キューピーヘアーのたらたら日記

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ドンファン (その3)

2008-06-11 13:54:45 | 私が作者です
事務室に戻って仕事をしながら、優子とのやり取りを反芻した。

優子は良子の真意を理解できたであろうか?

今年で30才になる筒井周、統合失調症、入院歴2回、自・殺未遂経験あり、

ジャニーズ系の呼び名がはまっているので、年下の子もみんな君付けで呼んでいる。

周君は陰に隠れた問題児なのだが、本人は全く意識していない。

どこが問題なのかというと、一言で言って、

"女ったらし"なのだ。

女と見れば見境なく用意周到な手法で口説く。

メンバーさんはおろか、実習に来てるまだ二十歳そこそこの女子大生であれ、

ボランティアの40過ぎの子持ちのおばさんであれ、

自分のものにしないと気がすまないのだ。

そして、必ず女の心を落とす。

その才能のようなものが周君には備わってる。

容姿といい、何事も如才なくこなす才覚といい、

周君には自分のいる環境をハーレム化する星の下に生まれているかのようだ。

「私、周君のことが好きなんです。周君に嫌われてないか心配になると、

 睡眠薬を飲んでいても、夜眠れないんです。」

女子の心の悩みの相談を受け、よくよく聞いてみるとみんな結局そこにたどり着く。

ここは、心を癒すのが目的の施設だ。

それが、元々心のデリケートな人たちに新たな心の悩みを作ってしまっている。


では、そんな周君がなぜ出入り禁止にもならず、職員からも注意を受けることもなく、

他のメンバーさんのなかにうまく溶け込んでいるのか?

それは、周君が女子とは一向に深い関係にならないのが主たる要因だ。

相手の心が自分のものになったと分かるや否や、

周君はその相手に対する興味を失ってしまう。

釣り人のようにリリースするのだ。

そして一定の距離を保ったままにしておく。

これほど女どもの心を独り占めしながら、

浮いた噂を聞いたことが無い、「身持ちの堅いドンファン」なのだ。


学生時代に発達心理学の講義も受けたことがある良子は始め、

乳幼児期に母親から充分な愛情を受けなかったことが、

周君をこんな行動に駆り立てているのではないかと考えていた。

しかし、事実は逆だった。

家族会で母親に会ってわかった。

30才になる息子がいるというのに、母親は若々しく娘娘している。

そして、周君ととても仲がよかった。

周君は母親の溺愛の元に育ったのだ。

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