ジメジメとした梅雨が終わると、入道雲がモクモクと上がり、蝉の声が聞こえてくる夏になるのだった。
白の半そでにチェックのミニスカートの学生服を着ているよりこは、学校の帰り、コンビニによってファッション雑誌を立ち読みした。木村タクヤが表紙でかっこよかったので目についたからだ。
大人の恋愛について書かれてあった。
私にはよくわからないと雑誌を置き、一通りドリンクまで一周して、何も買わずにコンビニを出た。
優しそうな顔をした店員さんが「ありがとうございました。またお越しくださいませ。」と言っていた。
それから、家へと帰る為に駅へと向かった。
駅の前に大きめの公園があるのだけど、クラシックギターを弾きながら、下手な歌を歌っている青年がいた。よほど世の中に不満があるのだろう。
よりこが前で立ち止まって聞いていると、青年が話しかけてきた。
「君何年生?」よりこは、見ず知らずの男の人に話しかけられてドキッとした。
「今、高1。」
「そうなんだ。俺今から、君の為に歌うから聞いてくれないかな。」
「別にいいけど。」
「よかった。決まりだね。」青年はギターのコードを合わせると、笑みを浮かべて、歌いだした。
ロックでもあり、バラードのようでもあり、ジャズのようでもあり、ミックスされていて、何がなんだか分からなかったが、青年の一生懸命さに好意を抱いた。
声が公園で響いた。青年の歌声でもっと暑苦しくなったような気がした。
それから、学校の帰り青年の歌を聞くのが日課になった。
青年の前でよりこが座って聞いていると「ところで名前なんていうの?」と一通りギターを弾き終えて聞いた。
「よりこ。あなたはなんていうの?」
「鉄平っていうんだ。」周りは薄暗く、子供が母親に抱かれて帰っているのが見えた。蝉の声もだんだん聞こえなくなり、どこかの家からは味噌汁のような温かい匂いが漂ってきている。
「遅くなったから家まで送っていくよ。」鉄平は、ギターをケースにしまって、肩からからった。
よりこもスカートを掃って、立ち上がった。
電車で一駅の所にある家は、歩いて20分ほどだった。今日は、月が綺麗で歩いて帰るには、ぴったりの夜だ。
鉄平は、将来歌手になりたいと熱く語っていた。
今、今世紀最大の歌を書いていると呟いた。
今度よりこにも聞かせてやるからなと鉄平は楽しそうに笑った。目元に出来るしわを見てよりこも笑った。
歌の話だけで、あっという間に家へとついた。
「ありがとう。じゃここでいいよ。」
「よりこ。今、彼氏とかいるの?」
「別にいないけど。」
「それじゃ。俺と付き合わない?」一時静かな沈黙があり、大きな車が側を通っていった。車のライトでよりこの困った顔が見えた。
「そういう事よく分からないけど、鉄平がいいならいいよ。」
「やった。超うれしい。それじゃ公園で、いつもの時間に。」
「分かった。」鉄平の姿が見えなくなるまで手を振った。学校でよく友達が彼氏が出来たと言っているが、私も明日からそんな話しをするのだろうかと思った。
「おはようございます。」校門の前に担任の先生がいたので挨拶をした。その後ろに若い知らない先生がいた。
「おはよう。」好青年風な若い先生は、スラッとした体格でどことなくジャニーズのような顔をしていた。
「よりこ。スカート短くないか。」担任の先生が聞いた。
「別に短くないですよ。何なら、覗いてみます?」
「何を馬鹿な事を。」
「冗談ですって。」若い先生がにこやかに笑っていた。そんなやり取りをして、先生達は次の生徒を待っていた。
学校も終わり、いつもの時間、いつもの公園で鉄平の歌を聞いた。初めて聞いた時よりもうまくなっているのは気のせいだろうか。
「明日、花火大会が近くであるから行かないか。」よりこが一緒に歌を口ずさんでいると鉄平が聞いてきた。
「別にいいよ。」
「やった。公園で待っているから。」
「分かった。」
花火大会は、親に連れて行かれたきり、行っていない。まさか彼氏と一緒に行く日が来るとは夢にも思っていなかった。
母親に言ったらタンスから浴衣を出してくれた。
父親には、男と行くと死んでも言えないが、言ったら多分、親の縁を切られるだろう。そこまで頑固な父親だった。
私が公園につくと、鉄平はブランコに乗って待っていた。
「よりこ。浴衣似合うじゃん。」鉄平がブランコから飛び降りて、よりこの姿を上から下まで見て言った。
「恥ずかしいけど、母親が出してくれたんだ。」
「そうか。俺ももう少しマシな格好してくればよかったな。」
「鉄平もその服かっこいいよ。」
「そうかな。」黒のジーンズにジャラジャラとアクセサリーがついていた。
花火大会の場所につくと、人が多くてぶつかりそうになった。
屋台がズラッと立ち並んで、よりこと鉄平がつく頃には、花火が上がって始まっていた。
「わぁー綺麗。」よりこが指を指して叫んだ。円を描いて、すぐ消える花火は、私達の恋の行方を表しているかのようだった。
「何か買うか?」鉄平が屋台のほうを差して聞いた。
「それじゃ。かき氷がいい。」二人は、かき氷の店に入ると、ゴツイおじさんが彼女の為にイチゴのソースを多めに入れてくれた。
花火がよく見える所まで、人を押しのけて進んだ。
少し山になっている草むらの所で座って眺めることにした。
ドン。パー。と花火が上がった。
小さい花火から、大きい花火まで、美しい光が輝いていた。
花火を見ながら、鉄平はよりこの横顔を見ていた。カキ氷を持つ手に力が入った。手と手が触れ、それを合図に二人は美しい花火のようなキスをした。
カキ氷が溶けるようなキスだった。
その後に、いい歌詞が浮んだと鉄平が呟いた。
そんな暑い夏が終わると、鈴虫が鳴く、せつない秋の空へと移り変わって行くのだった。
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白の半そでにチェックのミニスカートの学生服を着ているよりこは、学校の帰り、コンビニによってファッション雑誌を立ち読みした。木村タクヤが表紙でかっこよかったので目についたからだ。
大人の恋愛について書かれてあった。
私にはよくわからないと雑誌を置き、一通りドリンクまで一周して、何も買わずにコンビニを出た。
優しそうな顔をした店員さんが「ありがとうございました。またお越しくださいませ。」と言っていた。
それから、家へと帰る為に駅へと向かった。
駅の前に大きめの公園があるのだけど、クラシックギターを弾きながら、下手な歌を歌っている青年がいた。よほど世の中に不満があるのだろう。
よりこが前で立ち止まって聞いていると、青年が話しかけてきた。
「君何年生?」よりこは、見ず知らずの男の人に話しかけられてドキッとした。
「今、高1。」
「そうなんだ。俺今から、君の為に歌うから聞いてくれないかな。」
「別にいいけど。」
「よかった。決まりだね。」青年はギターのコードを合わせると、笑みを浮かべて、歌いだした。
ロックでもあり、バラードのようでもあり、ジャズのようでもあり、ミックスされていて、何がなんだか分からなかったが、青年の一生懸命さに好意を抱いた。
声が公園で響いた。青年の歌声でもっと暑苦しくなったような気がした。
それから、学校の帰り青年の歌を聞くのが日課になった。
青年の前でよりこが座って聞いていると「ところで名前なんていうの?」と一通りギターを弾き終えて聞いた。
「よりこ。あなたはなんていうの?」
「鉄平っていうんだ。」周りは薄暗く、子供が母親に抱かれて帰っているのが見えた。蝉の声もだんだん聞こえなくなり、どこかの家からは味噌汁のような温かい匂いが漂ってきている。
「遅くなったから家まで送っていくよ。」鉄平は、ギターをケースにしまって、肩からからった。
よりこもスカートを掃って、立ち上がった。
電車で一駅の所にある家は、歩いて20分ほどだった。今日は、月が綺麗で歩いて帰るには、ぴったりの夜だ。
鉄平は、将来歌手になりたいと熱く語っていた。
今、今世紀最大の歌を書いていると呟いた。
今度よりこにも聞かせてやるからなと鉄平は楽しそうに笑った。目元に出来るしわを見てよりこも笑った。
歌の話だけで、あっという間に家へとついた。
「ありがとう。じゃここでいいよ。」
「よりこ。今、彼氏とかいるの?」
「別にいないけど。」
「それじゃ。俺と付き合わない?」一時静かな沈黙があり、大きな車が側を通っていった。車のライトでよりこの困った顔が見えた。
「そういう事よく分からないけど、鉄平がいいならいいよ。」
「やった。超うれしい。それじゃ公園で、いつもの時間に。」
「分かった。」鉄平の姿が見えなくなるまで手を振った。学校でよく友達が彼氏が出来たと言っているが、私も明日からそんな話しをするのだろうかと思った。
「おはようございます。」校門の前に担任の先生がいたので挨拶をした。その後ろに若い知らない先生がいた。
「おはよう。」好青年風な若い先生は、スラッとした体格でどことなくジャニーズのような顔をしていた。
「よりこ。スカート短くないか。」担任の先生が聞いた。
「別に短くないですよ。何なら、覗いてみます?」
「何を馬鹿な事を。」
「冗談ですって。」若い先生がにこやかに笑っていた。そんなやり取りをして、先生達は次の生徒を待っていた。
学校も終わり、いつもの時間、いつもの公園で鉄平の歌を聞いた。初めて聞いた時よりもうまくなっているのは気のせいだろうか。
「明日、花火大会が近くであるから行かないか。」よりこが一緒に歌を口ずさんでいると鉄平が聞いてきた。
「別にいいよ。」
「やった。公園で待っているから。」
「分かった。」
花火大会は、親に連れて行かれたきり、行っていない。まさか彼氏と一緒に行く日が来るとは夢にも思っていなかった。
母親に言ったらタンスから浴衣を出してくれた。
父親には、男と行くと死んでも言えないが、言ったら多分、親の縁を切られるだろう。そこまで頑固な父親だった。
私が公園につくと、鉄平はブランコに乗って待っていた。
「よりこ。浴衣似合うじゃん。」鉄平がブランコから飛び降りて、よりこの姿を上から下まで見て言った。
「恥ずかしいけど、母親が出してくれたんだ。」
「そうか。俺ももう少しマシな格好してくればよかったな。」
「鉄平もその服かっこいいよ。」
「そうかな。」黒のジーンズにジャラジャラとアクセサリーがついていた。
花火大会の場所につくと、人が多くてぶつかりそうになった。
屋台がズラッと立ち並んで、よりこと鉄平がつく頃には、花火が上がって始まっていた。
「わぁー綺麗。」よりこが指を指して叫んだ。円を描いて、すぐ消える花火は、私達の恋の行方を表しているかのようだった。
「何か買うか?」鉄平が屋台のほうを差して聞いた。
「それじゃ。かき氷がいい。」二人は、かき氷の店に入ると、ゴツイおじさんが彼女の為にイチゴのソースを多めに入れてくれた。
花火がよく見える所まで、人を押しのけて進んだ。
少し山になっている草むらの所で座って眺めることにした。
ドン。パー。と花火が上がった。
小さい花火から、大きい花火まで、美しい光が輝いていた。
花火を見ながら、鉄平はよりこの横顔を見ていた。カキ氷を持つ手に力が入った。手と手が触れ、それを合図に二人は美しい花火のようなキスをした。
カキ氷が溶けるようなキスだった。
その後に、いい歌詞が浮んだと鉄平が呟いた。
そんな暑い夏が終わると、鈴虫が鳴く、せつない秋の空へと移り変わって行くのだった。
気になる相手や芸能人との相性を占ってみませんか?
http://free-material.net/index.htm
泣けてきちゃうよ・・・すごい感性、表現力だよね。
情景わかりまくり、目の前に鮮明に表れるよ。
キスの甘さまで味わえた逸品でした・・・。
もう少しうまく書きたいです。
う~ん。
人生のように文章も難しいですね。