『SAKURA』 第一幕-2

第一幕-2

同じくICPO日本支部事務所

ボスがPCに向い仕事をしているふりをしている。


ボス：なんだあっ、リーチなんかしやがって！

　　　人がせっかく役満てんぱったのにい。

　　　くそお、覚えてろよ。

　　　あ、それロン！おお、四暗刻単騎を上がったぞ。

　　　遂に生まれて初めて役満を上がった！

　　　なんだ、ダブル役満じゃないのかこのソフト。


ボブがバタバタと入ってくる。


ボブ：ボス、ボス、ボス、出ました。


ボブ、ハアハアと息を吐き興奮している様子。


ボス：だからそう興奮するな、ボブ。

　　　お前、日本人のデカの間で何とあだ名されてるのか知ってるのか？

　　　「天才バカボン」だぞ。

ボブ：天才？おおGENIUS！

ボス：喜んでやがる。おかげで俺様は「バカボンパパ」だ。

ボブ：日本人もようやく我々をリスペクトし始めたわけですね。

ボス：果てしなくめでたい奴だ。

　　　まあいい。俺は今、すこぶる機嫌がいい。

　　　何だ？何が出たんだ？ボブ。

ボブ：あ、そうだった。埃です。埃が出ました！

　　　遠藤小吉が児童買春です！

ボス：ええっ？児童買春！？そんなワルだったのか。

ボブ：ここ一週間の遠藤のPCアクセス先を追っていたのですが、

　　　遠藤は頻繁に「マハルのおはなし」という

　　　ライブチャットサイトにアクセスしています。

ボス：何なんだ？そのマハルのおはなしってのは？

ボブ：ライブチャットとはインターネットの双方向のテレビ電話を通じて

　　　女の子との会話を提供するサービスのことです。

　　　この通称「マハル」は日本人が日本人のために開設したサイトですが、

　　　籍はアメリカにあり、チャットレディは全てフィリピン人の女の子

　　　という仕組みです。

　　　そして表向きはセクシャルアクティビティを禁止するとうたっていますが

　　　実態は守られていません。

ボス：で、子供が働いているんだな？

ボブ：ええ、酷いもんですよ。

　　　登録している女の子の８割が自称18才で、実際はその半分が10代前半です。

　　　こんないたいけな子供たちを性のオモチャにするなんて！

　　　これは明らかに日本の児童ポルノ禁止法違反です。

　　　胸がむかついてしかたありません。

ボス：で、遠藤には決まった相手がいるのか？

　　　それとも、いろんな女を取っかえ引っかえしているのか？

ボブ：今の段階ではYAYOIという少女としかチャットしていません。

ボス：何才だ？

ボブ：自称18才ですが、実際のところ17才なのか20才なのかビミョウです。

ボス：で、猥褻なことをしているんだな？

ボブ：それも、現段階では何ともビミョウで…。

ボス：このおたんこなす。何だよ、ビミョウビミョウって。

　　　だからバカボンて言われるんだ。

　　　ちゃんとした捜査をしろよ。いいか、捜査の基本てのはだな、

　　　ええい、まだるっこしい！この際だ、でっち上げでもいい！

　　　全ての責任は俺がとる。　　　

　　　遠藤に権力の恐ろしさをまざまざと見せつけてやる。

　　　すぐさまマハルを摘発だ！

　　　何が何でも遠藤小吉をしょっぴくんだ！！！

ボブ：はい～。


バタバタと部屋を出ていくボブ。


暗転