秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

唐津再会      SA-NE

2009年11月07日 | Weblog
真上に上がりかけた太陽の、光りのシャワーを浴びながら、玄海灘の波は、静かに果てしなく輝いていた。
再びの唐津。11年ぶりの地平線が、私の眼下に広がっていた。
列車の枕木の規則正しい音が、背中に伝わっている。心地いい、日だまりのシートに、腰掛けて、ご無沙汰の九州弁に、耳を傾けていた。
今回の唐津一人旅。目的は三つ。
二年前、脳梗塞で倒れ、施設に入所している、叔母さんを訪ねる事。10年前に、叔母さんが、私の母を見舞って下さった、あの時の恩返しが、したかった。
そして、もうひとつ。「ご先祖」さまのお墓参り。
そして、曖昧だった、記憶の事実の数々を、確かめたかった。

本家には、私よりひとつ上の従姉妹家族が、住んでいる。
本来、実家にいる筈の長男家族は、仕事の関係で、下関に住んでいる。
私より二つ下の、従姉妹は、京都に嫁いでいる。
(私の以前に書いた、唐津物語を読んでいてくれた方は、理解が早いと思います)
本家の子供達。
三人が、顔を合わす事は、ほとんどなく、お葬式か、法事位だと、従姉妹に聞いた。

私が、訪ねたのは、11月4日、従姉妹の休日だという理由で、決めたその日は、
〈唐津くんち〉の最終日だった。
「泊まっていって下さい」
従姉妹の計らいに、遠慮なく甘えた私の、今回の旅は、
偶然なのか、必然なのか、何かしら、見えないチカラに、導かれたような気がした。

改札口に、従姉妹〈長女〉が迎えに来てくれていた。
彼女は、車を走らせながら、
「あのね、きょうは、偶然、兄も、妹も帰っているのよ!兄は、〇〇〇さんの顔見てから、帰るって、家で待ってます。」

本家の前の、庭に車を止め、玄関に入った。目の前に、従姉妹〈次女〉が、立って迎えてくれた。その後ろに、出て来てくれたのは、二つ上の、従兄弟〈長男〉。美男、美女のいとこ達。
「いらっしゃい!」「どうぞ、入って入って!」

迎えたのは、ピカピカの玄関と、お互いに大人になった、微妙な照れ笑い。
リビングのコタツに、四人で向かい合わせに、座った。

「ネェ、これって、四人で顔を合わせたの、37年ぶり!」
私が、言うと、一斉にみんなが、頷いた。
「初めて唐津に、来た時、二階の部屋で、四人で顔見合ったの、あれといっしょ!」
「覚えてるよ!」
「おくんちの日だった!」
「あの後、お祭りの屋台に行って、タコ焼き食べた」
「あ~、食べた!」
「幽霊屋敷みたいなとこ、ほらっ、ナマクビがなんとかって!」

大笑いしながら、
37年前の、お互いに覚えていた光景を、一気にばらまいた。

暫くすると、
夕方に予定が入っているという、長男は、セカンドバックを手にし、スクッと立ち上がった。
「今日は、会えてよかった。では、帰ります。」

「私も嬉しかったです。ありがとうございました」

私は、深々と頭を下げ、彼を見送った。

そんな私を見て、姉妹達は、顔を見合って苦笑していた。

三人で、再びコタツに座り、お茶を飲みかけて、私は慌てて、お仏壇の間に入った。
大切な事を、先にやらなければならない。
奮発して、持参したお供え!
そして、ご挨拶!
宅急便で、先に送っていた『お土産』は、すでにお供えしてくれていた。

『お祖父ちゃん、叔父さん、ご無沙汰しておりました。今日は、お邪魔させて頂きます。』

テレビでは、唐津くんちの模様が、ライブで流れていた。

私は、隣の部屋で、背中でそれを微かに聞きながら、立ち上がる二本の線香の煙の中、再びの合掌に、瞳をとじていた。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 初雪に霧谷紅ゆ | トップ | 唐津再会 Ⅱ     SA-... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事