それからひと月がたった。
優子は毎朝8時半に送迎バスに乗って施設にやって来る。
みんなの輪の中にもうまく溶け込んだ。
男共はというと、約2名が優子に交際を申し込み、
いずれも見事玉砕したと噂で聞いた。
なかなか手強いゾ。
以前恋人がいたが、優子が病気になって別れたという情報も仕入れた。
今は誰とも付き合っていないらしい。
周君はというと、ごく普通に接している。
というより、素っ気無い。
いや、この素っ気無さが周君のいつもの手口だ。
女心をじらしているのだ、と良子は考えていた。
しかし、そう考えてはみても周君は本当に気が無い様子だ。
何故だ。
優子が本命である証なのか?
それとも、女にはもう飽き飽きしたのか?
そんなある日、良子は智恵美ちゃんから次のように耳打ちされた。
「周君、最近外人パブに入り浸っているらしいよ。
1ヶ月で50万も女のために使ったそうよ。」
1ヶ月に50万というのは度を越している。
周君は障害者基礎年金の受給を始めたばかりだ。
一時金として200万円が周君の口座に振り込まれたのを良子は知っている。
そもそも、年金の支給・不支給という問題は専門外の良子には全く納得し難いものがある。
可哀相な身の上の当然支給されてしかるべき人が、申請しても不支給と判断されたり、
逆に、周君のように金持ちの家庭でのうのうと親の脛をかじりながら暮らしている輩に
一度に200万も振り込まれたりするのだ。
年金とは私たちの血と汗と涙の結晶のお給料から毎月天引きされているアレである。
自営業の人は銀行に行って、1ヶ月1万3千円ほど振り込んでいるアレだ。
いわば、血税の親戚だ。
そして、もしそれがなければ明日の生活さえ困難だ、というべき人に対して
支払われるべきものだ。
その尊い年金で女遊びなどというのは、良子の倫理観に反する悪行に他ならない。
それにも増して、周君がヤクザな道に踏み込まないか心配だ。
事務室の机の前でため息をつき、向かいに座っている運転手の健さんに、
「周君、外人パブに入り浸っているんだって。」
と、つぶやいてみた。
「外人パブか。俺も昔、よく行ったなあ。
景気よかった頃は、オネーチャンらを連れてしょっちゅう焼肉屋に行ってたわ。
焼肉屋のババアがあきれるくらいやった。」
健さんが遊び人だったのは知ってはいたが、
外人パブという周君との接点があるのは知らなかった。
「タイ人かフィリピン人か知らんけど、
だいたいあいつら16か17で結婚するんや。
それで子供2,3人作って、生活に困って日本に出稼ぎに来るんや。
俺の女も子持ちやった。息子の写真も見せてもろた。
まあ、女の子の中には本気で日本人と結婚したいと思って来る子もいる。
そーゆー女の子に引っかかってくれるといいんやけどな。」
「美人ばっかりなの?」
「だいたい人並み以上が揃ってる。
本国でオーディションがあるからな。
オーディションに受かるための歌やダンスの学校もあるくらいや。」
「子持ちか子持ちでないかは、どう判断すればいいの?」
「そんなもん、同僚にさりげなく聞けばいい。
口の軽そーな子を選ばんとあかんけどな。
できるなら、店でライバル関係にある子に聞くと簡単に口を割る。」
「周君にそれ、言ってよ。」
「ワシがか?」
「うん。」
健さんはああ見えても人望がある。
周君も健さんのアドバイスなら聞いてくれそうだ。
後は周君の引っかかっている相手がいい子であることを神に祈るのみだ。
優子は毎朝8時半に送迎バスに乗って施設にやって来る。
みんなの輪の中にもうまく溶け込んだ。
男共はというと、約2名が優子に交際を申し込み、
いずれも見事玉砕したと噂で聞いた。
なかなか手強いゾ。
以前恋人がいたが、優子が病気になって別れたという情報も仕入れた。
今は誰とも付き合っていないらしい。
周君はというと、ごく普通に接している。
というより、素っ気無い。
いや、この素っ気無さが周君のいつもの手口だ。
女心をじらしているのだ、と良子は考えていた。
しかし、そう考えてはみても周君は本当に気が無い様子だ。
何故だ。
優子が本命である証なのか?
それとも、女にはもう飽き飽きしたのか?
そんなある日、良子は智恵美ちゃんから次のように耳打ちされた。
「周君、最近外人パブに入り浸っているらしいよ。
1ヶ月で50万も女のために使ったそうよ。」
1ヶ月に50万というのは度を越している。
周君は障害者基礎年金の受給を始めたばかりだ。
一時金として200万円が周君の口座に振り込まれたのを良子は知っている。
そもそも、年金の支給・不支給という問題は専門外の良子には全く納得し難いものがある。
可哀相な身の上の当然支給されてしかるべき人が、申請しても不支給と判断されたり、
逆に、周君のように金持ちの家庭でのうのうと親の脛をかじりながら暮らしている輩に
一度に200万も振り込まれたりするのだ。
年金とは私たちの血と汗と涙の結晶のお給料から毎月天引きされているアレである。
自営業の人は銀行に行って、1ヶ月1万3千円ほど振り込んでいるアレだ。
いわば、血税の親戚だ。
そして、もしそれがなければ明日の生活さえ困難だ、というべき人に対して
支払われるべきものだ。
その尊い年金で女遊びなどというのは、良子の倫理観に反する悪行に他ならない。
それにも増して、周君がヤクザな道に踏み込まないか心配だ。
事務室の机の前でため息をつき、向かいに座っている運転手の健さんに、
「周君、外人パブに入り浸っているんだって。」
と、つぶやいてみた。
「外人パブか。俺も昔、よく行ったなあ。
景気よかった頃は、オネーチャンらを連れてしょっちゅう焼肉屋に行ってたわ。
焼肉屋のババアがあきれるくらいやった。」
健さんが遊び人だったのは知ってはいたが、
外人パブという周君との接点があるのは知らなかった。
「タイ人かフィリピン人か知らんけど、
だいたいあいつら16か17で結婚するんや。
それで子供2,3人作って、生活に困って日本に出稼ぎに来るんや。
俺の女も子持ちやった。息子の写真も見せてもろた。
まあ、女の子の中には本気で日本人と結婚したいと思って来る子もいる。
そーゆー女の子に引っかかってくれるといいんやけどな。」
「美人ばっかりなの?」
「だいたい人並み以上が揃ってる。
本国でオーディションがあるからな。
オーディションに受かるための歌やダンスの学校もあるくらいや。」
「子持ちか子持ちでないかは、どう判断すればいいの?」
「そんなもん、同僚にさりげなく聞けばいい。
口の軽そーな子を選ばんとあかんけどな。
できるなら、店でライバル関係にある子に聞くと簡単に口を割る。」
「周君にそれ、言ってよ。」
「ワシがか?」
「うん。」
健さんはああ見えても人望がある。
周君も健さんのアドバイスなら聞いてくれそうだ。
後は周君の引っかかっている相手がいい子であることを神に祈るのみだ。
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