恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

12.赤い傘

2005年07月14日 | ベストストーリー
 夏の前には必ず雷がなり、大雨が降る。
 照りつける太陽が、黒い雲で覆いかぶさる。
 ワシワシ鳴いていた蝉が急に鳴き止み、シーンと音が無くなる。まるで、世の中の音という音が消えてしまったかのように静かになる。
 雲の向こうから雨がポツリポツリと少しづつ降ってきて、いきなりザーと本格的に降り出す。夏に入る前には必ずある一時の時間。雨を見ると憂鬱になる私達。
 彼女と出会ったのも雨の日だった。私は傘を持たずに立ち往生していた。
 「いつ止むのかな」私は古びたバス停の小屋みたいな場所で雨宿りをしていた。小屋はくもの巣や、所々穴が開いていた。
 何気なく雨を見ていると、雨の中、赤い傘をさした彼女がやってきた。鼻歌を歌いながら、少し踊っているようにも見えた。彼女の周りには雨があたってなかった様な、雨自体がよけているような気がした。綺麗な歌声だった。彼女は静かにバス停に入ってきた。
 「ひどい雨ですね」彼女は、歌を途中で止め、傘をたたみ話しかけてきた。よく見ると、綺麗な女の人だった。服も赤色のワンピースだった。よく似合っていた。
 「そうですね。止めばいいですね」少し照れてしまい苦笑いを浮かべた。
 「ホント。仕事の帰りか何かですか?」彼女は、私が持っているバックを見て言った。
 「いいえ、実家に帰ってまして、これから自分の家に帰るところです」
 「そうですか」彼女は黙った。私も黙った。沈黙が少し続いた後、思い出したようにさっきの鼻歌の続きを歌っていた。
 「いい歌ですね。何って言う歌ですか?」私が聞くと、彼女は困ったような顔をして、母がいつも歌ってくれていた歌なのと答えた。
 また、少しの沈黙が続いた後、雨が止んだ。さっきまでの雨が嘘のようにピタリと止んだ。
 黒い雲が無くなり、蝉の鳴き声も遠くから聞こえてきた。
 きれいな青空も見えて来た。太陽の光に気を取られていると、彼女はいなくなっていた。
 今、いたはずの彼女は跡形もなく消えていた。
 小屋を出て周りを見渡したが、誰もいなかった。
 あったのは照りつける太陽と、蝉の鳴き声、後、古びたバス停だけだった。
 不思議でしょうがなかった。蜃気楼みたいな、夢なのか。
 私は分からなくなり、小屋の中を見ると、赤い傘だけが残っていた。
  
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2 コメント

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Birthday Eveにふさわしいお話! (papie)
2005-07-15 09:52:29
Happy Birthday!(その件は掲示板参照!)

このお話は、25歳になる前夜(?)に書かれた、貴方の24歳時代に別れを告げる際の後ろ髪を引かれるような、ちょっぴり哀しいお話.....。もしかすると、ここに登場した彼女は、貴方の過去の様々な出会い、人々、出来事、そして、…せつなかった恋の数々そのものなのではないでしょうか?!どう?深いでしょ?!!

さあ!25歳になったら、どんな変化があらわれるのかな?…またまた 楽しみにしてま~す!!
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確かにその通りですね。 (キーボーです。)
2005-07-16 14:11:33
 パピエさんもナカナカ深いですね。25歳になりましたねー。いい大人になっていっているのかな。これからもいい歳のとりかたをして行きたいですよね。様々な出会い、別れの中で自分らしい生き方を見つけていきたいと思います。
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