ドイツのライカカメラが7月以降、同社ブランドで初となるスマートフォンを日本に投入する。スマホで最大級となる1インチの画像センサーが売りで、デジタルカメラ並みの画質だ。意外なのは、日本市場だけでの発売であること。背景にはあの中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)を巡る米中対立が絡んでいるようだ。
「ライカは1972年から日本企業と協業してきた。ミノルタ(現コニカミノルタ)、富士フイルム、パナソニックだ。そして今回、ソフトバンクと一緒に取り組むことになった」
ライカカメラのアンドレアス・カウフマン社主は、オンラインで新製品「ライツフォン ワン」を発表した。ライカがカメラ、外観、内蔵アプリなど全面的に監修した初めての同社ブランドのスマホという位置づけだ。ソフトバンクが独占販売する。
1インチの画像センサーはこれまでデジタルカメラの上位機種に使われてきた。一般的なスマホの約5倍のサイズで、多くの光を取り込むことによって被写体の背景を自然にぼかし、暗い場所にも強くなる。価格は18万7920円(税込み、以下同)だ。
ライカは、世界のカメラマーケットを日本メーカーが席巻していた72年、ミノルタと提携し、フィルムカメラ本体を同社から調達した。デジタル化が進むとパナソニックと組み、現在は同社のデジカメをベースにしたカメラを販売している。2016年には、若い世代でインスタントカメラが流行し「チェキ」で知られる富士フイルムと提携した。いずれの時代も、ライカ自身はレンズ技術に特化し、高いブランドイメージを維持することでしたたかに生き抜いてきた。
デジカメ市場が縮小し、代わりにスマホで撮影した写真をSNS(交流サイト)などに投稿するライフスタイルが浸透した今、ライカはまた新たなパートナーを選んだ。
協業するファーウェイ排除で足がかり失う
不思議なのは、グローバルなカメラメーカーなのに自社ブランドスマホを日本限定で投入することだ。
その謎を解く鍵は、発表会見では言及されなかった中国の通信機器大手、ファーウェイにありそうだ。米国から制裁を受けているこの巨大企業とライカはグローバルな協業関係にある。
16年、ファーウェイの上級機種「P9」にライカ監修のカメラレンズが搭載された。ファーウェイ側からのアプローチで実現したものとされる。
割安な価格で急成長したファーウェイにとっては、ブランドイメージの向上が課題となった。高級カメラの代名詞であるライカとの協業は、欧州などの先進国市場で評価を高める一助となる。日本の通信大手も取り扱い、18年にはNTTドコモがライカレンズ搭載の最上級機種「P20 Pro」を独占販売した。
ところが、米トランプ政権が19年5月、ファーウェイに対する事実上の禁輸措置を発動し状況は一変した。その後の機種では、米国の技術を使った半導体や米グーグル製のサービスを搭載できなくなった。
これを受けて日本市場では、ドコモやKDDI、ソフトバンクなどがファーウェイ製端末の取り扱いを相次いで終了させた。通信大手には、Gメールを使えない端末は消費者に受け入れられないとの考えが強くあったからだ。ドコモの場合、様々な設備メーカーの機器を組み合わせて高速通信規格「5G」の通信網を築けるオープン技術を米国に売り込もうとしていたことや、中国包囲網づくりで日米が緊密に連携していたことも背景にあっただろう。
英国やフランスなど欧州連合(EU)各国ではファーウェイ端末の販売が続いているが、日本市場からはほぼ排除された。結果、ライカは日本のスマホ市場への足がかりを失うかたちとなった。
「日本は他国に比べてライカファンが多く、06年に世界初の直営店を東京・銀座に開設するなど重要なマーケット」とライカは説明する。ただ、若年層はカメラを手に取らなくなっている。日本の携帯電話の普及台数は世界7位で、スマホを通じてどうアプローチするかが課題になっていた。
「19年7月にカウフマン社主と直接会い、協業がスタートした」。ソフトバンクの菅野圭吾常務執行役員は話す。どちらから声を掛けたのかは明かされなかったが、双方の思惑が一致して協業が生まれたようだ。ソフトバンクとしても、特徴のある端末を必要としていた。
MM総研(東京・港)の横田英明研究部長は通信ビジネスについて「通信品質に差がなくなり、端末もグローバルモデルが中心で差別化が難しくなっている。魅力ある商品やサービスをどう打ち出すかが重要」と話す。ソフトバンクはライカだけでなく、11月から家電の新興メーカー・バルミューダが監修したスマホも独占販売する。
通信大手はこれまで、端末を別の通信会社で使えないようにする「SIMロック」と呼ぶ枠組みを築いて乗り換えを防いできた。だが、総務省ではSIMロックを禁止すべきだという議論が進んでいる。乗り換えのハードルを下げることで、官製値下げですでに下落している通信料金を市場競争でさらに下げる政策だ。
ソフトバンクは割安なサブブランド「ワイモバイル」を立ち上げ、他社から利用者を奪ってきたという実績はある。しかし、今後は収益力を高める取り組みが欠かせない。そのためには、大容量プランが中心のメインブランドで利用客をどう増やすかが肝になる。高画質が売りのライカスマホなら、データ容量が大きい画像をSNSなどにアップする人が中心となり、大容量プランを契約する人が増えると期待できる。
シャープ端末にもライカ監修レンズ
ライカもソフトバンクもスマホメーカーではないため、設計や生産はシャープが担当している。これを機にシャープはライカと「長期的なパートナーシップ」を締結した。「ライツフォン ワン」とは別に、シャープブランドのスマホ「アクオスR6」でライカと協業。カメラ部分のみライカが監修し、13万3920円とした。この機種はソフトバンクの他、ドコモからも11万5632円で発売される予定だ。
もっとも、シャープのグローバルでの競争力には直結しない。ライカは提携に関するプレスリリースで、日本市場に限定した提携だと明記した。
ファーウェイは21年、ライカ監修レンズを搭載した新モデルを発売する予定で、両社の協業は続いている。だが、日本の通信会社が取り扱う予定は今のところ見えてこない。世界唯一の「ライカスマホ」の登場は、そんな日本市場の事情が生んだといえる。
(日経ビジネス 佐藤嘉彦)
[日経ビジネス 2021年6月22日の記事を再構成]
Huaweixライカの協業(2017年)
2020年第四四半期・・2020年10月〜12月携帯電話(ガラケーも含み)出荷ベース
2020年第4四半期、国内市場の携帯電話の合計出荷台数は、前年同期比10.6%増の1,143.2万台となりました。この増加の要因としては、アップルの出荷台数が5G対応の新機種を中心に前年同期比13.8%増の601.5万台の出荷となったほか、Android系も中間~低価格帯の製品が多く出荷されたことで前年同期比6.5%増の528.6万台となったことが挙げられます。
本四半期をベンダー別で見ると、アップルがシェア52.6%でトップ、2位は141.4万台を出荷したシャープ(シェア12.4%)、3位は80.1万台出荷の京セラ(同7.0%)、4位に78.1万台出荷のサムスン(同6.8%)、5位は73.2万台出荷のソニー(同6.4%)となりました。
スマートフォンについては、2020年第4四半期の出荷台数は1,130.1万台(前年同期比10.3%増)となりました。
また、2020年通年では、前年比5.9%増の3,363.3万台の出荷となりました。ベンダー別シェアの上位5社については、アップルが1,563.7万台(シェア46.5%)でトップ、2位は447.4万台(同13.3%)のシャープ、3位は279.4万台(同8.3%)の富士通と271.1万台(同8.1%)のサムスンがタイで並び(※)、そして5位は251.0万台(同7.5%)の京セラとなりました。アップルの出荷台数は前年比8.3%増となりました。また、シャープはAQUOS Sense3シリーズを中心に、中間価格帯での出荷が好調だったこともあり、2位を維持しました。富士通は「らくらくスマートフォン」シリーズが好調なことが貢献し、前年比5.1%増の成長となりました。また、サムスンの4位入りには、5G対応モデルのGalaxy Sシリーズの出荷が好調だったことや、多くの消費者にとって手の届きやすい価格帯の同Aシリーズなどで好調な出荷だったことが貢献しました。京セラはエルダー層向けのBASIOシリーズなどが好調で、5位にランクインしました。
スマートフォンについては、2020年通年の出荷台数は前年比5.9%増の3,302.8万台となりました。「分離プラン」の導入により多くのベンダーが出荷量を減らした2019年と比べ、2020年は5G対応モデルの出荷に加え、iPhone SEなど比較的廉価な4Gモデルが多く発売されたこともその要因と考えられます。
2021年4月モバイルOSシェア、日本はiPhoneが増加しAndroidが減少
世界的には、AndroidとiOSのシェアがほぼ横ばいで推移する状況が続いている。
Androidのシェアは7割強、iOSのシェアは3割弱といった比率で推移している。
一方、日本はiOSが7割弱、Androidが3割強といった状態で、世界シェアとは状況が逆転している。
加えて、日本ではiOSが増加してAndroidが減少するという傾向が出ており、さらにiOSの影響が強くなりつつある。
そのほか、日本ではモバイル向けのオペレーティングシステムとしてPlaystationがランクインしている点も特徴的。
Statcounter Global Statsは、世界中の200万を超えるサイトに埋め込まれたトラッキングコードから、