ひねもすのたりにて

阿蘇に過ごす日々は良きかな。
旅の空の下にて過ごす日々もまた良きかな。

牛肉はいつも

2008年06月24日 | 酒と料理と
最近牛肉を店で買った記憶がない。
上さんの親父さんは、数十年来、牛の肥育を生業にしていて、
そこから牛肉をよくもらってくる。
先日は、黒毛和牛の去勢した牛をつぶしたんで、その肉だから美味いぞ、と言われ、
期待に胸ふくらませて持ち帰った。

これは焼いて塩胡椒に限る。
炭焼きがいいが、そう大げさにはできない。
まず、これも知り合いにもらったサラダタマネギを薄く千切りにし、たっぷりと皿に敷く。
ひたすらシンプルに塩胡椒で焼いた肉をその上に載せるが、
その前にタマネギに軽く刺身醤油をかけておく。
熱々の牛肉をたっぷり乗せて、さあいただきます。

たれは要らないが、塩胡椒味に飽いたら、
刺身醤油とポン酢をあわせ、これにわさびを溶かして付け汁にする。
これだとサラダタマネギにかけた醤油は必要ない。

久しぶりの梅雨の合間の晴天は、暑くて妙に疲れる。
こんな日に牛肉とタマネギ、さっぱりポン酢もまた格別。
お伴はもちろんビールが最適。
先日娘がくれたキリンの一番搾りが冷やしてある。
ラガーほど苦みはないが、スーパードライほどドライでもなく、ほどよいバランスのこのビールは私好みの一つ。
と、講釈たれるほどのビール通ではない。なーに、飲めればいいのだ。

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名も知らぬ駅に来ませんか -9-

2008年06月21日 | 「名も知らぬ駅」に来ませんか
Wさんが、「こりゃ、美味い」と友人2人にも勧めている。
韓国海苔の上に、細く切った四葉きゅうりと、同じく細切りの大根を載せ、
酒とみりんでとかしたコチジャンを弱火で練ったものに、ほんの少しマヨネーズを混ぜたものをかけてある。
これを海苔で包んで食べるのだが、意外とさっぱりしている。

そのWさんが、連れの友達と3人で話し込んでいるところに、
20代と思われる2人連れの女性客が入ってきた。
初見のお客さんである。
「いらっしゃい」と、マキちゃんがおしぼりを出す。

一人の女性が、
「済みません、アレキサンダーを頂けます?」とマキちゃんに言うと、
女性側に一番近い席のWさんが、フッと彼女に目をやった。
その女性がオーダーしたアレキサンダーに反応したのだろうか。
アレキサンダーは、ブランデーにクレームド・カカオと生クリームを加えてシェイクする。
イギリス国王エドワード7世が、デンマーク国王の長女アレキサンドラとの結婚を記念して奉げたカクテルでもある。

Wさんは40代で、しがない公務員だと言っているが、詳しい話しはしない。
友人2人も同業者らしいのは、話しの端々に見てとれる。
Wさんは友人2人で話しをしながらも、アレキサンダーを飲んでいる女性に、何となく気をとられているようだ。
そんな中、常連のお客さんが3人連れでやって来た。
「済みません、そこ、詰めてもらっていいですか?」というマキちゃんの声で、
Wさんたちと女性2人連れの間に1席と、その反対に2席の空席があったので、
女性2人がWさんの横に移動することになった。

しばらくして、意を決したようにWさんが隣に来た女性に声をかけた。
「アレキサンダーにまつわる話しを知っていますか?」
と、女性は穏やかだが意志の強そうな眼で、じっとWさんを見つめると、
「ええ、ロイヤルウェディングに献上されたカクテルということは。」
白い歯を見せて答えた。
「そうですか、もう一つ映画で使われた話しはどうですか?」と、Wさん。
「いいえ、残念ながら。」と彼女は首を少し傾けて答えた。

「そうですね。ずいぶん昔の映画だからご存じないのが当然ですね。」
そういうWさんだって映画館で見たはずはない、とわたしは思った。
「酒と薔薇の日々」という映画も、主演のジャック=レモンも、私たちの世代の話しである。
主人公が、酒を飲めない愛妻に勧めたカクテルとしても、アレキサンダーは有名なのだが、
Wさんが、いかにも映画館で見たように熱心に話すのを聞いて、わたしは可笑しかった。

その話題のあとには、女性は隣の友人の女性と話したり、
Wさんも友人と話したりで時間は過ぎていったが、
ふっと間が開いたとき、女性がWさんの方に顔を向け、
「ほかにお勧めのカクテルがありますか、私に。」と問いかけた。
Wさんはしばし考えていたが、
「ブランデーベースで、ロス・ロイヤルというカクテルはいかがですか?」
「それって、何か謂われのあるカクテルですか?」女性は、わたしではなく、Wさんに問うた。

Wさんは幾分困ったふうにわたしを見て、
「マスター、このカクテルがコンベンションで賞をもらったのはいつだったっけ。」
「1968年、イギリスでのことです」わたしがWさんにではなく、その女性に向かって返事すると、
「じゃあ、それを作って下さいますか?」と、わたしに語りかけるようにオーダーした。

Wさんの友人2人も、女性の連れも、
息を潜めた感じで、2人の会話の行き着く先を伺っているようだ。
そのうち、Wさんが、
「一度、御一緒しませんか?」というと、
「ええ、いいですよ。」と言って女性は、マキちゃんから紙を受け取ると、
「これがわたしの携帯です」とあっさりと携帯の番号をWさんに渡した。

あまりにさっぱりとした風だったので、まるで仕事の取引関係の名刺交換のようだった。
その一瞬後、連れの女性が、
「止めなさいよ!知らない人に番号渡すの。」と抑えた声だが、強く叱るように言って、
Wさんの顔を睨むように見た。
「いいじゃない、もう知り合ったんだから。」、と女性は気にとめる様子もない。

Wさんは戸惑ったように、携帯の番号が記されている紙を見つめていたが、
「嫌なときは、はっきり断ってもらっていいですから、一応預かります。」
と、紙をポケットにしまった。
「もう帰ろう。」と機嫌を損ねた連れに促されて、女性はカクテルの残りを優雅に飲み干すと、
「マスター、ご馳走様。」、とわたしに微笑んで席を立った。

残されたWさんは、友人2人のニヤニヤ顔に冷やかされている。
「どうすんだ」という問いに、
「さあ、どうするかな。」Wさんは、やはり怪訝そうな、戸惑いから抜けていない。
自分が誘ったことも、その返事が肯定されたことも、まるで架空のことのような様子だ。

Wさんは、多分あの女性に連絡せずにはいられないだろう。
年齢の割に、優雅で、それでいて意志の強そうな彼女の眼は、
一度見つめたことのある男には忘れられないものだ。
わたしがもう少し若ければ、と思わせる女性だった。

Wさんとその女性がまた店に来たかですって。
土曜日の夜にお出でになると、もしかして、その後のことを自分の目で確かめることができるかも知れません。
とても確約はできませんが、
それでもよければ、一度名も知らぬ駅に来ませんか。

※この話及び登場人物も基本的にはフィクションです。
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マンゴー

2008年06月20日 | 日記(?)
上さんの実家に行ったとき、マンゴーをご馳走になった。
実家はスイカ農家で、マンゴーは作っていないが、知人の農家からもらったということである。
マンゴーは宮崎や沖縄が有名だが、熊本だって作っている。
全国ブランドで有名なスイカの産地植木にも数年前からマンゴ-を作っている人がいて、
年に1回はお裾分けで食べている。

さすがに完熟マンゴーは美味い。
スーパーで買うメキシコ産のアップルマンゴーとは一味も二味も違う。
しかし、1個数千円~万円などというのは狂気の沙汰だ。
たかだかフルーツだ。どんなに美味くても、わたしはメキシコ産でいい。

はじめてマンゴーを食べたのは、40年近く昔のこと。
アフリカの田舎の方に住んでいたとき、近くにマンゴーの木があって、
黄色く熟した実を近所の子どもたちが食べていたので、
わたしも千切って食べたのが最初。

いかにも熱帯の果実らしいニオイと、まったりとした食感。
食べ終わったあとには、歯と歯の隙間という隙間に繊維が挟まって、
こりゃこりゃと思ったものだった。
しかし、はじめて口にしたマンゴーはそれからわたしのお気に入りのフルーツになった。
その時代に日本人でマンゴーを食べたのは数千人、いや数万人に一人だったろう。
その証拠に、1年後の帰国以来、10数年以上マンゴーを食べることはなかったのだから。

あの頃のマンゴーに比べて、今もて囃されているマンゴーはなんと上品な味だろう。
いかにも高級フルーツの味だ。
もちろん初めて食べたペリカンマンゴーとは品種が違うので仕方ないが、
わたしにとってのマンゴーは、熱帯の雰囲気をムンムンさせるニオイを持つ、
繊維が口内に残るあの野性味溢れるマンゴーこそがマンゴーなのだという気がする。

これは、あまりの値段の高さに手が出ない、ビンボー人の僻みなのでありましょうか。
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コロッケ

2008年06月17日 | 酒と料理と
今朝は早く起きて畑の草取りや、豆類の収穫に行った。
グリンピース、スナップエンドウ、空豆。
いずれもが取りこなせないほどに実をつける。
3日に一回はとらないと困るほどだ。

草取りをしていると、ジャガイモの葉が黄色く変色して元気がない。
まだ収穫には早いので、病気か、弱っている。
仕方ないので、3本ほど抜いたら、結構実をつけていた。
よしよしと、これまた収穫。

キャベツは雨が多いので、真ん中から裂けている。
生で食すにはいささか堅いので、炒めるか湯通しするか。
鮮度はいいので、野菜炒めにはもってこい。
学生時代に4,5人で自炊していて、食事当番になると、よく野菜炒めをした。
本当の野菜炒めで、肉は入っていない。
貧乏所帯の夕食のおかずは、質より量。ウスターソースをたっぷりかければご馳走なのだ。

わたしがはじめて料理らしいものを作ったのは、おふくろに教えてもらったコロッケ。
ジャガイモがあれば、ミンチの肉など少しでいい。
あとはタマネギと人参少々、卵に小麦粉、パン粉で、
手間さえかければ、ジャガイモが沢山あればコロッケはたくさんできる。
貧乏学生の自炊総菜としては優等生なのだ。

さて、今日収穫したジャガイモ。
初心に返って、コロッケを作ろう。
上さんの親父さんにもらった牛肉を包丁で叩いて細かくするが、ミンチより若干粗くしておく。
ジャガイモは皮ごとゆでて、水分を飛ばしてから皮をむき、つぶす。
これも粗めに刻んだタマネギと牛肉を炒める。
味付けは、塩と粗挽き黒胡椒のみだが、少し濃いめにつけてつぶしたジャガイモと混ぜる。
あとは手順通りに一つは小判型にする。
もう一つは、ジャガイモでとろけるチーズを包み、たわら型にする。

食べるときはそのままでもいいが、昔ながらにウスターソースで食べてもいい。
阿蘇市一の宮町の農協で作っている、完熟トマトのケチャップをかけてもいい。
チーズを包んだコロッケは、チーズの風味があれば何も要らない。
これに合うのは、トルコ土産にもらった赤ワイン、KALECIK KARASI。
おお、なんと世界遺産のカッパドキア産のワインだ。

コロッケ3つはいけるな。
ワインは1本いけそうな感じだし。

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ソウルは晴れ

2008年06月17日 | 日記(?)
ソウルのツアーに参加してきた。
熊本空港発着のアシアナ航空便でのツアーで、
なんと言っても売りはホテルと観光。
江南地区にある五つ星のリッツカールトンソウル・ホテル。
観光は、世界遺産の水源華城や利川の窯めぐり、宋廟見学に、南山韓国村と盛りだくさん。
これで、39,800円は安い。その名も「めちゃ得ソウル3日間」、確かに。
しかし、空港税と燃料サーチャージは別途というのが何とも。
今回、国交省(?)が、旅行社に燃料サーチャージ込みの価格表示を求めるという記事が2,3日前にあった。
そうでなくっちゃ、騙された感じがするよね。

オプションでナンタ公演も見てきた。
3年ぶりのナンタの舞台で、基本は一緒だが、細かいアレンジは変わっていてさすがと思わせる舞台だった。
ナンタ劇場は場所が変わっていて、客席の広さはほとんど変化ないが、
舞台の造りがスケールアップしていた。

完全ツアー参加というのは、これまた久しぶりで、
前回は10年ほど前に、上海・蘇州・無錫・杭州の旅以来だった。
ツアーは気楽な反面、ハプニングはないし、朝早く夜遅いという欠点がある。
夜の飲み屋街に出るのが楽しみな身には非常に辛いが、
この金額では文句は言えない。

リッツカールトンは今まで泊まったホテルの中では、多分1,2を争うクラスだった。
1泊3,000以上になるとえらく高く感じるようでは、個人でこんなホテルには泊まれない。
ソウルは今回で7回目だったが、
これも10年ほど前に江南に泊まったときに比べ、江南地区も非常に賑やかになっていた。
それなのに、1日目は21時、2日目は22時30分にホテルに帰っていては、
それから出歩く気にはなれない。

12日出発14日帰国だったが、11日は大雨洪水警報が出るなど、一時心配したが、
そこは晴れ男のわたし。
出発間際には天気がよくなり、ソウルの3日間は晴れて暑いくらい。
14日昼前に着いたがそれまでは晴れていて、夕方から雨。
晴れ男の面目躍如で、ツアーに参加した残り23名の方々に感謝されてもいいくらいだ。

退職してからの無職というのは自由と同義語である。
ツアーだって一番安い時期を自由に選べて、
もっともいい季節の旅行が自由にできて、
いろんな人と一時の出会いを楽しめて、
入国カードの職業欄に、joblessと書くのか、unemployedと書くのか迷うくらいが関の山。

さて、今度はソウルに、JUMPの公演を見に行こう。
来年の今頃かな。



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