秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

奥祖谷秋点描 暮らしの秋 山里に歩いて

2012年10月11日 | Weblog
よこたへし真紅の茎はみだれたりそばかり鎌に秋かぜ吹きし

秋かぜになみうちみだるる薄かな明日をも知らで孤高に天突く

訪ふさとの老婦はひとり畑しごと匂ひし木犀ひと枝添へし

わが庵にまゆみの紅き実はたわわ鹿なき声に秋雲わびし




秋風がここちよく、たなびく雲を見上げて、久保集落を何時ものように

ゆっくりとした足取りで立ち止まっては写真を撮り、蕎麦畑は実をつけた

そばの茎が紅く染まって、間もなく刈り取りの日を待っている

畑にしゃがみこんで何やらもぞもぞしているじいさん、ばあさんから

挨拶のやり取りをしていると、知っているお年よりは「もんたかえ」と

云ってもらえるのが、一番嬉しいものである

久保では一番長く暮していたものだから、僕に「下から帰ったかえ」と

集落の住人のように扱ってくれるので、何時も胸が暑くなる

例によって、あちこちと寄り道しながら林道の最上のT老婦の家まで訊ねる

ちょうど前の畑でさつまいもを掘っている最中であったが、最後の一畝を

掘り終えると、「袋に芋を入れて持って還れ」といっぱい入れて土産に

してくれた、去年も貰ったが、山のさつまいもはとびきり美味い

縁側で祖谷番茶を馳走に、長話をして帰り際に、庭でいまを盛りの金木犀の

一枝を折ってきて運転席の前にでも飾って、良い匂いを楽しんだらと

差し出してくれた、優しい、老婦である


老の庵から見上げる三嶺、天狗塚、牛の背のやまなみは見事な眺めである

毎日夜、朝日に、夕日に、星降る夜に、新月から満月に、四季折々の風景は

いくら、眺めても飽きることが無い

わが庵、わとうちの庭にはまゆみの実が赤くゆれていた、陽は傾いて静かに

秋風はひんやりと肌寒くなってきた

いつの間にか、とばりが降りて秋風に乗って鹿鳴きの哀しげな声があたりを

包んで、夜はふけてゆく

地デジになってから、テレビは見えないから、僕にはちょうど良い夜である

しずかに、本を読んだり、下手な詩歌を作ってみたり、ぼんやりと鹿鳴きを

秋風の囁きを聞きながら、いつの間にか眠っているわけだ




















































































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