さまざまなキャラクターたち(イロモノたちも多いが)の頂点に立っているのが“エル・カンペオン”ことカラダジアン。彼が挑戦してくる悪役レスラーたちをエルボー・スマッシュでなぎ倒していく姿はまさしく“アルゼンチンのホーガン”だ。当時の子供たちは彼の活躍ぶりに一喜一憂した事だろう。
 だが、現在の我々の目で試合をみると『TITANES~』における彼のファイトぶりは、殆どが殴ったり蹴ったりの単調なものでとてもレスリングをやっていたなんて思えない(初期は普通のレスリングスタイルだったようだが)。彼は相手の攻撃をセール(受け)し続けることによって観客の注目を集め、最後に倍返しするという王道スタイル(よく言えばだが)で、そのせいかドロップキックやフライング・ヘッドシザースを簡単に出せる若い選手は番組前半に登場し、カラダジアンら重鎮らはメインに出てくる事が多い。

しかし、30年近く戦い続けたカラダジアンの体調に陰りが見え出し番組の人気も下落。ついに1988年、26年もの間アルゼンチンの子供たちを魅了した『TITANES EN EL RING』は番組に終止符を打つ事となり、その3年後カラダジアンは糖尿病の合併症により69歳でこの世を去ることになる。

 20世紀も終わりを告げ、新世紀に入った2001年、『TITANES~』は突如復活する(単発では放映していたようだが)。以前のキャラクターも多少残しつつ(中身のレスラーはもちろん違うが)新たなキャラクターも登場させ“栄光よもう一度!”とばかりにスタートしたが、“本物”であるWWEやメキシコAAAのTV中継や後続のプロレス番組の台頭により2007年、長きにわたってアルゼンチン・プロレスの代名詞であった当団体は活動を停止してしまう。
 団体こそなくなってしまったが、『TITANES EN EL RING』の名はアルゼンチンの当時熱狂した世代の人たちの間ではノスタルジーと共に語られる存在なのだ。

 少しでも興味を持たれた方は一度YOU TUBEで覗いてみてはいかがでしょう?どの動画をとっても、今まで観てきたプロレスとは明らかに違う新しい“何か”を得られるはずだから…
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