７．梅の花

　老人ホームの小さな窓から見える紅色の梅の花にめじろが二羽とまっている。
　夫婦だろうか。それとも恋人同士で、喧嘩でもしているのだろうか。なにやら首を傾げて会話をしている。
　片方のめじろがもう片方に口ばしでつついているが、それに答えられなくて逃げ回る女めじろ。
　人間で言うなら、ふられてでもいるのだろうか。
　それでもめげずにチョッカイを出している。私もそんな頃があったのだ。
　梅の花を見るたびに思い出す。
　一緒に見ていたあの人の笑顔がたまらなく愛しい。
　あの人は、どこへ行ってしまったのだろうか。ホームを出たきり、帰って来なくなった。
　何度も訪れる心地よい春を感じながら、あの人の姿を待ち続けていた。
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