カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

伝説の男になりそびれた

2018-05-17 | HORROR

 人前で話すのはもともと得意ではないし好きでもないが、立場上浮世の義理もあってやらなければならないことがある。それなりに回数をこなしているは間違いなくて、緊張はしているが出来なくもないという気分でいるようにしている。そうしなければ心が折れそうになるからだ。やはりやり過ごす心情を持たなければ、とても体がもたない。
 ところがそれでも大変な境遇に立たされることがあって、先日そんな感じのスピーチの場があった。いわゆる来賓あいさつである。
 式典で最初から壇上に席が設けてある。テーブルの前に、いわゆるふんどしが下がっていて、僕の名前も書いてある。当たり前だが、その後ろの席に座らなければならない。リボンも胸につけられている。僕を知らない人でも、僕はどんな人だろうと思うだろうし、僕を知っている人だって、僕がどうなってしまうのか心配に違いない。こんなところで落ち着いて座っていられるわけがない。でも順番があって、さらにしかるべき式典の手順が終わらなければ、降壇できないらしい。
 僕は来賓としては5番目に話すらしい。これも当日知ったことだ。政治家が3人と、業界の九州の会長さんが隣だ。皆さんはそれなりに落ち着いておられるように見える。場数が違うことだろうし、心臓だって違うはずだ。
 なんだか喉が渇いてくる。トイレにも行きたいような気がする。今朝より下痢がひどくなっている気分がする。壇上から降りてもトイレが遠いと思う。ここで漏らしたとき会場の人はどんな顔をするだろう。小学校の遠足の時に野グソをした同級生がいたが、成人式の時にもそのあだ名で呼ばれているのを目撃したことがある。僕の一生は間違いなくそのような漏らした男として語り継がれていくことだろう。もしかしたら死後にも語りつがれることになるかもしれない。残された家族に申し訳ない。息子たちはそのことに耐えて生きて行くことが出来るのだろうか。
 苦しい時間は長かったが、順番が来て話し出した。すぐにつっかえて、何と自分の所属する立場の団体の名前すら間違えてしまった。どうなるのか、オレ。
 という感じだったが、もう5番目の挨拶だから前の人が一通り話すべきことは話してしまわれていた。なんとなく話そうと思っていたことは、尽きてネタが無かった。もうこれは自分語りネタで行くしか無くて、子供のころの思い出から、大胆にも話すことにした。でもそれは、たぶん誰も知らないことだから、自由と言えば自由だ。
 という事でなんだか話が逆に長くなっている感じがしたので、適当に止めて〆た。終わってみると解放感があって、まだ話してもいいような気分さえする。相変わらず馬鹿な奴である。
 でももう呼んでほしくは無いな。考えてみると、式典はこれからもたぶんあると思われる。次はトイレの近い席だと、精神的に助かるんだが…。
コメント
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