昨日の未明、雷鳴で目が覚めた。空気を震わすような轟きは2時間あまりも続き、一時は強い雨音もしてまんじりともせず蒲団の中で時を過ごした。それでも夏の雷とは違い春の雷はどこか安心感がある。ああ春雷だと心の中でつぶやいた。それにしては激しい雷である。
前日の日曜日が初夏の陽気だったこともあって、冬の厳しい寒さは過ぎ去り空気は生暖かい。しばらくすると雷鳴も少し遠ざかり、交響楽のティンパニーのように心地よく聞こえてきた。明け方近く温かい蒲団に包まって、春雷とはもっと遠慮がちに鳴るものではなかったかと思いながら、しばしまどろんだ。
半睡の意識の中で、私は高校時代の或る日を思い出していた。
あの晩も蒲団の中で春雷を聞いた。暖かい日で遠くに雷鳴がしていた。当時は大自然に対して畏敬の感情を持ち、生命というものに強く惹かれていた。多感な年頃である。体には力が満ちていて、雷鳴を詩的な響きとして聞いていた。あれは人生に春の訪れを告げる雷でもあった。
今日は啓蟄である。春雷は毎年、大気の不安定な今頃によく鳴るので虫出しの雷ともいうそうだ。私の散歩道ではまだ野の花は少ないが、彩りが賑やかになるころ今年も虫たちの営みが始まる。
フリーフォトより
こちらは雷はなかったですが、雨風が強かったです。
これで春が来ると思うような余韻はなかったです。
いい文章ですね。
情景が浮かんできました。
明日からまた寒の戻りがあるようですね。
昔は町中に住んでいたので、夜、布団にもぐっていると色々な音が聞こえてきましたね。
遠くで鳴る夜汽車の汽笛に旅情を感じたこともありました。
コメントありがとうございました。
三寒四温の候、春爛漫は もう少し先になりますが 日一日 いい季節になっていきますね。
高校時代の思い出が 蘇りましたか。
御文の随所に素晴らしい表現をされており ナイス エッセイだと 思いました。
若い頃の日常の、印象的な的な出来事をよく覚えています。
今のようには感性が摩耗していませんでした。
3月はおっしゃるように三寒四温ですね。
インフルや花粉症もあり体調を崩しやすい時期です。
私も用心したいと思います。
コメント有難うございました。
日本も広いですね。
>しばらくすると雷鳴も少し遠ざかり、交響楽のティンパニーのように心地よく聞こえてきた。明け方近く温かい蒲団に包まって、春雷とはもっと遠慮がちに鳴るものではなかったかと思いながら、しばしまどろんだ。
何だか小説の中の一節のような文章です。
目に浮かぶようです。
いつもは各地の様子やまつり、季節の花を写真投稿しています。
たまに、その時々に思ったことなども書いています。
コメント有難うございました。