「エコでなくエゴ」の太陽光主力電源化は日本の自殺行為 国土破壊が進む山間部【高田純氏インタビュー前編】
2021.11.01(liverty web)
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(高田氏のYouTube「熱海土石流災害は人災 危険な山間部での太陽光発電開発」 より)
静岡県熱海市伊豆山地区で、7月3日に大規模な土石流が発生した。
その翌日、「ソーラパネル建設などで保水力を失った2系統の禿山箇所から、市街地を襲う土石流となったのではないか」とするツイッターを発信していたのが、札幌医科大学名誉教授の高田純氏だ。
本誌2021年12月号特集「グレタ教は世界転落への道」で紹介しきれなかった、高田氏のインタビューを掲載する。今回は前編。
高田 純
ソーラ開発を含む乱開発が、
熱海土石流を招いた
──熱海の土石流について、その主因を「盛り土」とし、ソーラパネルの要因を小さく考える向きもあります。この真因について、どのように分析していますか。
メガソーラ建設地に隣接する谷面が崩落し、土石流を引き起こしました(下図)。私は、「脱原発の罠」が牙を剥いたのが熱海土石流災害であり、これは事件であると見ています。
(高田氏のYouTube「熱海土石流災害は人災 危険な山間部での太陽光発電開発」 より)
グーグルアースで解析したところ、静岡県の土砂流出防備保安林に指定されている伊豆山の尾根にメガソーラが設置され、約2ヘクタール分が禿山になっていました(下図)。
(同)
また谷間には、産業廃棄物の埋め立て場がありました。尾根と谷の所有者は、同一人物であり、尾根と谷の一体化工事をするため、トラックなどの大型車両が建設道路を多数走行して地層を押し固めました(下図)。
(同)
結果、疑似的なダムが形成され、梅雨や台風で雨水が大量に溜まり、それが決壊したのです(下図)。
(同)
開発を放置した責任は重大
熱海市で起きた土石流では、少なくとも26人が亡くなっています。危険な開発業者とその開発を放置した静岡県と熱海市の責任は重大で、彼らは「加害者」だと思っています。
そもそも、伊豆山の尾根は保安林に指定されていて、勝手に削れないようになっています。にもかかわらず、静岡県の難波副知事は7月9日の記者会見で「伊豆山尾根の太陽光発電施設の山林伐採面積は1ヘクタール未満で、林地開発は伐採届けだけで認められる法になっています」と責任放棄したことに、私は驚きました。「伊豆山のソーラパネルは1ヘクタール未満なので、県は指導しなかった」という趣旨のことを述べていました。
しかし、グーグルアースを見てはっきり分かるのは、ソーラパネルを設置しているのは禿山の上半分だけですが、下手の半分も禿げ上がっています(上図参照)。いずれそこに、太陽光パネルをつくったら、それぞれの面積が1ヘクタール以下でも、合計約2ヘクタールになります。そうしたばかなことを、副知事がまともに会見で話したのです。
このように、全国の山間部で、メガソーラの乱開発が環境アセスメントや規制なしに行われています。山の尾根や斜面に無理にメガソーラを設置するので、土砂崩れや土砂流出が多発し、下手の田畑が被害を受けています。山間部での太陽光発電は、規制ではなく、「禁止すべき」だと思います。
ソーラ発電は補助電源にするべき
画像:Thiti Sukapan / Shutterstock.com
私は20代から30代初めのころ、屋外利用の薄型太陽電池を開発していました。そのためソーラ発電には詳しいのですが、山を切り拓いてソーラ発電をするのは、やりすぎです。
ソーラ発電は、例えば海上や宇宙など、電気が引けない特殊な場所では有用です。または、キャンプ場などで充電する非常用電源や補助電源であればいいのですが、最近は、主電源にしようという動きが出ています。
政界の動きを見てみると、今年5月、国会で、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする目標を明記した「改正地球温暖化対策推進法」が全会一致で可決されました。
日本式ソーラ発電を推進していた小泉進次郎前環境大臣は、ネット上では「環境破壊大臣」というあだ名を付けられていました。10月に新環境大臣に就任した山口壮氏も、「小泉氏の魂を引き継ぎ、原子力を長期的にはできるだけ低減させ、脱炭素の再生可能エネルギーを最大限導入する」と言っています。
私は科学者として、この路線に対して、徹底的に批判します。平地の少ない日本列島では、平地でソーラ発電をしても、コスト面でペイしません。結果、山地でのメガソーラ開発が多くなります。すると森林の大量伐採が行われ、地面は防水シートで覆われ、国土・環境破壊がなされていきます。
江戸時代の悪代官と悪徳商人
また、ソーラパネルは大面積パネルの据え付けのため、台風に弱いです。台風に弱い理由がもう1つあります。2011年に民主党政権が建築基準法の適用除外を行ったのです。
民主党政権は東北大震災後、全国に60基あった原子力発電所を停止し、ソーラパネルの基準を緩和して、ソーラパネル開発を進めようとしました。"ソーラパネル利権"に政治家と業者が動き出したのです。
これは真っ当な開発ではありません。江戸時代であれば、まさに利権に群がる悪代官と悪徳商人です。熱海土石流では最低26人が亡くなっていて、その旗振り役が前環境大臣でした。江戸時代なら切腹ものでしょう。(後編に続く)
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