先日、同期のS君と祖谷の山旅を楽しんできた、なにしろ、S君は4年ほど前の
5月中旬に僕と二人でヒュッテ泊まりのことが楽しくて忘れられないらしくて
会う度に、「もう一度行こうや」を繰り返していた
あの時は天気は最悪で雨風と夜中には管理人さんが今までで一番と云われた
雷に見舞われ、、丸焦げになるかと寝られなかった、が、朝は積雪と日の出と
雲海の素晴らしいお出迎えを受けた、僕には良い朝であった
S君はE新聞社時代から酒豪であり、ヘビースモーカーなのだが、その酒やけした
顔は丸っこくて、憎めない性格で同期の連中からのお誘いが何時も掛かり
今でも毎晩の酒漬けである、傍から見ても、あれで身体を壊さないのだから
呆れたものだ
年に何回か、山歩きの好きな同期の連中との山行、僕との二人山行などしているが
大方は、S君のように夜の飲み会が主目的なのだから、酒の弱い僕は閉口するが
旧交を温め、会話を楽しみにして付き合っている
そんなわけで、今度のヒュッテ泊まりも前回に管理人さんととことん飲んだわけで
管理人さんは前のUさんと変っているが、今回も大いに飲もうと、重たい酒を担いで
ヒュッテには午後4時ごろに着いた
新しい管理人さんに挨拶して食堂に、平日でもあり今日は我々だけの貸切と聞いて
Sくんはさっそく酒を開け、管理人さんに一緒に飲みましょうやと誘いをかけたが
今度の管理人さんは一滴も飲めないとのことであった、何でも内臓は元気なのだが
酒アレルギーとかで、身体が受け付けないらしい
まあ、それでは仕方ないなということで、矢面に立ったのがぼくである
これには僕も参ったが、そこは管理人さんである、なんでも大手の銀行マンであった
そうで、営業方面も経験しているらしく、話し好きであり、人をそらすことなく
僕らの話の輪に入ってくれて、なんと夜更けの11時まで付き合ってくれた
これは、これで、楽しい思いをした
翌朝は8月以降ぐずついた天候がずーと続いた今年では、一番と云われた日の出と
雲海を見ることだ出来た
二日酔いのふらふらする身体をストックでささえながらの下山であった
下山して、いやし温泉に入浴して二日酔いを治して、僕の庵である「わとうち」に
来た訳は、ここに泊まるのではなくて、冷蔵庫に有る食料を今晩の飲み場所に
持ってゆくためである
昨日、祖谷に入る前に街のスーパーで肉、野菜、酒をしこたま買い込んで
「わとうち」の冷蔵庫に入れておいた
「わとうち」の家主のテラオの兄さんは時たま見回りに来るのだが
冷蔵庫を開けて、
「こりゃあーご馳走が一杯あるわ、神さんのお恵みじゃあ、さっそく食おう」
などとやられては叶わんと思い連絡して
「よだれがでても絶対食うなよ、ちょっとだけ、味見もいかんぜよ」
冷蔵庫を開けるまで不安であったが、あってほっとしたが念のため、点検は
ちゃんとしたものである
祖谷街道をしもにひた走りして今晩の飲み場所になる祖谷渓に午後5時まえに
着いた
今宵は、Uさんの管理当番である、Uさんは首を長くして今か今かと待っていてくれて
早速料理に取り掛かった、たっぷりの肉ですき焼きである、飲んで食っての
無礼講で大いに盛り上がった
酔うほどにUさんも饒舌になり面白い話しをいろいろ聞かせてくれた
高校山岳部の頃からの豊富な山の智慧や、ヒュッテの管理人を受けるときには
長い歴史のあるヒュッテを何人もの管理人が智慧を出し切って必死に守り貫いて
今のヒュッテがあることを肝に銘じてゆくために生きている以前の管理人の人たちを
訪ね歩いて苦労話や山の智慧を教えを乞うたこと、管理人を降りた今は折に触れ
以前の管理人の人たちにお世話になったお礼をして訪ねていることなど
打ち明け話では四国第二の高峰のお隣の山のヒュッテの管理人であるから、必要で
あろうと、NPO法人何々に3回ほど入会を申し込んだが、その都度、定員が満員とか
なんとかかんとか難癖をつけて入会を拒否されたそうだ
ヒュッテの管理人としても自然を大切にして保護に並々ならぬ貢献をして、山の
経験の豊富で人としても立派なUさんの入会を拒否するなどなんとも奇妙なNPOが
存在するようだ、
そういえば思い当たる事柄がもう6ほど年前にあった、祖谷のある山に
オオヤマレンゲの群生地が見つかり、新聞に特定されて載ったとき、ぼくは
その記者と電話のやり取りで酷いではないかと抗議した、色々やり取りの最後に
その記者は
「見つけて載せて何が悪いか、読者に知らせるのが新聞の役目だ
荒らされる、荒らされないは地元の人たちが考えればすむことだ、なんなら
観光資源にでも考えたらいいじゃあないか」
と言い放ったときには、ぼくは唖然として言葉を失ったことがある
その後そのひとはその奇妙なNPO法人の幹部になっているらしい
それならばUさんが入会を拒否されても合点がゆくというものである
大勢のツアーを組んで、オオヤマレンゲの群生地に送り込んでいるらしい
自然保護を表看板にして活動しているが、その裏でその人が云ったように、
観光資源として自然を、山を食い物にしている節がある
その山のオオヤマレンゲは目も当てられないほどの荒れようになっている
膝を悼め、腰痛などでヒュッテを下りたが、渓谷の管理をしながら、自然に
身を埋めて山や里の保護に貢献してゆきたいと熱く語ってくれた
UさんはSくんと意気投合したらしく、雪見酒で一杯やろうやと池田の自宅に
招待してくれたが、S君は乗り気で僕に計画しろやと促している
しかし、今回も楽しい山歩き?ではなく飲み歩きで、S君は大満足、ぼくは
いささか、飲みすぎ疲れの二泊の山旅であった。