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音曲日誌「一日一曲」#382 ジョニー・ウィンター「I’ll Drown In My Tears」(Columbia)

2024-04-22 08:36:00 | Weblog
2024年4月22日(月)

#382 ジョニー・ウィンター「I’ll Drown In My Tears」(Columbia)





ジョニー・ウィンターの1969年リリース、コロムビアレーベルでのファースト・アルバム「Johnny Winter」からの一曲。ヘンリー・グローヴァーの作品。ウィンター自身によるプロデュース。

この「I’ll Drown In My Tears」という曲、レイ・チャールズ56年の「Drown in My Own Tears」というタイトルでのヒットで最もよく知られているが、実はそれがオリジナル・バージョンではない。

もともとヘンリー・グローヴァー(1921年生まれ)というソングライター兼トランペット奏者が51年に書き、女性シンガー、ルーラ・リード(1926年生まれ)によりレコーディングされたバラード・ナンバー。

ブルースピアニスト、ソニー・トンプスンのインスト曲「Chag, Chang, Chang」をA面とするスプリット・シングルのB面だったが、R&Bチャート5位のヒットとなっている。

このB面曲に目をつけたレイ・チャールズが56年にアトランティックレーベルでレコーディング、R&Bチャートで1位の大ヒットとなった(チャールズとしては3曲目の首位)。

以来、彼の影響で白人黒人、英米を問わずさまざまなジャンルのアーティストがこの曲をカバーするようになる。

ざっと挙げるだけでも、ジョー・コッカー、ボビー・ダーリン、アレサ・フランクリン、リッチー・ヘブンス、エタ・ジェイムズ、ノラ・ジョーンズ、ジャニス・ジョプリン、ビリー・プレストン、パーシー・スレッジ、スペンサー・デイヴィス・グループ、ジョニー・テイラー、スティーヴィ・ワンダーetc…と、枚挙にいとまがない。

しかし、あまたあるカバーの中で、筆者が一番先に思い浮かぶのは、本日取り上げたジョニー・ウィンターのバージョンなのである。

ジョニー・ウィンター(1944-2014)の70歳の生涯で名盤は数々あれど、やはりメジャー・デビュー・アルバムの「Johnny Winter」は格別の存在だと言える。

ここには、ウィンターの原点と言える音楽が、すべて詰まっているからだ。

「I’ll Drown In My Tears」と、オリジナル・タイトルの方でクレジットされた本曲は、レギュラーバンドのトニー・シャノン(b)、アンクル・ジョー・ターナー(ds)に加えて、ピアノでウィンターの弟エドガー、そしてA・ウィン・バトラー(ts)、カール・ゲイリン(tp)をはじめとする4管のホーンセクション、3人の女声コーラスが加わっている。見事なまでのフルコンボ体制である。

他の曲ではスピーディに暴れまわるギターを聴かせるウィンターもここではあえて弾かずに、完全にボーカルに集中している。

新奇さではなく、あくまでも伝統的な、まっとうなスタイルでR&Bを追求しようという真摯な姿勢がうかがえる。

このウィンターの歌が、実に心に沁みるのだ。失恋の悲しみに負けそうな想いが、ストレートに聴く者に伝わってて来る歌声。それ以上の説明は不要というものだろう。

レイ・チャールズに決して引けを取らない、シンガー、ジョニー・ウィンター畢生の熱唱。

いいものは、いつ聴いてもいい、そう思う。