恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

02.再会 ~夏~

2007年03月22日 | 再会
 ジメジメとした梅雨が終わると、入道雲がモクモクと上がり、蝉の声が聞こえてくる夏になるのだった。
 白の半そでにチェックのミニスカートの学生服を着ているよりこは、学校の帰り、コンビニによってファッション雑誌を立ち読みした。木村タクヤが表紙でかっこよかったので目についたからだ。
 大人の恋愛について書かれてあった。
 私にはよくわからないと雑誌を置き、一通りドリンクまで一周して、何も買わずにコンビニを出た。
 優しそうな顔をした店員さんが「ありがとうございました。またお越しくださいませ。」と言っていた。
 それから、家へと帰る為に駅へと向かった。
 駅の前に大きめの公園があるのだけど、クラシックギターを弾きながら、下手な歌を歌っている青年がいた。よほど世の中に不満があるのだろう。
 よりこが前で立ち止まって聞いていると、青年が話しかけてきた。
 「君何年生?」よりこは、見ず知らずの男の人に話しかけられてドキッとした。
 「今、高1。」
 「そうなんだ。俺今から、君の為に歌うから聞いてくれないかな。」
 「別にいいけど。」
 「よかった。決まりだね。」青年はギターのコードを合わせると、笑みを浮かべて、歌いだした。
 ロックでもあり、バラードのようでもあり、ジャズのようでもあり、ミックスされていて、何がなんだか分からなかったが、青年の一生懸命さに好意を抱いた。
 声が公園で響いた。青年の歌声でもっと暑苦しくなったような気がした。
 それから、学校の帰り青年の歌を聞くのが日課になった。
 青年の前でよりこが座って聞いていると「ところで名前なんていうの?」と一通りギターを弾き終えて聞いた。
 「よりこ。あなたはなんていうの?」
 「鉄平っていうんだ。」周りは薄暗く、子供が母親に抱かれて帰っているのが見えた。蝉の声もだんだん聞こえなくなり、どこかの家からは味噌汁のような温かい匂いが漂ってきている。
 「遅くなったから家まで送っていくよ。」鉄平は、ギターをケースにしまって、肩からからった。
 よりこもスカートを掃って、立ち上がった。
 電車で一駅の所にある家は、歩いて20分ほどだった。今日は、月が綺麗で歩いて帰るには、ぴったりの夜だ。
 鉄平は、将来歌手になりたいと熱く語っていた。
 今、今世紀最大の歌を書いていると呟いた。
 今度よりこにも聞かせてやるからなと鉄平は楽しそうに笑った。目元に出来るしわを見てよりこも笑った。
 歌の話だけで、あっという間に家へとついた。
 「ありがとう。じゃここでいいよ。」
 「よりこ。今、彼氏とかいるの?」
 「別にいないけど。」
 「それじゃ。俺と付き合わない?」一時静かな沈黙があり、大きな車が側を通っていった。車のライトでよりこの困った顔が見えた。
 「そういう事よく分からないけど、鉄平がいいならいいよ。」
 「やった。超うれしい。それじゃ公園で、いつもの時間に。」
 「分かった。」鉄平の姿が見えなくなるまで手を振った。学校でよく友達が彼氏が出来たと言っているが、私も明日からそんな話しをするのだろうかと思った。
 「おはようございます。」校門の前に担任の先生がいたので挨拶をした。その後ろに若い知らない先生がいた。
 「おはよう。」好青年風な若い先生は、スラッとした体格でどことなくジャニーズのような顔をしていた。
 「よりこ。スカート短くないか。」担任の先生が聞いた。
 「別に短くないですよ。何なら、覗いてみます?」
 「何を馬鹿な事を。」
 「冗談ですって。」若い先生がにこやかに笑っていた。そんなやり取りをして、先生達は次の生徒を待っていた。
 学校も終わり、いつもの時間、いつもの公園で鉄平の歌を聞いた。初めて聞いた時よりもうまくなっているのは気のせいだろうか。
 「明日、花火大会が近くであるから行かないか。」よりこが一緒に歌を口ずさんでいると鉄平が聞いてきた。
 「別にいいよ。」
 「やった。公園で待っているから。」
 「分かった。」
 花火大会は、親に連れて行かれたきり、行っていない。まさか彼氏と一緒に行く日が来るとは夢にも思っていなかった。
 母親に言ったらタンスから浴衣を出してくれた。
 父親には、男と行くと死んでも言えないが、言ったら多分、親の縁を切られるだろう。そこまで頑固な父親だった。
 私が公園につくと、鉄平はブランコに乗って待っていた。
 「よりこ。浴衣似合うじゃん。」鉄平がブランコから飛び降りて、よりこの姿を上から下まで見て言った。
 「恥ずかしいけど、母親が出してくれたんだ。」
 「そうか。俺ももう少しマシな格好してくればよかったな。」
 「鉄平もその服かっこいいよ。」
 「そうかな。」黒のジーンズにジャラジャラとアクセサリーがついていた。
 花火大会の場所につくと、人が多くてぶつかりそうになった。
 屋台がズラッと立ち並んで、よりこと鉄平がつく頃には、花火が上がって始まっていた。
 「わぁー綺麗。」よりこが指を指して叫んだ。円を描いて、すぐ消える花火は、私達の恋の行方を表しているかのようだった。
 「何か買うか?」鉄平が屋台のほうを差して聞いた。
 「それじゃ。かき氷がいい。」二人は、かき氷の店に入ると、ゴツイおじさんが彼女の為にイチゴのソースを多めに入れてくれた。
 花火がよく見える所まで、人を押しのけて進んだ。
 少し山になっている草むらの所で座って眺めることにした。
 ドン。パー。と花火が上がった。
 小さい花火から、大きい花火まで、美しい光が輝いていた。
 花火を見ながら、鉄平はよりこの横顔を見ていた。カキ氷を持つ手に力が入った。手と手が触れ、それを合図に二人は美しい花火のようなキスをした。
 カキ氷が溶けるようなキスだった。
 その後に、いい歌詞が浮んだと鉄平が呟いた。
 そんな暑い夏が終わると、鈴虫が鳴く、せつない秋の空へと移り変わって行くのだった。
 
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3 コメント

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こんにちは! (無料相性占いブログパーツ)
2007-04-24 11:13:49
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泣ける・・・ (もゆ)
2007-04-26 17:22:50
久々にお邪魔しました。読むたびに、UPのたびに腕上げてますね、師匠!!
泣けてきちゃうよ・・・すごい感性、表現力だよね。
情景わかりまくり、目の前に鮮明に表れるよ。
キスの甘さまで味わえた逸品でした・・・。
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師匠? (キーボー)
2007-04-27 04:54:37
久々ですね。待っていましたよ~☆物語がお決まりになっているようで、自分ではまだまだです。浅はかですみません。

もう少しうまく書きたいです。

う~ん。

人生のように文章も難しいですね。
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