秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

菜菜子の気ままにエッセイ   SANE著

2007年07月30日 | Weblog
黄色いエプロン
くしゃみを、我慢しているようなイナズマの光線が、ちらちらと森閑の夏の夜空に、光りを放っている。宇宙の隅っこで、下界を見下ろしながら、神々が花火大会なんて、洒落ているのかな。色を持たない山々を、一瞬のイナズマが、潔く照らす。下界に住む者達の、心の叫びを集めて、雷雨が響く。少し怖いけど、なんか楽しい。今夜のようなイナズマに逢うと、若い頃、剣山の頂上で和歌山に落ちるイナズマを、度々遠く、見下ろしていた事を思いだす。三年間夏の一ヶ月を、剣山で過ごした。日々形を変える雲海を、贅沢な位堪能できた。
夜空には、闇のベールが一面に張られ、散りばめられた星達の、それぞれの光りの祭典。星に同じ形は、ない。意識が違うように、個々に凜とした美しさがある。落ちてきそうな巨大な満月。煌々とした光りは、何にも動じない底知れぬ強さを、感じた。手が届きそうで、思わずジャンプした。風は肌寒く、エプロンのボケットに両手をいれて、いつまでも空を見ていた。流れ星が、一瞬に流れていく。手を合わせる暇もなかった。悔しがる私を見て、友人が笑った。一番綺麗な思い出が、剣の神々に抱かれて、今も私の心に住んでいる。あの時の、エプロンは確か黄色いタテジマだったかな。五百円だった記憶がある。あれから、二十八年。結婚し、家庭の諸事情に追い掛けられ、頂上で宿泊することは、不可能となった。夏になると不意に思い出す、残像のかけらは、あれからの私の人生の上で、ずっと私の肩を叩いて、前に進む力に代えてくれる。
老眼に鞭打ち、書いていると、神々が、ネムクなったのか、落雷は静かになった。今日は、夕方の蜩のシンフォニィと、稲妻。深夜の選挙速報。誰が代議士になっても、蜩の響きは、明日もかわらず音のシャワーを高く降り注いでくれる
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