ベルサイユの宮廷庭師/アラン・リックマン監督
今作品でルイ14世役をやっている人が監督も兼任している。2年前に膵臓がんで亡くなっているようだ。
ベルサイユ宮殿の庭を巡って正当なものと斬新さをどのように調和させるのかという庭師たちの葛藤と、その過程においてお互いに惹かれあい恋仲になってしまうお話。人間関係なのでそれぞれに事情があるようで、過去を清算する物語ともいえるかもしれない。
伝統を守りながら正当な美を追求する宮殿の庭師に、公募で噴水の庭の部分を女性の庭師が担うことになる。最初は自分の正統的な美学を何か馬鹿にしているのではないかと考えていたフシがあるが、同時にその斬新性が気になって仕方なかったのだろう。女性は事故で夫と娘を同時に亡くしていた。その心の傷をどうするのか、という事も筋の一つになっている。
嫉妬が絡んだ妨害などもあり、工事は難航する。ルイ14世は基本的には伝統美を愛する人である。時に崇高な会話の妙があり、OKなのかNOなのかよく分からない感じもあるが、それは僕が上流階級の出身で無い所為だろう。
男女の仲においては多少のご都合主義もあるようにも感じたが、静かながら抑えられない愛の行方を描いた佳作である。使われる音楽も美しく、もちろん庭園も美しく、リッチな作品であるかもしれない。