日本きのこ学会から厚生労働大臣宛に質問状
4月14日付毎日新聞朝刊に掲載された「シイタケ出荷を停止」の記事中に事実と異なる厚生労働省の見解が示されました。このことに関して、日本きのこ学会は「質問状」を厚生労働大臣に提出いたしました。(2011年04月18日)
厚生労働大臣への質問状の提出について
『4 月14 日付毎日新聞朝刊に掲載された「シイタケ出荷を停止」の記事中に,きのこの風評被害を助長するような厚生労働省の見解が示されました.このことに関して,日本きのこ学会は下記のような「質問状」を厚生労働大臣に提出いたしました.』
記
2011 年4 月14 日
厚生労働大臣 細川 律夫 殿
質 問 状
日本きのこ学会
会長 山 中 勝 次
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます.
毎日新聞社4 月14 日付朝刊の「シイタケ出荷を停止」の記事中に,シイタケの出荷制限に関する記述と,厚生労働省によるとされるきのこの放射性物質の蓄積に関する記述がありますが,以下の2 点の質問にたいし,4 月25 日までにご回答いただきたくお願い申し上げます.
質問1
「福島県東部の16 市町村で採れた原木シイタケの出荷停止を指示した」とありますが,これらの対象地域を設定した科学的根拠を明示していただきたい.
質問2
「厚生労働省によると,キノコ類は放射性物質を蓄積しやすく,チェルノブイリ事故が起きた86 年以降,放射性物質が規準を超えた輸入食品のうち3 分の1 はキノコ類だった」とあります.しかし,チェルノブイリ事故以降,放射性物質濃度が高くなったのは,汚染土壌のミネラルを吸収するポルチーニなどの外生菌根性の野生きのこにおいてであり,野生の木材腐朽菌きのこや腐生性きのこにおいては未検出か極めて低濃度であったことが報告されています(Smith, M.L. et. al., Appllied and Environmental Microbiology, vol.59, 134-139,1993).日本の栽培きのこはすべて木材腐朽菌きのこや腐生性きのこであるのは自明です.
「放射性物質が基準を超えた輸入食品のうち3 分の1 はキノコ類だった」とありますが,チェルノブイリ事故の影響を受けたヨーロッパからの輸入きのこは,ポルチーニ類(Boletus spp.,ヤマドリタケなど),アンズタケ(Cantharellus cibarius),クロラッパタケ(Craterellus cornucopioides)などで,いずれも野生採取の外生菌根菌であり,栽培きのこは輸入されていません.本来,「基準を超えた輸入食品のうち3 分の1 は栽培きのこではなく,菌根性の野生きのこであった」とするべきでしょう.新聞にあるような厚生労働省の見解では,「すべてのきのこが放射性物質を蓄積しやすく,栽培きのこも放射性物質を蓄積しやすい」と一般の人には誤った解釈を生じさせます.このような誤解を生じる見解は,日本全国のきのこ生産者はもとより,きのこの研究にかかわる研究者にとって,看過できない重大な錯誤といえます.日本の食用きのこの大半が室内で栽培されており,栽培基材には土壌をもちいません.
厚生労働省は,新聞記事にあるように日本で屋内栽培されているきのこも放射性物質を蓄積しやすいとお考えなのでしょうか.そうであればその根拠を示していただきたいと考えます.また,「チェルノブイリ事故が起きた86 年以降,放射性物質が規準を超えた輸入食品のうち3 分の1 はキノコ類だった」という見解が誤りで,正しくは「3 分の1 は栽培きのこではなく,菌根性の野生きのこであった」と訂正した見解を報道各社に提供する用意がおありでしょうか.
上記2 つの質問について文書で回答していただきますようお願い申し上げます.
以 上
4月14日付毎日新聞朝刊に掲載された「シイタケ出荷を停止」の記事中に事実と異なる厚生労働省の見解が示されました。このことに関して、日本きのこ学会は「質問状」を厚生労働大臣に提出いたしました。(2011年04月18日)
厚生労働大臣への質問状の提出について
『4 月14 日付毎日新聞朝刊に掲載された「シイタケ出荷を停止」の記事中に,きのこの風評被害を助長するような厚生労働省の見解が示されました.このことに関して,日本きのこ学会は下記のような「質問状」を厚生労働大臣に提出いたしました.』
記
2011 年4 月14 日
厚生労働大臣 細川 律夫 殿
質 問 状
日本きのこ学会
会長 山 中 勝 次
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます.
毎日新聞社4 月14 日付朝刊の「シイタケ出荷を停止」の記事中に,シイタケの出荷制限に関する記述と,厚生労働省によるとされるきのこの放射性物質の蓄積に関する記述がありますが,以下の2 点の質問にたいし,4 月25 日までにご回答いただきたくお願い申し上げます.
質問1
「福島県東部の16 市町村で採れた原木シイタケの出荷停止を指示した」とありますが,これらの対象地域を設定した科学的根拠を明示していただきたい.
質問2
「厚生労働省によると,キノコ類は放射性物質を蓄積しやすく,チェルノブイリ事故が起きた86 年以降,放射性物質が規準を超えた輸入食品のうち3 分の1 はキノコ類だった」とあります.しかし,チェルノブイリ事故以降,放射性物質濃度が高くなったのは,汚染土壌のミネラルを吸収するポルチーニなどの外生菌根性の野生きのこにおいてであり,野生の木材腐朽菌きのこや腐生性きのこにおいては未検出か極めて低濃度であったことが報告されています(Smith, M.L. et. al., Appllied and Environmental Microbiology, vol.59, 134-139,1993).日本の栽培きのこはすべて木材腐朽菌きのこや腐生性きのこであるのは自明です.
「放射性物質が基準を超えた輸入食品のうち3 分の1 はキノコ類だった」とありますが,チェルノブイリ事故の影響を受けたヨーロッパからの輸入きのこは,ポルチーニ類(Boletus spp.,ヤマドリタケなど),アンズタケ(Cantharellus cibarius),クロラッパタケ(Craterellus cornucopioides)などで,いずれも野生採取の外生菌根菌であり,栽培きのこは輸入されていません.本来,「基準を超えた輸入食品のうち3 分の1 は栽培きのこではなく,菌根性の野生きのこであった」とするべきでしょう.新聞にあるような厚生労働省の見解では,「すべてのきのこが放射性物質を蓄積しやすく,栽培きのこも放射性物質を蓄積しやすい」と一般の人には誤った解釈を生じさせます.このような誤解を生じる見解は,日本全国のきのこ生産者はもとより,きのこの研究にかかわる研究者にとって,看過できない重大な錯誤といえます.日本の食用きのこの大半が室内で栽培されており,栽培基材には土壌をもちいません.
厚生労働省は,新聞記事にあるように日本で屋内栽培されているきのこも放射性物質を蓄積しやすいとお考えなのでしょうか.そうであればその根拠を示していただきたいと考えます.また,「チェルノブイリ事故が起きた86 年以降,放射性物質が規準を超えた輸入食品のうち3 分の1 はキノコ類だった」という見解が誤りで,正しくは「3 分の1 は栽培きのこではなく,菌根性の野生きのこであった」と訂正した見解を報道各社に提供する用意がおありでしょうか.
上記2 つの質問について文書で回答していただきますようお願い申し上げます.
以 上
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