恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

2.タンポポ

2005年10月10日 | 家族
 私は、おばぁちゃんが大好きだった。
 家に入ると線香の鼻につんとした香りが広がっていて、おばぁちゃんは裁縫箱の入れ物を枕にして寝ていた。
 その時必ず名作劇場のアニメを見ていた。
 私が「こんばんわ」と言うとおばぁちゃんは太った体を起こして「来たかい」と振り向いて言った。
 いつもご飯を食べて帰るのだが、父親のふざけた冗談に笑っていた。笑顔がかわいいおばぁちゃんだった。太っている事もあり、笑転げるとダルマが転んだように起き上がるのが大変そうだった。
 散歩におばぁちゃんと出歩いた時の事、道にタンポポの花が咲いていた。おばぁちゃんが無造作に一つちぎって息を吹きかけると、白い綿が風に飛ばされてどこかに飛んで行った。
 「せっかく咲いているのに何で飛ばすの?」と私は疑問に思って聞いた事がある。
 「タンポポは、種を飛ばすもんだ。」と独り言のように呟いていた。
 「そうか」と子供心に納得をした。
 それから、何日か経っておばぁちゃんが入院した。癌が体中に広がっていて、そのうちかえらぬ人になってしまった。
 私は悲しかった。大好きだったおばぁちゃんがまさかこの世の中から急にいなくなるとは思いもしなかった。
 私は大人になった今でも道に咲いているタンポポを見ると一つちぎって息を吹きかける。吹きかけるとおばぁちゃんの顔を思い出すからだ。
 息をかけると白い綿が秋の風に飛ばされてやがて見えなくなっていった。 
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2 コメント

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言葉をいつくしんでいますね (ぱぷ子)
2005-10-12 17:52:06
今日これを読ませてもらって感じたのですが、あなたは言葉のひとつひとつをものすごく大切にしていますね。いつくしんでいる、ともいえる。「いつくむ」というのをPCで変換すると「慈しむ」と「愛しむ」の両方出てきます。両方当てはまります、あなたの作品を読んでいると。わたしはこれまで言葉を大切にしないで、ただ人にぶつけてきたかも知れない、と、反省させられたひとときでした。

心温まる、おばあちゃんとの思い出が、匂いまで伝わってくる作品に、拍手です。
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慈しむ (キーボーです。)
2005-10-13 16:07:51
 また難しい言葉を教えてくださってありがとうございます。

 言葉って本当に大事ですよね。人をけなす事も出来るし、人を元気づける事も出来る。

 私は、人を元気にさせるような言葉をみんなに言い続けて生きたいと思います。

 人の一生を左右する言葉も中にはあるのです。私は、人生における三つの気という言葉を聞いて感動しました。

 人生には三つの気が大事らしいのです。それは、「元気」「勇気」「陽気」だそうです。それでも駄目な時は、時間という時が解決していくらしいです。

 私はこの言葉を聞いて元気が湧いて出ました。皆さんもぜひ言葉を大事にして下さい。
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