監督 人見剛史
仕事で年に数回天王寺動物園に行きます
当然いろんな動物を目の当たりにするんですが、正直、動物に付けられた名前までは覚えておりませんでした
ゾウは単にゾウと言う認識しかなかった訳ですが、この作品に出てくる春子さんも名前を意識した事は無かった
しかし確実に何度も春子さんを見ていた訳であります
そう考えると何とも感慨深い思いで見ておりました
元はテレビ大阪で放送された番組なんですね
知らなかったなー
飼育員と春子さんとの絆を追ったドキュメンタリーですが、互いの信頼関係で成り立つ動物と人間の姿が動物園の舞台裏にあるんですね
そんな部分が大半を占める展開ならよくあるドキュメンタリーだが…
しかしこの作品は老いによる老化でゾウがこの世を去って行く姿を追っていきます
しかも映画の上映時間の半分以上が春子さんが倒れて旅立つまでの半日を描いています
ゾウは倒れると重みで肺を圧迫されて死んでしまうそうで、何とか飼育員さんたちがロープを使ったり、足場を組んで真上から吊り上げようとしたりと、あらゆる手段で立たそうとします
そして春子さんも必死で脚をバタつかせて立とうとする
そんな姿についつい力が入ってしまう緊迫した現場…カメラはずっと回し続け観客を生き物の生と死の現場に立ち会わせてくれます
春子さんの耳元で声をかけながら何とか助けようとする飼育員さんの姿はまるで我々人間が病院などでお医者さんに命を助けられる姿と同じです
優しく声をかけて春子さんを励ます飼育員
目を見開き踏ん張る春子さん
もはや人間と動物の関係ではなく、生死の境目に立ち会う生き物同士の壮絶な姿に力が入ります
飼育員は長生きするゾウの死に目にはなかなか会えないそうですが、最期までみとれてお別れ出来たのはお互いに幸せな事だったかも知れないですね
生前お客さんの居る運動場に毎朝出る時は飼育員から「さぁ仕事やでー、今日も頼むでー」と声をかけれてた春子さん
まさに64年間もその仕事をまっとうして大往生した春子さんに感謝の拍手を送りたい気分にさえなりました
この映画の単館公開時は家族連れなども多く満員の盛況だったようだが、この日も小学生の男の子が来ていたが、この映画にどんな思いで見て居たんでしょうか?
春子さんの亡骸をモザイクもなくカメラは写してるし、絶命して開いたままの目などもアップで捉えている
目を背けたくなる場面かも知れないが、動物はいつかは死を迎える
当たり前の事かも知れないがそんな現実を正面から感じて貰う為にもこの作品は貴重な映画だと思います…久々に泣いた
またそろそろ天王寺動物園に行くと時期が来た
今までと少し違う気持ちで訪れる事でしょう
因みにエンディングロールの曲が何故かダンスミュージック風な曲なのが意味わからん
★★★★★ 2016.2.23(火) アポロシネマ スクリーン7 18:50 F-11