夜になると冷たい風が吹いている。遠くから鈴虫が鳴いているのが聞こえてきた。鈴虫の鳴き声が夏の終わりを告げているかのように寂しく聞こえた。夏が終わるかと思うとせつなくなる。
夜の空を真ん丸い月が照らしていた。
近くにある銭湯から帰っているヒロシとリョウコは、肩を並べて歩いていた。ヒロシはタオルを頭に乗せていた。
リョウコと付き合ってもう長い。かれこれ三年くらい経った。お互い結婚を意識する歳な . . . 本文を読む
ミーンミーン蝉が鳴いている。頭の中でこだました。どうも最近蝉の声がとれない。まるで、頭の中に一匹いるみたいに鮮明に聞こえてくる。
毎日毎日嫌になるほど働いている。一応ホテルのコックをしている。料理が好きな訳でもないが、働く口が無く仕方なくしている。
最近、お客が多い。夏はビアガーデンと言って、ビールを飲む為だけの広場が設置してある。人が、どこから湧いて出たのかと思うほど多い。家のゴキブリ以上 . . . 本文を読む
ワッショイ、ワッショイ。威勢のいいかけ声が響いた。今日は一年に一度の夏祭り。
この日の為に炭坑節の踊る練習を一生懸命していた。不器用だったタケシは振り付けを憶えるのに三ヶ月くらいかかった。町内で一番やんちゃなタケシだったが、隣町のカオルが来るということもあり張り切っていた。
カオルは、今年高校三年生。ハッピ姿が似合っていて、粋な感じがする。祭りではいつも太鼓を叩いていた。その姿を見て、タケシ . . . 本文を読む
今日は、一年に一度の花火大会。ヒトミと出会ったのも花火大会の日だった。
その時、浴衣姿で、彼女は友達と一緒だった。俺は、友達とはぐれて探しているところだった。花火が打ちあがる頃、彼女とぶつかった。彼女は綿菓子を食べていて、綿菓子が通路に落ちた。
「ちょっと、何するの?」ヒトミよりも先に隣にいた友達が、うるさい口調で言った。俺は素直にごめんと謝った。
「ごめんで済むなら警察はいらないわ。」尖 . . . 本文を読む