カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

水が無いからできる事   水深0メートルから

2024-12-17 | 映画

水深0メートルから/山下敦弘監督

 元は演劇の映画化。脚本家が高校生の時の脚本が、もとになっているという。なんで舞台が徳島なのかな、と思ったが、この演劇が徳島の演劇部で最初上演されたものなんだそうだ。
  体育の補習のために、対象となる二人が、夏休みの水を抜いたプールの掃除を命じられる。一人は化粧が厚めで注意を受けるような子で、そもそも掃除なんてやる気はない。もう一人は、夏にある阿波踊りの練習をしながら、補習を受けている。しかし先にこのプールには先客がいて、水泳大会の予選で負けて、水のないプールで練習をすると言い張っているという部員だった。すべて女の子で、最初はそれぞれ、女子高生らしいトークを繰り広げる。野球部の誰それが好きなのか? とか、そんな話。
 水のないプールに砂が溜まっているのは、隣のグラウンドで、野球部などが活発に部活をやっているため、砂ぼこりが恒久的にたまるためらしい。そういう事情をもって、この作業を不毛と考えると補修の女子高生は、こんないじめのような補修には気が入らない。女子トークの端々に引っかかる物事があると、気分転換に戦線離脱していくものがいる。
 そういう小さなやり取りや出来事がある中で、後半になってそもそも補修を受けざるを得なくなった女の子の生理問題や、学校での化粧は誰にも問題が無いが決められていて、しかし先生だって、必要最小限の化粧を気にしなければならないなど、いったいどうして誰も何のためにやっているのかちゃんと答えられない、女性にまつわるあれこれの愚痴展開が爆発する。男とか女とか関係ないというのは、ぜんぶブスの言うことだ、とか。生きていくうえでの女子の悲しみ、のような事にもなっていく。これらの提示される言葉の嵐は、思春期をはじめとする、大きなテーマを吐き出す。小さいが、しかし、どうしようもない大問題、なのかもしれない。そうしてこれが、演劇的にも刺激的で今的な、高校生の今を伝えるものになっているのだろう。
 確かに考えさせられはするが、当然のようにその答えを提示できる、自分自身の答えなど無い。つまるところ、そうであっても自分はどうしていくか、だからである。いろいろあるが、それはある意味で、不都合であるからとはいえ、その不都合を利用して逃げてしまえば、結局は何もできは無いのだ。
 彼女らは上手く脱皮して、次のステップを踏めるようになるのだろうか……。
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ちょうどいい唐突感のある作品集   日本短編漫画傑作選6

2024-12-17 | 読書

日本短編漫画傑作選6/吉田戦車・青山剛昌・岡崎京子・すぎむらしんいち・よしもとよしもと・松本大洋・藤田和日郎・江口寿史・とり・みき・あだち充・新造圭伍著(小学館)

 そうそうたる執筆陣の傑作選。江口寿史が選者としての解説も書いている。実際のところこの解説も素晴らしくて、実に作品と作者のことを短く的確に紹介している。全部のことは知らなかったのだが、知っている人たちのことを思うと、まったくその通りと膝を打ってしまった。
 全巻持っているわけではないが、全6巻で、だいたい年代順にまとめてあるようだ。一寸本棚を見てみると、5は持っているし読んだようだ。6の特徴なのかどうかよく分からないが、少しギャグの入ったものが多いようだが、しかし漫画というのは絵を使って、なんとなくのユーモアのような仕掛けをしてくる場合が多い。そういう作家人も多くて、ちょっとした笑いを入れながら、不思議な話などをこしらえてあるようだ。最初の吉田戦車なんて、実のところよく分からないのだけど、爆笑に近いものを感じさせられる。いったいどうしてなんだろう。
 今となっては伝説的なベテランばかりだが、発表されたのは比較的若い頃のものだろう。そういう勢いと感性が感じさせられる。最後の新造の作品は、僕にはまったく意味が分からなかったのだが、ちょっとした映画の場面を見ているような感じがあって、なるほど日本漫画というのは進んでるな、などと思った。なんでそう思うのだろう。
 また、松本大洋もよく分からなかったのだが、これは少し今の流行もあるのかもしれないという作風である。ヤクザものの緊張感と、奇妙な唐突感がある。
 時々漫画を読みたくなる時があるが、やはり長いものは面倒な気がしないではない。それはそれで面白いのだろうけど、漫画だと活字のものより面倒くさい。何冊も持ち歩くのは現実的では無いし、しかし続きが気になるような中毒性があると、それはそれで困る。漫画というのはそういう事があるのであって、やっぱり休憩ができる短編であるのは助かるのである。まあ、そういう目的で組まれたものでは無いのだろうけど、こういうのはだから、読み徳ということになるのである。
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