2012年の末に突然と亡くなった一人住まいのO老婦の家はそのままに寂莫としていた
昨年3月に訪れた時から時空間は止まったかのように、馬酔木が一本申し訳そうに白い花を
咲かせ、カヤの枯れ草の繁る道を隔てて、杉林に囲まれた白い屋根の家が秘かに佇んでいる
主を失った家、畑は寂として、索漠の風が吹き荒れて、辺りを覆いかかり、哀れにも
悲しい気持ちが身体を駆け抜けた
聞こえるものはただ一つ、飛行機型の片方しかない翼とプロペラの風車が悲しげな声を
カラカラ、カラカラと索漠の風に吹かれて叫ぶのみである
この風車のある展望の場所に老婦が何時までも暖かい日差しを頼りに腰掛けて風景を
眺めているのを下の林道から見かけると、急いで小径を上がっていったものである
いつも、笑顔でうれしそうに迎えてくれて、そう、小一時間ほど世間話をしては
還るのが常であった
いまは、誰ひろり居ない、寂として索漠のなかに身を置いて感慨に耽り、心身を空っぽに
することにして、風景のなかに沁みこんでいる
2軒ほどの民家が下の林道脇に立っているがすでに廃家である、この小高い展望場所に
腰掛けて眺め深い谷を隔て、残雪を被る塔の丸ー三嶺1806嶺ーその稜線を経て
西熊ー天狗峠ー天狗塚と連なる祖谷の名峰は寂莫として周囲の山里まで覆いかぶさる
だれひとり訪れることのないこの集落は時空間を停めているかの風景である
ただただ、毎夜のように猿、イノシシ、鹿、山ウサギなどの動物たちの横行が寂の
闇夜を切り裂くのであろうか、心中は索漠とした思いに満たされていった
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます