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「20世紀の権力とメディア」を読んだ

1920~30年代のドイツ文化と言えば平井正さん、ということになるのでしょうか。
平野甲賀さん装丁の「ダダ/ナチ」全三冊シリーズとか、著書多数です。
ですが・・・初めて読みました、いや~お恥かしい。
だって平野甲賀の装丁苦手なんだもん(なんのこっちゃ)。
その本は
20世紀の権力とメディア―ナチ・統制・プロパガンダ」(1995)
って最初に読めよって感じのズバリなタイトルですね。

で、この本は図書館の検索で引っかかって偶然存在を知ったのですが
(出版している「雄山閣」って大学の人文系の教科書出してる会社ってイメージ?)、
面白かったし分かりやすかったし大変勉強になりました。
ラジオ、イベント(党大会、焚書等)、映画といった「メディア」とナチがどう向き合ったか、
よく整理された形で分析されていて、全体の見取り図を得るのに好適な著作でした。
映画についても(平井先生も相当なフリークらしく、ドイツ映画のHPもお持ち)
「ナチ「映画」なるものが、芸術の政治化という現代大衆文化の徴候的な現象として、
 時代に大きな傷跡を刻印したという認識が一般化したために、
 あたかもナチ「時代」の映画がこうした映画一色であるかのような錯覚を与えてきた。
 実際にはナチ時代に制作された映画1150本の中、
 純然たるプロパガンダ映画はせいぜい5パーセント程度で、
 上述のような映画は、当時製作された映画の中ではむしろ例外に属する。」
 (強調は引用者)
との認識に立って数々の映画を分析するなかで
ナチの文化統制のあり様を明らかにしていくプロセスは圧巻です。
(この「統制」っていうのが強制だけではなくて
 共通の土壌を上手く救い上げ、自発的に協力させ、それでも駄目な相手は暴力で、
 というなかなか巧みな支配なんで恐ろしい訳ですが)

翻って戦前日本のおける統制はたぶんもっと素朴で野卑なものだったと思うのですが、
(もしかしたらドイツの「第一次大戦期の」映画統制の理念に近い??)
「外地」においては通用する訳も無く、多様な試み/綻びが見られるようです、
という話の出発点は実は「満映/華映」なんだけれども。
なんか良い本ないかなあ。

関連エントリー→ ナチ時代の娯楽映画って面白いらしい
平井さんの本を読むとこちらの著者は異分野の著作に疎いのかも?との疑惑も。
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