2021年6月15日 5:00
阪神が好調だ。開幕カードでヤクルトに3連勝して以降、大きな連敗もなく勝ち星を積み上げ、交流戦も6連勝のフィニッシュで11勝7敗とオリックスに次ぐ2位。貯金は20となり、巨人、ヤクルトと7ゲーム差の首位独走。いよいよムードは盛り上がっている。(記録は6月13日現在)
昨季は2位とはいえ、巨人に7・5ゲーム差をつけられ、優勝を争ったとはいえないシーズンだった。それが一転しての快進撃。投打とも既存戦力の好調さがその要因だが、それ以上に、ドラフト指名された新人たちの活躍に負うところが大きい。新外国人が期待されたような働きができていないから、よけいに若手の充実ぶりが目につく。
オープン戦の活躍がブレークの呼び水に
ドラフト2位の左腕、伊藤将司は先発ローテーションを担って4勝3敗。6位指名の中野拓夢の活躍はうれしい誤算だろう。遊撃の定位置を奪い、盗塁13個はセ・リーグトップである。だが、彼らと比較しても1位入団、佐藤輝明の存在は圧倒的だ。もはや外すことのできない主力の一人になっている。
オープン戦の活躍が大きかった。6本塁打を放ち、ドラフト制後初の新人本塁打王に。当然「シーズンに入れば……」とみる冷ややかな視線もあったが、この好成績が首脳陣の迷いを振り払い、開幕からのスタメン起用につながったのは間違いない。
ここまでずっと打ち続けてきたわけではない。何試合も長打が出ない小休止は幾度もあった。だが時折見せる活躍はそれを忘れさせる強烈なインパクトがあった。
プロ1号は開幕2戦目の3月27日、神宮球場のバックスクリーンに放り込んだ。その後は打率が上がらずスタメン落ちも経験したが、4月9日、DeNA戦で横浜スタジアムの右中間場外に消える特大のアーチ。同14日には昨季の新人王、森下暢仁(広島)から本拠地1号、同27日の中日戦では昨季の沢村賞、大野雄大からも一発を放った。
大山悠輔が故障で欠場した5月2日に初めて「4番三塁」に座り、さっそく初の満塁本塁打。「タイムリーを打ってくれたらというところでホームラン。テルの魅力だね」と矢野燿大監督も絶賛。加えて、大学時代から慣れ親しんだ三塁での守備は軽快な動きで、送球にも安定感があった。チームの主将である大山を刺激するのに十分な攻守を見せた。
仰天の1試合3発、新人では長嶋茂雄以来
交流戦ではなんといっても5月28日、西武戦でみせた3本塁打が光る。二回にエース、高橋光成から13試合ぶりの11号ソロを中越えに放つと、六回には左中間へソロ本塁打。そして九回、同点とした後の2死一、三塁で、抑えのリード・ギャレットの154キロを右中間深く打ち込んだ。
新人の1試合3発は1958年の長嶋茂雄(巨人)以来で矢野監督は「いやあ、すごかった」と驚くばかり。5月の月間MVP受賞にもつながる快挙だった。勢いは衰えず、交流戦は6本塁打で新人の最多記録を更新した。相手投手はほぼ初対戦ばかりだから、その対応力の高さがわかる。
6月12日の楽天戦では、田中将大の膝元のスライダーを払うようなスイングで右翼席まで運んだ。多少体勢が崩されても打球に角度がつけばスタンドまで届くのだから恐れ入る。この飛ばす技術、感覚はやはり天性のものなのだろう。
シーズン序盤はまさに「三振か本塁打か」の印象だった。球威のある高めの真っすぐに手を出し、あるいは低めの落ちる球を追いかけて空振りが目立った。だがプロの投球にも慣れてきたか、開幕当初に比べれば明らかに進歩がみられる。
試合前練習では、担当コーチやジェリー・サンズら先輩野手と言葉を交わすシーンが目立つ。自分の状態の確認と、頭の中の整理のためか。ベンチでは、試合中に感じたこと、投手の癖や配球、自分の感覚などをメモする習慣も身につけた。野球への取り組み方はいたって真面目。周囲の声を自分のプレー向上に生かしているあたりは長いシーズンを乗り切るすべをつかみつつあるようにみえる。
16本塁打、44打点はチームトップ。序盤は1割台だった打率も2割7分4厘まで上がってきた。三振数こそ両リーグトップだが、「当てにいって内野ゴロじゃおもしろくない」(井上一樹ヘッドコーチ)と、首脳陣は意に介さない。本人も「強く振れるのが持ち味。当てにいくのは自分ではないので」と小さくまとまる気がないのは頼もしい。周りの選手の好調がルーキーにそれを許容している一面もあろう。首位を走るチームの好循環である。
(土田昌隆)
2003年の優勝記念ゴルフボール
今も大切に
当時
メチャ盛り上がって
大騒ぎと言うか
よく🍺🍺でした