2007年8月18日(土)
#9 スティーヴン・スティルス「Love The One You're With」(Stephen Stills/Atlantic)
#9 スティーヴン・スティルス「Love The One You're With」(Stephen Stills/Atlantic)

スティーヴン・スティルスのソロ・デビュー作「Stephen Stills」から、A面トップ、初ソロ・シングルでもある「Love The One You're With(愛への讃歌)」を。
スティーヴン・スティルスについて、くだくだしい説明など不要だろう。バッファロー・スプリングフィールド、CSN&Yにおいて、リーダー的な存在感を発揮してきたこの男。でもスターというよりは 地道なミュ-ジシャンというイメージなんだな、筆者においては。
いかにもヤサ男なんだけど、彼がおそらく大目標にしていたであろう、エルヴィス・プレスリーみたいな万人向きの人気者というよりは、人によってちょっと好き嫌いの分かれるクセ者タイプ。歌声にしても、誰もが「うまい!」というよりは、評価がふたつに分かれるところがある。
スティルス本人は、ストレートなタイプのスターになりたかったのかも知れないけどね。
でも逆にいうと、それがスティルスなりの「個性」なんだろう。
なんていいますか、ものすごくベタな白人的要素、つまりフォーク、カントリー的なものへの傾倒が一方にありながら、その一方で黒人音楽、とりわけソウルへの入れ込みかたはハンパじゃない。
それは、このデビュー・ヒットを聴けば、よくわかるはずだ。
白人向けにだいぶんフォーキーな味付けはしてあるものの、その躍動感、グルーヴは、まさにソウルのそれ。
アコギやオルガンの響き、女声コーラスなど、寸分の隙もない見事にソウルなアレンジに、ただただ脱帽であります。
アイズリー・ブラザーズ、ボラニー・ブラムレット、ビリー・エクスタイン、ジョー・コッカー、アリサ・フランクリン、エンゲルベルト・フンパーディンク、トニー・オーランド(ドーン)、ミーターズ、サム&デイヴ、シュープリームス、スリー・ディグリーズ、ルーズヴェルト・サイクス、ルーサー・ヴァンドロス‥‥。この曲をカバーしたアーティストたちである。
人種、音楽ジャンルを越えて、ここまで支持された白人作のソウル・チューンは。なかなかないよね。
スティルスの数多い作品の中でも、ひときわ輝く金字塔。文句なしの名曲であります。