その時、鼻が痛く感じられ心も大変気持ちよくなり、更に文政は
“少時眼華耳熱、脈脹筋舒<シバラクアリテ メ ガガヤキ ミミ アツキ ミャクチョウ”
と、身も心の高揚していきます。目も耳もさらに体を通っているの血管迄もが浮きあがるほど昂奮します。それを、次のように解説しております。
「文政ノ心ソノアリガタク、メデタキコト アイガタク ミカタク タットビ オモンズベキコトニ オモヘリ」とあります。初めての経験だったのでしょうか、それとも、十娘の体が素晴らしかったのでしょうか、それこそ天女との交わりです。人の世では味わう事が出来ないような絶好感だったのでしょうか、遊仙窟の作者はその気持ちを、これでもかこれでもかと云わんがかりに細密に巧みな言葉で以って書き表しているのです。この場面を、私が、今、書いているように小間切れで書き表して行きますと、その本来の持つ誠に淫乱な二人の行為が、なんだかごく普通の何でもない書物を読んでいるようにしか思われないのではと思いますがどうでしょうかね。字の持つ不思議さが感じられる名著だと思うのです・・・・
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