恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

4.電車の中で

2014年03月05日 | 家族
 営業先で、母親から父親が危篤と電話が入り、会社を早退し、近くの駅から電車に飛び乗った。
 今日は30年ぶりの雪が降ってて、3センチほど線路の上にも積もっている。
 電車の終着駅まで約2時間くらいかと時計を見る。
 一時走っていると、キキッーキキッーと電車のブレーキ音が響いた。
 「雪の為、急停車いたします。」電車のアナウンスがなり、ガクンと電車が止まった。
 「まったく。」隣の学生服を来た男が舌打ちをして、ポケットからウォークマンを取り出して、聞き始めた。イヤホンから音が漏れてきた。
 「えー止まるの?超最悪。」ドア付近に立っている紺色のブレザーの制服を来た女子高生が叫んだ。
 「騒ぐでない。すぐ動く。」女子高生の前に座っている老人が呟く。その隣に座っている幼稚園児が「一休み一休み。」と言って、電車のシートにゴロンと寝ころんだ。孫の様だ。
 私の隣で座っている中年の男性が「一休さんかよ。」と小さな声で突っ込みを入れた。
 電車の中から外を見ると、田んぼが雪で埋め尽くされて、雪の世界に迷い込んだようだった。その上から、雪が絶え間なく降り注いでいる。
 2月に入ってこんなに雪が降る事があるのだろうか。
 子供の頃、確かこんな雪が降った事があった。
 太った父親が屋根に上って、スコップで雪をおろし、姉が雪を固め、鎌倉を作り、親子三人で写真を撮った。あの頃は、家族四人仲良く、いつも側にいた。喧嘩して、家を出て10年ほど経っただろうか。こんな形で実家に帰るとは思わなかった。
 「雪を除雪する為20分ほど止まります。」また、鼻にかかったアナウンスが流れた。
 「マジサイアク。」女子高生がメールをしながら呟く。外を見ると、田んぼの道の所に地蔵がいて、赤い半纏を来たおじさんがいた。吹雪の日に何をしているのだろう。地蔵に団子でも置いているのか。どことなく体系が父親に似ている。
 「親父大丈夫かな。」涙が流れてきた。早く父親に会いたい。
 もう一度地蔵の所を見ると、赤い半纏のおじさんがいなくなっていた。風が強くなり、雪も舞ってて見えなくなった。親父の幻なのか。そんな事を考えていると、姉からメールが入ってきた。
 「父親はトウゲを超えたからもう大丈夫。ゆっくり帰って来ていいよ。」まったく、人騒がせな父親だ。帰ったら、どんな話をしよう。
 止まっていた電車がゆっくりと動き出した。
 「ご乗車の皆様大変お待たせいたしました。」もう一度、田んぼの所を見ると、赤い半纏を着ていたのは地蔵だった。

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2 コメント

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赤い半纏 (niko)
2014-03-05 16:43:47
まるで私がその電車に乗っているようでした。
短い物語なのに沢山愛があふれてて…ほろっ…。

待っていました…せんせい!
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nikoさん。 (キーボー)
2014-03-05 20:24:06
 せんせいって、照れますね。
 何の先生でしょう(笑)
 俺としては体育の先生がいいですが・・・って、下ネタかよっということで、いつもの電車のようにいろんな人がいる空間って、物語がたくさんあるんですよね。
 そんな身近な物語をたくさん書きたいけど、思いつきそうで思いつかないですね。
 スランプかも。ドクタースランプあられちゃんじゃないよ(笑)
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